↑Hatworks BoulevardのHybiscusで購入した小鳥の置物。幸せの青い鳥。
■ヨガ道場に通う日々。柔らかければ、いいのか?
このごろは毎日のようにヨガ道場に通っている。基礎を身につけるまでは、数週間、連日通った方がいいとのこと。ちなみにスジャータは、ここ何年も、毎日のように通っている。
師匠曰く、
「ゆっくり、自分のペースでやっていいからね」
「正しい形にしようと無理をしなくていいから。呼吸を丁寧に。必ず鼻で吸って鼻から吐く。」
「お腹は引き締めて、肺を膨らますようにして呼吸」
その程度のアドヴァイスをくれるばかりだが、ずいぶん集中する。場の空気のせいか。わたしが作るポーズを、軽く触れることで矯正してもくれるが、決してせかさないし、強制されないのがいい。
週2回のラグヴァンも今日は来ていて、二人は終わったあとに師匠の話を聞いている。ヨガを教える以外にも、精神の在り方のアドヴァイスをしてくれる師匠なのである。
さて、このごろは、アルヴィンドの肥満が話題となっているが、その旨、夫が相談したところ、師匠はおもむろに夫の腹部をぐいぐいと押し、「このお腹は柔らかいから、大丈夫。痩せることを考えるより、身体の柔軟性をまずは追求して、ヨガを続けていなさい」
とのこと。「柔らかいから大丈夫」と聞いた途端に、安堵の笑みを浮かべるハニー。師匠、自分のお腹が大きいからって、肥満を容認しているわけじゃないよね。どう考えても、柔らかかろうが、堅かろうが、過剰デブはよくないと思うのだが……。
わたし自身も、日本人としての標準体重に照らせば、最低でも5キロ減が望まれるところだ。最低でも、ね。でも、師匠は「体重は気にするな」とのこと。ふむ。ともかくは、彼のいうことを信じて、まずは柔軟性のある身体作りをしていこうと思う。
■ビール王国:再開発エリアで過ごす午後
穏やかな土曜の午後。夫は仕事をしている。モハンはアイロンをかけている。わたしは書き物にも読書にも飽き、出かけようと思う。思えば、インド移住以来、家財道具や調度品の調達でショッピングに熱血したものの、それ以降は母や妹を案内する形での店巡り。
もちろんあれこれと購入はしたが、純粋に、自分自身のために、ただふら〜っと買い物に出る、という機会はほとんどなかった。
一昨日、昨日と、人々と連れ立ち買い物をしてみて、そのあたりの好奇心にちょっぴり火がついた。バンガロアを離れる前に、この地のさまざまな店を、訪れておきたいと思うようになった。
そんなわけで、午後、外国人居住者が訪れそうな、お洒落なブティックがぽつぽつと立つシャンタラナガール (Shanthala Nagar) というエリアへ。バンガロア市街の東西に横たわる大通り、MGロードの西端、南側に広がる一帯で、現在、キングフィッシャー(ビール会社)が再開発を進めている場所でもある。
ちなみにキングフィッシャーについては、同社が経営する航空会社の便に乗ったこと、またパーティーでお目にかかった個性的な社長のことなどについて、過去に記した。
バンガロアクラブにもほど近く、しばしば通過するエリアだが、車を降りて散策したことは数回しかない。Vittal Mallya Road, Lavelle Road周辺を、今日は探検しようかと思う。
まずは、エミさんから噂に聞いていた"Cinnamon"というファッション&小物のセレクトショップへ。昨年発行された『Casa Brutus(マガジンハウス)』にも紹介されていた店だ。
地元のデザイナーたちによる、インドテイストの効いたモダンな衣服を扱う店で、かわいらしいトップを発見。さっそくご購入。店主としばらく雑談したのち店を出る。
■北インドから出稼ぎ青年ら。インド人客は、すぐ怒るらしい。
店を出てすぐのお向かいに、ビューティーサロンを発見。ペディキュア、マニキュアをしてもらいたいと思っていた矢先。立ち寄るべきか。
インドには、ビューティーサロンは多いものの、ネイルケアにおける「塗り」のうまいスパ、サロンが少ない。というかほとんどない。これまでホテルその他、かなりの店を訪れたが、どこもマッサージには気合いを入れておいておきながら、塗りの段階になると、適当なのだ。
これはインド全般(といってもデリーとムンバイ、バンガロアしか知らないけど)に言える傾向で、唯一塗りがうまかったのは、ムンバイのTaj Presidentのサロンで働いていた東南アジア出身の女性のみである。
そんなことはさておき、せっかくだから立ち寄ってみようと、そのBounceという店へ。ロレアルその他の商品を並べた店内は清潔かつモダンである。
ヘアカットにはじまり、ヘッドマッサージ、リフレクソロジー、ネイルケア、その他のメニューがある。インドの場合、平均値を出すのが難しいが、ホテルのスパやサロンよりはかなり安めだ。
