シルクロード、荒野、平原、キャラバン、
中央アジア、遊牧、ジプシー、流浪……。
そんなモチーフが散りばめられた、レストランにて。
聞いたことのない、懐かしい曲に包まれながら。
こんなにも潔く、歩いているのに。
何を見ても、何かを思い出す。
何を聞いても、何かを思い出す。
処分できない記憶の蓄積が、
いつもすぐそばにあり、
ふとした拍子に、あふれ出す。
ほのかに漂ってくるガラムの香りに、
視線が遠くなる。
歳を重ねるとは、多分こういうことなのだろう。
いつまでも、
清らかに澄んだ水底に眠る、石のように。