わたしたちが滞在中の3月31日から4月2日の3日間にかけては、香港が一年のうちで最も、熱く賑わうころだと聞いていた。実際、31日に金曜日からは界隈の交通量も増え、ホテルのゲストも急増しているように見受けられた。
この3日間、「香港セヴンズ (Hong Kong Sevens)」と呼ばれる7人制ラグビーの国際大会が行われるのだ。ラグビーについては詳しくない我々だが、年に一度の「お祭り」と聞けば行ってみたいもの。直前のチケット入手は困難と思われたが、CEOのヴァロンがわたしたちのために手配してくれ、今朝、2枚のチケットを手に入れることができた。
ラグビーと言えば通常15人制だが、セヴンズはその名の通り7人制。基本的なルールはほぼ同じらしいが、試合時間もハーフ7分と短く、スピーディーなゲーム展開が楽しめるとのこと。
昼頃、チケットを受け取り、ホテルからほど近いスタジアムを目指す。チケットは最終ゲームが終わる8時まで終日有効。わたしたちは数時間、観戦する予定でゲートをくぐった。
今日はホテルの最上階でブランチ。ホテルからの眺めはなかなかに壮観。バスルームの窓から、スタジアムが見下ろせる。遠目からにも、観衆の熱気が伝わってくるようだ。さあ、わたしたちもあそこへ。
バスケットボール、ベースボール、テニスと、米国でもいくつかのスポーツ観戦を経験したけれど、満席のスタジアムには、なんとも言いがたい独特の熱気が漂っていて、知らずのうちに心が高揚させられるものだ。
日差しを避けるために、さっそくキャップを買い、ボトル水を買い(ビールは観客席に持ち込めないので)、空いている席に着く。ちょうど、ポルトガル対南アフリカの試合が始まるところだった。
なるほど、7人制というのは、人数が少ない分、一人一人の動きが遠目からでもはっきりとつかめ、「素人」にも試合展開が理解しやすい。加えて、ハーフ7分という短さが、もちろん試合の質にもよるけれど、見る者を退屈させない。
3試合目には日本チームが登場。強豪チームのニュージーランドと対戦だ。自ずと応援にも力が入る。日本チームは大健闘で、勝利かと思われたのだが、最後に逆転され残念ながら破れてしまった。それでも、観客が大いに沸く、非常にエキサイティングな試合だった。
数時間で引き上げて、香港の街を巡るつもりだったのが、次々に始まる試合に「もう一試合」「もう一試合」と見てしまう。巨大なホットドッグなどを買い、アイスクリームを買い、観戦気分も満喫。
再び日本チームが登場して、しかし対するシンガポールは非常に弱く、大差で日本の勝利。あまりにも弱い相手だと、試合そのものが単調で、いくら日本が勝ったとしても、見ている方はつまらない。
そんなこんなで、6時半を過ぎてようやく、スタジアムを離れた。
香港最後の夜は、せっかくだから夜景を見に行こうと、ヴィクトリアピークを目指す。タクシーでトラム(登山列車)乗り場まで行き、そこから長蛇の列に並んでチケットを買い、列車に乗る。
それは、スイスの登山列車も真っ青の、たいそうに急勾配な坂をゆくトラムだった。たいそうなエネルギーで引っ張られているのがよくわかる。
支えを失ったらたちまち転げ落ちるような角度。乗っているだけなのに、なぜか自分まで動力の一部になっているような気がして、腕に力が入ってしまう。
ピークからの夜景は、すばらしかった。スモッグがかかっていて、今ひとつ鮮明さに欠けてはいたけれど、十分にその景観を堪能できた。
展望台から離れ、尾根伝いの道をしばらく歩いた。空に浮かぶは細く冷たい三日月。
8時を過ぎたころから、見下ろすビルディングがそれぞれに、光のショーを開始。サーチライトが闇を照らし、色とりどりのライトがリズミカルに点滅し、眺める我々の目を楽しませてくれる。
さて、明日の夜にはこの地を離れ、4カ月ぶりの米国だ。
無沙汰ののちの、彼の国を、我らはいかに、思うだろう。