一歩、外に出れば。
手足のどこかが失われた人。
汚れた子を抱き汚れた手を出し、
金を乞う若い母親。
舞い飛ぶカラス。ついばむ残飯。
漂う悪臭。散らばるゴミ。
まるで投げやりに生が、けだるそうに在る。
同じ場所を、行ったり来たり。
子供が回す、木蓋が回る。
ホテルを出て、近くのチャイニーズへランチを食べに行った。ここは、1度目に来たときにはおいしくて、2度目に来たときにはおいしくなくなっていて、だから行くのがはばかられた けれど、3度目はまた、ましになっているかもしれないと思い、出かけた。点心のセットとチンゲンサイの炒め物。シュウマイがいまひとつだったけれど(非常に癖のある味の何かが混入していた)、あとはどれもおいしかった。食後、界隈を散歩するが、相変わらずこのあたりは汚くて、1時間もたたぬうちに疲労感が募る。そそくさと、ホテルに戻る。
ムンバイへ来る途中の便、ニナ叔母と偶然同じ便だったので、タクシーを同乗する。Family Planning Association of Indiaの議長を久しく務めている彼女は、今年ようやく任期が終わるとのことだが、それでも旅行が多く、ここ数カ月のうち、中国、メキシコ、セネガル、イランと、各地を転々と旅して来たらしい。サリーから太ったお腹をあふれさせ、いかにも緩慢な動きの彼女が、機敏に世界を駆けていることに驚く。そんな彼女曰く、インドの貧困層(一日の生活費が1ドル以下)は、30数パーセントから20パーセント台に落ちたというけれど、それでも、全人口10億人以上に比すれば、膨大な数だ。この国で、わたしたちの生活は、ほんの一握りの極楽。
このホテルで開かれているこのカンファレンスに、夫は出席している。そのそばにあるSEA LOUNGEで、今日もまた、ひとりゆっくりと夕食を。久しぶりに、「インド産」ではない、イタリアの赤ワインを飲む。おいしいワインが無闇に安かったカリフォルニアが、少しだけ偲ばれる。