「神がディテールに宿りすぎているシヴァ寺院」を訪れたあと、リゾートに戻る道中にあるべルール(Belur)という町に立ち寄る。ここには、2023年、ユネスコ世界遺産に指定されたばかりのチェナケシェヴァ寺院(Chennakeshava Temple)があるのだ。インドには、ユネスコ世界遺産に指定されている場所が43カ所ある。そのうちの6カ所が、ここカルナータカ州に存在する。
それ以外にも、世間には知られていないだけで、文化的にも歴史的にも価値のある建造物やすばらしき自然の産物は、このインド亜大陸に数多ある。住めば住むほど、知れば知るほど、そのことを実感する。
さて、先に訪れた寺院は、破壊(と創造)を司る吉祥の最高神である「シヴァ神」を祀っていたが、チェナケシェヴァ寺院はブラフマー、シヴァに並んでヒンドゥー教三大神の一とされるヴィシュヌ神(遍く満たして維持する)を祀っている。
この三大神(トリムールティ)は「三神一体」とされ、宇宙の創造、維持、破壊という3つの機能が「3人の神」でそれぞれに神格化されているが、このあたりの世界、広すぎて深すぎて理解も説明も難しい。
1117年に完成したチェナケシェヴァ寺院。ヴィシュヌヴァルダナ王により、三世代、103年の歳月をかけて建設された。 [Go West 07]で紹介しているホイサレシューヴァラ寺院同様、インドの二大神話『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』の物語や、『バガヴァタ・プラーナ』などのヒンドゥー教の聖典が、可視化されている。また、12世紀当時の生活の様子、ダンサーやミュージシャン、動植物の石彫もちりばめられている。
あまりにも特筆すべき要素が多すぎて、概要を紹介するのも困難につき。関心のある方は、ぜひとも以下のサイトをご覧いただければと思う。ここでは備忘録として、写真だけでも残しておきたい。
できるならば、写真を拡大して、じっくりと眺めてほしい。この精緻な彫刻を!
地球上に点在する、長い歳月をかけて建造された歴史的な建築物を眺めるたびに思う。
一番最初に、「図面」を描いたのは誰なのか。さらには、建造物の大枠が完成した後の「彫刻群」のイメージ図を描いたのは誰なのか。そもそも、はじめから完成図が存在したのか。誰がどこをどう掘るべきかを指示する現場監督は存在したのか。マハラーシュトラ州にあるエローラ石窟群を訪れたときにも、そのことがとても気になった。
どういう段取りで、100年もの着工計画を立てたのか。
四六時中、カンカンと、石を彫る音が響き渡っていたのだろう、この土地。100年間の空気の振動は、この土地が持つ「波動」を稀有なものに変える働きをしたに違いない。
タイムマシンに乗って、10年おきの進捗を見て見たい。完成までの過程を知りたい。
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