朝食を食べていたら、すでに顔見知りとなったのホテルマネージャーのひとりから、声をかけられた。このタージウエストエンドは、客室数がさほど多くなく、サーヴィスも行き届いており、非常にリラックスできるホテルなのである。
「アパートメント探しは順調ですか?」
と問われたので、
「実は昨日、すでに契約をすませたの」
と答えたら、
「それは素早い!」
と目を丸くされた。
木曜にインドについて〜、金曜日にアポイント入れ〜、土曜日に物件探し〜、火曜日は大家と対面〜、水曜日に契約結び〜、バンガロアの新居決定〜! っていう一週間の仕事だったもんな。
今日は午前中、夫とスケジューリングなどの打ち合わせ。日曜から数日間、彼がムンバイ(ボンベイ)に出張するので、同行することになった。彼の仕事が軌道に乗るまでは、よりいっそう行動密着型夫婦となって、わたしは彼につきあうしかなさそうだ。本当はゆっくり家具や家電を見て回りたかったのだが、つべこべ言うまい。
そんなわけで、午後は家具や家電の相場をリサーチするため、あちこちの店に出向く。米国の場合、アパートメントにはたいてい洗濯機や冷蔵庫、電子レンジやグリル、オーブンなどの大物家電は備え付けられているが、インドは日本同様、自分で調達せねばならない。
家電は主に、韓国製のSAMSUNGやGL(GOOD LIFE)が主流だ。専門店でカタログなどをもらい、商品を見比べながら値段をチェック。家具に関しては、昨今、モダンかつコンテンポラリーな家具を扱う店が増えているが、わたしはコロニアルスタイル、あるいはヴィクトリアスタイルが好きなので、そのような家具を扱っている店を数店訪ねてみた。
米国に比べればかなり安い値段で、質のいい家具が手に入りそうだ。しかし、選択肢が少ないのも難。時間があれば、オーダーメイドで、たとえばソファーの布を好みのものに張り替えてもらったりできるのだが、少なくとも1カ月ほどかかる様子で(もっと早くできるところもあるだろうけれど)、ともかくは早々に生活を開始したいので、ある程度は妥協しようと思う。
問題は、この町にこれから先、どれくらい住むことになるのか、ということだ。あるいはこの国に。まあ、いつか米国に戻ることになっても、送ればいいだけだから、ある程度はきちんとしたものを買っておいた方がいいかもしれない。
ホテルに戻り、一段落したあと、ロメイシュ&ウマを招いて夕食。部屋に戻る途中、庭が光にあふれているのに気づいた。結婚式が行われているのだ。煌煌と光る満月の下で、光に照らされた木々や緑が、まるでお伽話の世界のようなようすをしており、夢現(うつつ)の心持ちにさせられる。