夕べは、定刻よりやや早めの午後6時50分に、シンガポールからバンガロア(バンガロール)国際空港に到着した。
シンガポールとは雲泥の差な空港では、蚊の歓迎を受けながら、のろのろと作業の遅い入国管理の列に並ぶ。早速、シンガポールで買っておいた「虫除け」を身体に噴霧。
それにしてもこの空港。
昨今ではシンガポール航空(シンガポール発)、ルフトハンザ航空(フランクフルト発)、ブリティッシュ航空(ロンドン発)、エールフランス(パリ発)といった国際線が、ここバンガロアに直行便を就航させているというにも関わらず、「国際性」の微塵もない。
だいたいさ〜、また言うようだけど、蚊をなんとかしてくれよ、蚊を。あと、トイレ。その気になればトイレなんて数日で改装工事が済むはずなのだが。
ようやく出国審査をくぐりぬけたかと思えば、今度は「終わっている感じ」の、老朽化した荷物受け取り所。短いベルトコンベアーがとろとろと回っている。短いから人だかりに割り込む隙間がなく、遠くから目を凝らして我がバッグを追う。
更には、荷物が出てくるのがまた、遅い。断続的に、のろのろ、のろのろ、と出てくる。黒いベルトを見つめながら、気が遠くなっていくようだった。結局、空港を出たのは、飛行機が到着して1時間半を過ぎたころ。狭い空港で移動などないというのに、なんとも時間がかかったことよ。
さて、空港を出れば今度は大渋滞。というのも、昨日はシヴァ神だかの祝祭日だったらしく、人々は夜を徹して祈ったり集ったり騒いだりするのだという。ドライヴァーのクマールが機転を利かせて迂回してくれたおかげで、なんとか1時間かからずに自宅へ到着。
家では夕べ香港から戻って来たばかりのアルヴィンド、それから明日、デリーに戻る予定のロメイシュとウマ、スジャータとラグヴァンが出迎えてくれた。
母との5年ぶりの再会を楽しみにしていてくれていた彼らは、たいへんな歓待ぶり。母は感極まって、目を潤ませている。みな、2年前の父の死を悼み、「ゆっくりとインド滞在を楽しんで」と、言ってくれる。
ロメイシュは常日頃から、
「お母さんの面倒を見るのは、子供であるミホの責任なのだから、いつでもミホはお母さんを招くといいよ。1カ月でも2カ月でも」
と、言ってくれている。もともと、気兼ねなどするつもりはないにせよ、そう言ってもらえるのはうれしいことであり、ありがたいことである。
ワインで乾杯をし、ひとしきりアルヴィンドの香港でのグルメレポートを聞き(仕事をしに行ったんじゃなかったのか)、それからシンガポールでの滞在を話し、お土産を広げる。
みな、たいへん喜んでくれて、探した甲斐があったというものである。
ロメイシュとウマは、今夜一晩はスジャータ宅に泊まる。モハンはわたしが頼んでいた通り、きちんとゲストルームの掃除をすませてくれていて、母を迎える準備が整えられていた。
明日、ロメイシュとウマは昼の便でデリーに戻るが、その前にうちに来て一緒に朝食をとると言う。いいタイミングで母と合流でき、本当によかった。