午後、マルハン家のドライヴァー、ティージヴィールの運転で、郊外の新興都市、グルガオンに出かけた。新しいオフィスビルディングやアパートメントビルディング、ショッピングモールなどが続々と誕生しているエリアだと聞いていたので、社会科見学的な気分で出かけることにしたのだ。
「このあたりから、グルガオンです」
とティージヴィールが説明してくれる。灰色の、建築中のビルディングが、右にも左にも。スモックに煙る視界の彼方にも、遠い昔のフォート(砦)のような、まだ色のない建物が見える。まるで蜃気楼だ。
「10年後には、ここは別世界になると思います」
と、ティージヴィール。いや、10年を待たなくても、間違いなくこのあたりの様相は著しく変貌するのだろう。突き進んで崩壊せぬよう、適度な速度で行けばいいのに、と、思わぬでもない。