福岡を離れてちょうど40年。今になって、この土地の歴史や文化の深さについて、思いを馳せずにはいられない。
高校を卒業後、福岡を離れ、山口県下関市の大学に進んだ。それからは、東京、米国、インドと暮らし、久しく福岡に親しむ機会はなかった。しかしながら、年齢を重ねるにつれ、福岡だけでない、日本の伝統文化や歴史に対する関心が高まった。特にインド移住後、インドの伝統工芸に心惹かれ始めたことに並行して、日本のそれにも興味がわいてきた。
今年の4月は夫と日本を旅し、特に京都には6泊するなど比較的長く滞在したが、しかし全く時間が足りず。1カ月程度はじっくりと巡りたいと思わされるほどに、そこは魅惑的な世界だった。人間は、経験を蓄積しながら生きるから、若いころと今とでは感性も関心も変化する。
たとえ同じ土地でも、訪れるたびに新たな発見があるのは、当然のことだ。ゆえに、旅する人生は豊かにも短い。先送りせず、できる限り、行きたいと思う場所には行こうと思う。また、アルヴィンドと出会ったことで、一人では持ち得ない「外国人視点」から祖国を眺めるも楽しく、世界が広がっているのも事実だ。
さて昨日は、所用をすませたあと、中洲川端通りで浴衣を買うつもりだった。しかし、目星をつけていた店があいにくの定休日。仕方ないので諦めて、キャナルシティまで歩いて遅めのランチ。
その後、「櫛田神社」を参拝し、山笠を眺め、樹齢千年、博多一古い「不老長寿のご神木」である銀杏の大木を仰ぎ、いつものルートで「博多町家ふるさと館」へ。
ここは夫とも、幾度か訪れたことのある場所。夫は張り子のトラが気に入って購入した。今回は、友人らの土産に、博多織の小さなポーチ、それに自分のペンケースなどを買った。そして館内にて、博多の歴史や工芸品の背景などを改めて学ぶ。
昨日は、「博多曲げ物」の展示が興味深かった。また、福岡県無形文化財指定「筑前博多独楽」の絵付け実演をされている女性のお話を聞き、初めて「博多独楽」による曲芸や、その470年以上にも及ぶ長き歴史についてを知った。筑前博多独楽を正統に伝統を受け継いでいるのは、絵付けをされている女性のご主人、筑紫珠楽氏だという。彼女とご子息も、舞台に立たれるとのこと。
先ほどYoutubeで動画を見たところ、子ども時代にテレビなどで見たことがある記憶が蘇った。
帰り際、受付に置かれている資料類をピックアップする。日本語だけでなく、英語、中国語、韓国語などが併記されているものも少なくない。COVID-19パンデミックを経て、外国人観光客が激増しているらしき日本各地の観光地。福岡市もまた、例外ではないようで、すでに多くの外国人観光客を目にする。
博多区企画振興課による「博多の魅力発信会議」が発行している『博多本』という小冊子の編集が洗練されていて、とても読みやすく理解を促す。冒頭の漫画「博多ものがたり」(長谷川法世)も、この地の歴史的背景が端的に描かれていて興味をそそる。
灯台下暗し。福岡に住んでいる人もきっと、知らないことがたくさんあるに違いない。十数年前、夫と太宰府を訪れた時に、彼のリサーチにより「観世音寺」を知り、その大仏の圧倒的な存在感とすばらしさに言葉を失ったことを思い出す。
観世音寺に行ったことのない福岡の民、少なくないはずだ。太宰府に行かれた折にはぜひ、立ち寄られたい。
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