インドにおける国家予算の発表。なぜだか国民の一大エンターテインメントである。一昨日の2月1日土曜日、夫は発表の詳細を伝えるテレビ番組を熱心に見ていた。発表後、具体的に内容を解説する番組なども放映される。
我が家では、英字新聞の「TIMES OF INDIA」(やや軟)、「THE HINDU」(やや硬)、「mint」(経済紙)の3紙を購読している。もっともわたしは、パラパラとめくる程度。大して読んではいない。
しかし昨日の新聞は、各紙とも大々的にページを割いて、国家予算の詳細を解説しており「見ごたえ」があった。
中でも「mint」の、過去200日のインド経済の変遷を描いた「マンガ」が秀逸。楽しみながら、状況を把握することができる。
その他のページも、インドの伝統絵画の手法で描かれたテーマごとのイラストが数ページに亘ってレイアウトされ、シンプルながらも読者の目をひきつける。
一方の「TIMES OF INDIA」の軽さ。スターウォーズの著作権に抵触しないのだろうかと、他人事ながら心配になる。
「THE HINDU」の一面に描かれている妖怪のような女性は、昨年、財務相に就任したニルマラ・シタラマン氏。いくらなんでもこのイラストは、悪意に満ちてはいまいか。
実は彼女、一昨日、予算を読み上げている際、終盤で具合が悪くなり、完全に読みきれなかったとのこと。すると、各方面から「玉ねぎをしっかり食べないからだ!」とシニカルなコメントが殺到したようだ。
なぜ、玉ねぎか。
インドにおける農作物、特にインド料理において多用される玉ねぎやトマトの価格は、そのときどきの経済の指標を映す大切な基準である。玉ねぎの価格が安定しているときは、財政が安定しているとさえ、みなされるのだ。
その玉ねぎの価格が、昨年から高騰していた。
それを受けて、ニルマラ・シタラマン氏は、「わたしは、玉ねぎを、たくさんたべません (I don’t eat much onion)」と、発言したことがあったらしい。玉ねぎ玉ねぎと騒ぐな、とでも言いたかったのか。
ゆえに、玉ねぎである。
食料自給率が軽く100%を超えているインド。国民の5割以上が農業に従事している。農作物の収穫量や価格は、国民の大多数のライフに影響を与えることから、玉ねぎの価格に代表される食料価格の安定は、インド経済や政治にとって、重要な課題なのである。
ちなみにインドの玉ねぎはおいしい。じっくりゆっくり炒めると、甘みが増して、調味料の役割さえ果たしてくれる。玉ねぎは栄養価が高く、血液をきれいにしてくれる。玉ねぎをすりおろして肉をマリネすると、柔らかくなる。
「玉ねぎヘアオイル」はまた、抜け毛予防にいいともされる。
というわけで、予算の詳細については、日経新聞などに掲載されているので、関心のある方は目を通されたい。