■ナターシャとランチ。インド自動車教習
ナターシャ。彼女はThe Taj West Endのマネージャーだった。ちなみにナターシャ、という名前はクリスチャンの祖母が命名したもので、彼女はデリー出身のインド人だ。
その彼女が、先週の金曜日に、9年間勤めてたTajを辞めたと言う。デリーで6年、バンガロアで3年。ムスリムの夫とは、「職場結婚」だ。以前も書いたが、彼らは「異教徒結婚」である。これもまた、非常に珍しいケースである。彼らには、現在2歳の息子がある。
さて、彼女はわたしの住まいにもほど近い、インファントリーロードに住んでいる。そこにあるサマルカンド(SAMAR KHAND)というインド北西部の料理を出す店で会うことにした。この店には数年前、バンガロアを一時訪問した折に来て以来、二度目だ。雰囲気よく、料理もおいしい。
一足早く到着して、テーブルについていた彼女は、おどろくほど、リラックスしていた。化粧もせず、髪も少々、ぼさぼさと。非常にカジュアルな出で立ちである。そして、表情がとても柔らかい。長年の接客業という仕事から離れて、一気に緊張の糸が解けたのだろう。
仕事を辞めた理由、家族のこと、これからのことなどを、料理を食べ、デザートのクルフィー(練乳風味のアイスキャンディー。春雨風麺が添えられている)を平らげるに至るまで、とりとめもなく、話す。
ところで彼女、午前中は「自動車教習」を受けてきたらしい。
「わたし、デリー時代から何度も免許を取ろうと思いつつ、挫折してて、実はこれで四度目なの。今日がその初回だったんだけど、もう、冷や汗ものだった〜」
「このあたりって、教習所かなにか、あるの? それとも、どこか往来の少ないところまで行って練習するの?」
「ううん。教官が家まで来てくれて、うちの近所を走るのよ」
「うちの近所って、この近所?!」
この近所、といってもどの近所も一緒だが、この近所の交通量は極めて多く、交通ルールなんて、あってないも同然だし(インドだもの)、そりゃもう、免許を持っていたとしても運転したくない場所だ。ましてやマニュアル車でだなんて、自殺行為ではなかろうか。との旨告げたら、
「大丈夫。教習車は特別な車で、ハンドル以外は、ブレーキもクラッチもアクセルも、全部助手席に付いてるの。だから、最初のうちは、クラッチの操作は教官がやってくれるのよ。わたしはハンドル操作に専念するだけ。そうじゃなけりゃ、わたし、今頃、ここでランチ、食べてわよ」
ちなみに、その車はMARUTI800らしい。インドには、気の利いた教習車があるのね。いや、日本にも、昨今ではあるのかしら。思えばわたしが日本で自動車運転免許証を取得したのは20年前。いろいろと、事情も変わっていることだろう。
それにしても、無免許で、いきなり路上?! と驚いたけれど、よくよく思い出せば、米国もそうだった。わたしは日本時代、久しくペーパードライヴァーだったので、米国に来た時点で一からやりなおそうと、教習を受けたのだった。
インドほどではないにしても、マンハッタンでの運転も、相当にスリリング。インド人のイエローキャブドライヴァーも多いしね。
わたしが通ったのは、日本人が経営する自動車学校だったこともあり、教え方は丁寧で、教習もダウンタウンの交通量の少ないところで行われたため、まだましだった気がする。
ともあれ、ナターシャは休職中だし、今度こそは、免許を取れることだろう。がんばってほしいものだ。
■航空券のリコンファーム(予約再確認)をおすすめする
このところ、バンガロアからの空の便は、混沌である。なにしろ、続々と国際線が就航し、恒常的に満席で、オーヴァーブッキングが多発している気配である。
多発、といっても、身の回りに起きたのは今のところ2件だけであるが、2件とはしかし、多いともいえる。1件目は義兄ラグヴァン。数カ月前、バンガロアからシカゴへの直行便(アメリカンエアライン)の予約を入れていて、Eチケットを持参していたのだが、チェックインの際、データが消えていた。
結局、最後まで待たされて、予約していた通路側の席は誰かに与えられ、彼は最後に残った真ん中の座席に座る羽目に。十数時間の長いフライトであるため、予約時に通路側を予約していたにも関わらず。
「両側に、すごく太った人がいて、すごく窮屈だったよ。」
喜怒哀楽の表現が単調な彼は、ひどく冷静に、ちっとも怒っている風には見えない様子で、怒っていた。
しばらくして、エミさんとショーンが、数カ月前米国に戻った際、同じ目に遭ったことを聞いた。彼女たちの場合は、Eチケットではなく、航空券そのものを持っていたにも関わらず、「何者かに」キャンセルされていたとのこと。
その「何者」が、航空会社の人間なのか、旅行代理店の人間なのか、結局は解明できず、しかもその便は満席で、結局、翌日の便に変更せざるを得なくなったとのこと。
昨今では、航空券のリコンファームは不要になってきたところだったが、ここに来て、バンガロアに関しては、しつこいくらいに確認しておいた方が無難かもしれない。それでなくても、蚊パラダイスの深夜の混沌のおんぼろエアポートで、大慌てさせられるのは、悪夢である。ナイトメア、である。
インド国内線についても、いろいろと語っておきたいことがあるが、今日は気分が乗らないので別の機会に改めたい。が、とりあえず、ひとこと。予定通りの日程で飛びたいならば、エア・デカンは避けるべし。理由は、また書く。