ロックダウン2日目。今日も鳥の鳴き声で目覚める。軟禁生活6日目。不透明な未来を案じつつも、今日も熟睡できた。日増しに、あたりの空気が軽くなる。飛行機は飛ばず、車も走らず、工事もない。
猫らに餌を与え、裸足で庭を歩き、軽くエクササイズをする。庭を歩きながら、脳みそを渦巻く想念がすさまじすぎて、収拾がつかない。夫は2月下旬、リシケシへ赴き、ムージ (Mooji)というスピリチャルリーダーにお会いした。以来、ムージのガイドを聞きながら、毎日30分の瞑想を続けている。夫は1月に義父が他界して以来、情緒不安定だったが、ムージとの出会いで感情が落ち着いた。
庭に水を撒いて緑を蘇らせたあと、シャワーを浴び、朝食をとる。普段はスロージューサーで、新鮮なオーガニックのニンジンやざくろ、レモン、ムサンビ(スイートライム)などを使い、コールドプレスジュースを作って飲んでいるが、素材が底をついた。保存の利くスーパーフードがいくつかあるので、それをお湯に溶いて飲む。
心身の健康維持が最優先課題となる今。いつもに増して、免疫力を落とさぬよう、健康的な食生活を心がけている。限られた食材しかないが、普段よりも気持ちを込めて料理をしている。旅行できないどころか、外食もできない、友人らとも会えない、化粧もしない、服も部屋着のまま、ジュエリーもいらない……。遠く近くに暮らす家族にも会えない今、改めて気づかされる、「ライフ」の優先順位。
ミューズ・リンクスの若者向けセミナーでは常々、「裸一貫の自分を思え!」「自炊せよ!」などと語ってきたが、まさに、そのときが来ている。ちゃんと食べて、自分を律し、心身の健全を守ることが、今は最優先だ。
わたしは子どもの頃から、自然破壊や地球環境の問題に関しては、かなり敏感だった。今の自分からは想像しがたいが、神経質で心配性、恐怖心が強かった。大人になって、適度に鈍感になったが、ここ数年の、人類の手なる地球環境の破壊をして、遅れてきた世紀末的危機感を抱くばかりである。環境問題に関しては、個人的な心がけにとどまらぬ、折に触れてはネット上でも情報をシェアしてきたが、日々、無力感が募るばかりだった。現在、人類は岐路に立たされていると思う。
COVID-19については、当初、ここまでの威力をもつものとは、思わなかった。2月下旬、日本からの視察旅行などが次々とキャンセルになり、危機感を覚え始めた。それでも、4月あたりに収束するだろうと思っていたが、イタリアやイランの感染者が増え始めた3月初旬から、楽観視できない事態に陥りつつあると感じた。すでにシェアしたこの地図は、変遷を視覚的に確認しやすい。
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-world-map/
人類の歴史を紐解けばまた、伝染病の歴史あり。過去から学ぶことは多い。今回の事態が、未来の歴史の教科書に大きく取り上げられることは間違いない。すでに人の流れ、経済の流れが、世界中のあちこちで途絶し、混乱が起こっている。この先の不便や不況は不可避であり、それに向き合う強さを、わたしたちは蓄え続けねばとも思う。
夫はといえば、一昨日から自分自身のグローバルなネットワークを駆使し、COVID-19を巡る、いくつかのプロジェクトに参画している。一日中、世界中の誰かと、オンライン会議で議論している。そしてときどき庭に出て、猫らと遊んだり、おやつを食べたりしている。
世界では、「国籍、業種の垣根を越えて」、この事態を解決すべく、すさまじい勢いで情報や知見交換が行われていることが、夫の話を聞いているだけでも伝わってくる。自己の利益や平穏な暮らしは、社会の安定なくしては実現しない。社会の、地球全体の健全を取り戻そうと尽力する、あらゆる人たちの、ポジティヴな力を信じたい。当初は、夫との二人の幽閉生活に懸念しかなかったが、この期に及んでは、妻は夫を全面的にサポートしようと思う。
夕暮れどきの庭で、沈みゆく太陽を眺めていたら、刹那、1992年のゴビ砂漠の夕日が、脳裏に浮かんだ。北京からウランバートルまで国際列車で36時間かけて一人旅をした、チャレンジャーな若かりし日の記憶。
ゴビ砂漠のゲルを離れて、一人歩いた。見渡す限り、360度の地平線。月は東に、日は西に、を、ぽつんと一人で眺めたあの日。自分は地球にくっつく、小さな点、だった。
「財宝がなんであろう。金銭がなんであるか。この世にあるものはすべて過ぎ行く。この世はすべて空(くう)だ」「永遠あるものとはなにか、それは人間の記憶である」by オゴタイ・ハーン(チンギス・ハーンの息子)。
当時、ワープロで紀行文を書き、旅日記を自費出版した。オンライン上にも掲載している。26歳の我、諸々突っ込みどころが多いが若気の至りということで。
あ〜。なんだか今日は、真面目に書きすぎた! ビールでも飲んで少し緩めよう。