木々は、芽生えては朽ちる。
人間も、生まれては、死ぬ。
我々を取り巻くすべてが、一瞬とて同じ姿はなく、常に変化を続ける。インドにおいては、そのサイクルが身近で、故に、そこに暮らす人間は、頻繁に手を加えねばならない。労力を使って。
インドに暮らし始めて以来、この20年というもの「工事現場監督」という肩書きを加えたいくらいに、インドの現場に親しんできた。
旧居の内装工事、新居の内装工事という大きなプロジェクト以外にも、数年おきに、大小の何かしらの工事に立ち会ってきた。庭づくり、柵づくり、サンルームづくり、バルコニーづくり……と、新たに構築する傍ら、壁の再塗装、しばしば壊れる各所の修繕……と、日本では考えられないくらいの頻度で、なにかしらのメンテナンスを行っている。
労働者の多くは、地方からの出稼ぎ者で、きちんとした教育を受けていない。故に、自分が望む作業をしてもらうにも、細かな指示や繰り返しの忠告が不可欠だ。目を離した隙に、プランとは異なる世界の構築が始まって、気づいたときには「なんじゃこりゃ〜!」という事態になりかねない。
ドライヴァーのアンソニーには付きっきりで立ち会ってもらいつつ、わたしも10分、15分おきに確認する。安全管理も大切。どう見ても安全には見えない梯子を繋いでの木登りなど……。ここから天に昇られても困る。
ここ数日、わたしは旧居に引きこもっていた。今年は旅行を控え、時間の合間を縫いながら、旧居の抜本的な内装工事をする。バスルームの改築や床の張り替え、壁の再塗装など。加えてカーテンの取り替えやソファーカヴァーの張り替えなどもある。内装に着手する前に、まずは庭から整えようと、椰子の葉の剪定(ダイナミック)や、柵の補修工事をしているのだ。
ところで、 大阪・関西万博のインド・パヴィリオンの建築が遅れているとのことだが、そうだろうな、としか思えない。ここ10年余りのEコマースの急成長なども手伝って、インドのサーヴィス産業の時間の概念は、かなりグローバル化した点もある。しかし、根本的な「時間の感覚」が、インドは他国と、多分違う。
時間を守るべきことと、守らなくてもいいこと……の優先順位が独特なのだ。万博会場ですらこれなのだから、インドで日本人のスタンダードを貫くのは至難の業。
とはいえ、わたしは30歳まで日本で育った日本人。しかも、スケジュール管理は巧みな方である。インドにおいても、試行錯誤してきた。極力、自分のストレスを軽くするように。
余裕を持たせて詰め込まず、確実なラインで「インド的スケジューリング」を立てつつ、自分もフレキシブルに動けるよう、調整する。なにかしらのトラブルが発生するのがインドだから、予備日をゆったりと確保することが大切なのだ。自分の心身の余裕のためにも。本当に、自分を守ることが大切。
ちなみに、スケジュール管理、段取りや休憩の挟み方、労働者への指示の仕方によっては、作業効率が大幅に向上するのもまた、インド。旧居の内装工事をしていたときに、それを学んだ。
以前も書いたが、常に現場に目を光らせること、しっかりランチの時間をとってもらうこと、そして夕刻の「チャイ&ビスケット休憩」が肝。チャイ休憩で士気が上昇、その後の数時間の捗りが顕著なのだ。🍪☕️
以前は自分でチャイを作り出していたが(夕方はメイドがいない)、今ではSwiggy(フードデリヴァリー)でチャイやスナックも手軽に注文できる。
さて、そろそろ内装工事の見積もりなども依頼せねばならない。何もかもが数年遅れで動いていて、わたしのやる気もだんだん落ちている。今年こそはやるぞ!と、自分を鼓舞しつつ……がんばろう。
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