数週間前、チェンナイにお住まいの日本人女性Aさんからご連絡があった。近々、ご帰任なさるとのことで、雛人形を引き取ってほしいという。わたしのブログをご覧になったうえで、活用してもらえるのではないかと思ったとのこと。
わたしの雛人形は、ガラスケース入りの小さなものだった。当時、若くて貧しかった両親が買ってくれた、精一杯の贈り物だったと思う。福岡実家を離れた際、人形だけを取り出して箱に詰め、東京、ニューヨーク、ワシントンD.C.、そしてインドへと連れてきた。一昨年より、着物関係の展示会を始めるようになってからは、日本を伝える工芸品の一つとして展示。多くの人たちの目に触れるようになった。
Aさん曰く、雛人形はご本人のものではなく、別の方から譲り受けたものだという。ご主人のインド駐在に伴い、チェンナイまで持ってきたものの、今後、日本で広げる機会もないとのことから、インドで引き取り手を探していらっしゃった様子。
今後も日本の伝統工芸に関わる仕事は続ける予定で、来年は新居の地下ホールを和室にする計画を立てていた矢先。一部、天窓から光が入るが、しかし全体に薄暗く気温も安定しているので、展示したままでも品質管理に支障はないだろう。今後、多くの人に見てもらえると思ったので、お引き取りを決めたのだった。
そして、日曜日の朝。当初は、Aさんの運転手だけが車に人形を積み込み、彼女は飛行機で来る予定だったが、インド・パキスタンの問題で空港が混雑する可能性もあったことから、車で6時間ほどかけて来訪された。車から、大きなダンボールが何箱も運び出される。話には聞いていたが、想像以上に大きな雛人形なのだと察する。
日曜の夕刻はゲストが来訪する予定だったので、午後はゆっくり過ごそうと思っていたのだが、開封せずにはいられない。軍手をし、埃を払い、乾涸びた乾燥剤を捨てながら、約40年前に購入されたらしき人形や小物をを取り出す。
……なんという、美しさ!
雛人形に関する詳細は、後日、改めて写真と共に紹介したい。
まずは、ひな壇づくりだ。説明図に「簡単です」と書いてある割には、説明が大雑把。しばし説明図を見つめ、組み立て開始。日曜大工的な作業が得意な自分でよかったと思いつつ、黙々と仕上げる。冷房を入れていてなお、額に汗が滲む。
赤い毛氈(もうせん)を、両面テープで固定しながら敷く。……でかい。でかいぞ!
この地下ホールは結構、広い。畳で言えば何十畳かはある。しかし、箱やらなんやらで、盛大にとっ散らかる。一般的な日本の家庭では、とても広げられないだろう。大きいお屋敷の畳の間に飾られていたのであろうと夢想する。
雛人形の顔にかけられた薄紙をそっと剥がす。やっと新鮮な空気を吸うことができて、みなうれしそうだ。家具類には、プラスチックの保護シートがかけられたまま。それらを剥がせば、新品同様の木製の家具が現れる。ようやく出番だとばかりに、どれも輝いている。
一部、破損や損失も見られたが、概ね、揃っている。人形を飾りながら、思い出す。子どものころ、近所のMちゃんの家の、七段飾りの雛人形に憧れて、うらやましく思ったものだ。それが歳月を重ね、人生の2周目を迎えるまさに今、こうして我が家にやってきてくれるとは。
これもまた、ご縁だと思う。ありがたいことだ。遠方、運んできてくださったAさんに感謝する。
夕刻、日本旅を計画しているYashoとHariが来訪。小物の飾り付けが未完成ながらも、見てもらった。二人とも、そのスケールの大きさと精緻な手仕事のすばらしさに、感嘆していた。
南インドには、雛祭りに似た女の子の人形祭り「Navratri Golu」がある。参考までに記録をシェアする。
これから外出なので、取り急ぎの記録まで。
🎎まるで日本のひな祭りを思わせる人形の祭り「Navratri Golu」。
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