とりあえずスパマニキュアとペディキュアを同時進行でやってもらうことにした。「1時間程度です」と言っておきながら、インドのネイルケアが1時間で終わったことはない。軽く1時間半から2時間はかかる。なぜか、相当に念入りなのだ。
今日もまた、その念入りさに磨きがかかっていた。施術師はともに若い男性。爪の掃除、角質の除去、ソルト&ペパーミントオイルのマッサージ、クリームでのマッサージ、ハーバルパック……と続く。プロダクツもよさげなものを使用していて、いい感じ。でも、たいそう時間がかかる。
彼らは二人ともダージリン地方からやって来たとかで、会話している言葉もネパール語。だとのこと。そもそもこの店は、2年前にチェンナイに開店して、二人は開店当初からそこに勤めていたらしいが、1年前にこの店が開店したのを機に、「転勤」してきたのだそうだ。
英語の覚束ない一人が、しかし神妙に言う。(彼の意図するところを、正しい文章に構成してみた。)
「新規開店にあたっては、新しい人を雇うより、経験のある人が、まず必要なんですよ。インドで、しかもこの業界では、ほんの小さな問題が、大きな問題に転じることがしばしばですから」
「小さな問題が、すぐに大きくなる。インドでは。」
言葉が覚束なくても、真理は鋭く伝わるものだな、と思わず膝を打ちたくなる。
「ここは外国人客が多いの? それともインド人?」
「だいたい同じくらい。でも、外国人客の方がいい。インド人はすぐ怒るし命令する。難しい」
瞬時に、我が家の大家、チャヤ夫人を思い出す。インドにおける富裕層の中には、使用人や下働きの労働者とみれば、自らの下僕扱いをする人が多いからね。我が家族には、そんな人はいないけれど。
ちなみに彼らも、モハン同様、1年に一度、1カ月の休暇を取って帰るのだとか。お給料はいくらくらい、もらっているのだろう。気になったがしかし、さすがに聞けなかった。
結局、たっぷり、2時間はかかり、最後のエナメル塗りは速攻5分仕上げ。やっぱり、下手だ。
「どうですか? これでいいですか? ぼく、エナメルを塗るの、うまくないんですよ」
正直過ぎる素朴青年。それは散髪に言って、「僕、髪を切るの、うまくないんですよ」って言われるのと、近からずとも遠からず。でもいいの。インドだもの。ネイルはあとで、塗り直せばいいし。要は爪と角質のお手入れね。
「塗り」以外は、他のサロンよりも格段によく、コストパフォーマンスもよかったので、今後、ネイルケアに関しては、ここを利用することになろう。
■プラスチックのゴミを捨てるなとデモする学生。拾ってゆけばどうか?
ところで、往路の道中、学生らのデモ行進に出くわした。おそろいのTシャツを着て、プラカードを掲げている。主旨は「プラスチックを捨てるな」。
バンガロアだけでなく、インドは廃棄物パラダイス。街そのものがゴミ溜めとでも言いたくなる風景は、しばしば目にする。中でもプラスチック類の廃棄物は深刻な環境汚染をもたらしているようだ。
加えて、ビニル袋などは雨期の際、排水溝に詰まり排水経路を遮断し、ひいては洪水の原因となる。去年、ムンバイの大洪水では多くの死者が出たが、あのときもビニル袋の詰まりが洪水を助長したとの話を聞いた。
その後、ムンバイではビニルではなく紙袋の使用が一般化されたと聞いたが、あれは一時的な措置か。
それはともかく、学生数十人の大規模行進。しかし主にはボーイズ、なぜか楽しげ。2、3人の男子が手をつないでお散歩状態で歩いているし。インドの男子はしかし、よく手をつなぐね。仲良きことは美しき哉。かなぁ?
おそろのTシャツ着て練り歩くのもいいけど、麻袋でも持ち、軍手でもつけて、その君たちの足下に転がっているゴミを拾いつつ行進する方が、よほどいいと思うよ。
デモと掃除、一石二鳥だし。学生らが自ら掃除する姿を見ると、他の市民も影響を受けるかもしれないし。
いや、受けんな。インド市民は。
ともあれ、今にも車を降りて、「君たち、自らゴミ拾いのデモンストレーションをしてはどうか?!」と提案したかったが、反対勢力だと思われて袋だたきにあったらやだしね。
言うは易し。傍観者としてあれこれいうのは、慎もう。
ところで、ネイルケアを受けている間、夕立が来ていた。サロンを出る頃には、雨があがっていて、埃っぽい空気が落ち着き、心地よい夕暮れの風が吹いていた。
雨上がりの薄暮の空は、やさしげな雲をちりばめて、とても穏やかな様子をしている。
思えば去年の6月にワシントンDCを離れて以来、「たいへんな寒さ」や「たいへんな暑さ」を経験することなく1年が過ぎた。このまま温暖な気候下で過ごしたいものだが……。まもなくは、デリー。
■またしても日本食。香水師の友人と再会。翻訳?
