現在は土曜日の朝。すでに4日目に入ったが、昨日の記録を残しておく。昨日はロックダウン3日目。軟禁生活7日目。一昨日の夕方から、諸々、落ち着かないニュースが飛び込んできて、心が乱れていた。
たとえばニューヨークはじめとする米国での急速な感染。毎年、グリーンカード(米国永住権)を維持するため、5月に訪れていたニューヨーク。我が第2、第3の故郷。「今年はどうなるだろうね。それまでに国際線が飛べばいいけど」などと、つい10日ほど前は、夫と話をしていたのに、それどころではなくなってしまった。
つい2週間前。今週は、デリー滞在を経て、インパールへ赴くべく、チケットもホテルも予約していた。国際線が途絶えたとはいえ、国内旅行までもができなくなるとは、予想しなかった。
朝、福岡に住む母に電話をし、食料を1カ月分ほど、多めに買うよう勧めた。しかし周囲はのんびりとしているようで、さほど切迫感はない。こちらの状況を説明し、今のうちに、産直さん(九州産直クラブ)の食材をまとめて購入するよう勧める。
一昨日の夜はまた、スイスに暮らす夫の親友、イタリア人のマックスが感染したとの知らせが届いた。彼は夫のMIT時代のルームメイトで、わたしたちの結婚式に参列するため、デリーまで来てくれた。ボストン、カリフォルニアを経て、今は妻と娘二人とで、ジュネーヴに暮らす。身長2メートル超(!)、長距離サイクリングの鬼で、タフ極まりない彼が、10日近く不調のようで心配だ。
落ち着かない気持ちのまま眠りについたせいか、昨日は起きた瞬間から、脳みそが混濁していた。福岡の母のことが気になり、再び電話をした。
案の定、「必要な分だけ」しか注文していない。不安を抱かせないようにと思っていたが、切迫感を持って欲しい。日本も間違いなく向こう2、3週間が肝になるはず。81歳の一人暮らし。備えあれば憂いなしだ。
以下は、今朝記したことと重複するが、1日の記録として転載しておく。
先週から、書斎を夫に明け渡し、自分のデスクトップ (iMac)をダイニングルームのテーブルに置いて作業をしている。母との電話を切った後も、気持ちが淀んでいたので、気分を変えようと、テーブルクロスを取り替えることにした。そのためには、デスクトップを移動させねばならない。
普通なら、安定のある床に一時退避させるはずなのに。なぜか、自分でも全くわからない。安定の悪い椅子の上に、不安定な、その巨大なiMac(左右の幅は60センチ以上)を置いた。
案の定(!)すべり落ちた。そして液晶画面に亀裂が入った。自分で自分の行動が信じられない。今でも、信じられない。
幸い、内部に損傷はなく、起動できる。上部から墜落したので、カメラ機能は使えなくなった。必要な時はラップトップ(MacBook)があるので、対応に問題はないが、ショックだ。セロテープを貼ってみるも痛々しい。日々、ヒビを見つめねばならぬのか……と思うと気が重い。
自分の精神疲労を強く自覚した。人のことを心配している場合じゃない。
夫は普段、自分のことは棚に上げて、人には厳しい。いつもなら、相当に責められるはずである。しかし、先日、スピリチャルリーダーのムージに会い、話を聞いてからは、ずいぶんと、態度が変わった。瞑想の力は本当にすごいと思う。
「なにもかも、わたしが悪いの!」と、落ち込みをアピールしつつ、事情を説明し、状況を見せた。スクリーンを見て、一言。
「う〜ん……。ワビサビ」
なんすか、それ! 情趣っすか!
「ミホ。いい言葉を教えてあげよう。ヒビがあってこそ、光は入ってくるんだよ」
……誰っすか、それ! スクリーンに入ったヒビから、違う光が入ってこられても困るんですけど。陶磁器なら金継ぎで、独特の風情に生まれ変わるが、さすがに液晶画面はな〜。ヒビがアピールされると、作業がしにくい。
午後は、ミューズ・クリエイションのメンバーと、STUDIO MUSEの代替としてのZooMUSE。Zoomというオンライン会議のサーヴィスを使っての会合だ。Zoom + MuseでZooMUSE。動物園の動物たちみたいな、現在の人間にとっては、ナイスなネーミングだと思う。
合計で10名ほどの参加があったが、大半が近所のスーパーマーケットなどへ赴ける手段があり、食生活に支障はないようだ。わたしともう一人のメンバーが、生鮮食料が尽きてきた……という話をしたが、彼女もその後、ハズバンドが近所を歩いて買い物をすませてくれたようだ。
みなそれぞれに、元気そうで安心した。ただ、近々帰任予定だったメンバーにとっては、この未来の不透明さは、他の人以上に深刻かもしれない。この状況下、希望的観測よりも、長期化することを念頭において、心理的にも、物理的にも、準備をしておいた方がいいように思う。
夕方になって、少し気分が落ち着いてきた。猫と遊ぶこと、料理をすることが、気分転換になっている。