夜の帳、明けやらぬうちに、目を覚ます。
ベッドから下ろす素足の、ひやりとした床に触れる瞬間の、小さな違和感。
違う場所に、住んでいる。
湯を沸かし、茶を煎れる。シャワーを浴びる。荷造りをする。7時45分のタクシーは、すでに7時15分にはもう現れて、ガレージで待っている。
まだ渋滞のない朝のまちを、車は滑らかに走る。豊かな緑を抱いた街路樹のトンネルをくぐり抜け、走る。空色の制服に身を包んだ女の子たちが、舗道を歩く。三つ編みの長い髪が、つやつやと光る。大きな瞳。
路傍では、穂先の長い帚を片手に、あちらで、こちらで、人々が、掃いている掃いている。舞い上がる砂煙、砂塵。朝日に映えて美しく。
やがて右から左から、カナブンのうなり上げながら、オートリクショーがわきでてくる。狭き道、広き道、縦横無尽にゆく。いよいよホーンの合唱がはじまり、まちはたちまちの喧噪。一日の、はじまり。
今しばらくは、ここがわたしの、まちとなる。
※現在、12月3日の朝。ニューデリーのOBEROIというホテルにいます。今日はこれから外出し、今夜は実家で1泊します。そして明後日はムンバイ。次回の更新はムンバイからになります。過去の分も日付に従って更新しますので、ときどき「遡って」ご覧いただければと思います。