夜はまた、日本食。「十年間辛抱したらしい」夫も異存はないようなので、「播磨」へゆく。大根サラダに刺身の盛り合わせ、またしても夫好物のソフトシェルクラブと豚の角煮。結局、彼の方が喜んで食べているとしか思えないのは気のせいか。
食事を終えた頃、オーナーのジュンコさん登場。先週の記録にも書いた「うなぎ」について言及したところ、あれはケララ州産ではなく、東南アジアからの輸入品だとか。わたしたちは雑誌の記事でケララ州産と知ったのだが、ケララものは、当初使ってみたものの、非常に大きく、臭みもあったので、やめたとのこと。念のため。
他のテーブルで、見覚えのある人物を発見。以前、電気自動車RevaのCEO夫妻と共に一緒に食事をした香水調合師、アハリアだった。今日は女友達と二人で来ている。テーブルには刺身盛り合わせ&サーモン刺身の盛り合わせ。刺身が好きと言っていたが、ほんとに好きなのね。
彼女は先頃創刊された、バンガロアの情報誌「080」にも紹介されていて、アルヴィンドと共に「今度、食事に誘おうよ」と言っていた矢先の再会。彼女も実は、わたしに連絡を取ろうとしていたところらしい。
というのも、たまたま彼女と同行しているその友人が、日本人の翻訳家を探しているとのこと。
「ミホ、悪いけど2分、時間くれる?」
そう言って、いきなり話し始める。ところでインド人は、すぐに「2分待って」とか、「45分かかる」とか、中途半端な(日本人にとっては)時間の表現をするのだが、2分で終わる試しはなく、45分でできる試しもない。
そんなことはさておき、彼女が探しているのは、バンガロア在住で、英語から的確な日本語に表現できる人。日本語に関しては、ライター故、問題はないが、「翻訳」というのは、非常に難しい作業である。いくら日常英語を話せたからといって、翻訳できるかといわれると、そうではない。
仕事として受けるとなると日本語から英語は絶対に無理だが(友人の翻訳会社をいつも紹介している)、英語から日本語なら、それなりにじっくりとやれば、できるものもある。あくまでも、内容によって、である。
「大丈夫、あなたなら、できるはず! ぜひ事務所に一度いらして!」
と、すでに5分以上話をした果てに、押すことしきりの二人。ともかくは、顔を出すだけでも、出してみようかと思う。あと数カ月で引っ越すけど。
ところでこの写真。今日、Cinnamonで買った服が、偶然にも昨日、コマーシャルストリートで買ったペンダントヘッドと似合うということに気づいて早速着用の図。
「それ、かわいい!」 とアハリアにも褒められたので、図に乗って載せてみた次第。ちなみに、インド服はなぜか、脇周りが窮屈でパッツンパッツンになるものが多い。
わたしの腕が太いから、ということばかりが理由ではない。一般的に、下着がのぞき見えたりしないように、狭めに作ってあるらしい。
だからこれも、ちょっときつめなのが玉に瑕。
さて、問題のペンダントヘッド。写真では、いまひとつ実態が伝わらないけれど、ターコイズと珊瑚が施されたシルヴァーのヘッドである。
「シンプルなシャツなんかと、合うよね〜」と言いながら買ったにも関わらず、えらい派手な服と合わせている。
■ファミリーフレンドの誕生日パーティー
帰りに、マルハン家ファミリーフレンドの息子ニケル(建築家。この間ニューヨークから戻って来て、故郷で仕事をはじめたばかり)の誕生日パーティーへ。
彼ら母子が持っている家(商業スペースとして貸し出す予定)にて行われていた。
軽く挨拶をして、ドリンクをいただき、しばらくニケルほか、ゲストたちとおしゃべりをする。
建物は、Rain TreeやHatworksと同様のバンガロースタイルで、天井が高く、コロニアル様式の内装が魅力的。
バンガロアにはこのような、植民地時代の古い家屋が点在しており、それらを商業スペースとして改築するところが増えている。ここ数年のうちに、お洒落なブティックやスパなどが、次々と誕生することだろう。
……なんだか今日は、ものすごく、書いた。一日を、たとえのんびりと過ごしても、外出時間が、たとえ一日のうち数時間だったとしても、この国に来てからというもの、これまで以上に、書き留めておきたいと思うことが続出して尽きない。
ここを読んでいる人から、「大急ぎで、あちこちを巡っているという感じですね」「いつもお忙しそうですね」と言われることが多いけれど、そうでもない。わたしは家にいる時間の方が圧倒的に長い。
ただ、短時間に摂取する情報量が、非常に多いのだと思う。
自分の経験を、消化・吸収するために、確かに「大急ぎで」綴っていはいる。伝えるべき優先順位を考慮するいとまもなく。
しかし、少しも間に合わないのだ。