■犬クマ系
ボリウッドダンスも、今日で4度目。なんとなく、気分がなじんできた。しかし、踊りの最中に笑ってしまう悪い癖を、まだやめられない。まだまだ、没頭できていない証拠であろう。
ところで、これまで先生についてを書きそびれていたが、彼は多分、二十代とおぼしき、中肉中背の男子である。どういうタイプか……と言われても、まったく思いつかないのだが、強いて言えば「笑顔がかわいい犬クマ系」か。
ちなみに、「犬クマ系」とは、わたしが高校時代からの好みのタイプである。自らそのカテゴリー名を創出した。その名の通り、犬とクマの要素を持ち合わせた顔である。
で、犬クマ系とは、どういうタイプか。といえば……金城武とか、別所哲也とか、ずっと昔のブラッド・ピットとか、大昔のロバート・レッドフォードとか……である。
もっといろいろいた気がしたが、ちょっと思い出せない。
あ、ほんのちょっと、マット・デイモンも犬クマ系かな。でもマット・デイモンを見ると、ついついジミー大西を思い出してしまう。それが難点。
話が大きくそれたが、ダンスの先生である。上記の誰に似ているかと言えば、……誰とも似ていない。無駄な説明に文字数を割いてしまった。ともかくは、丸顔で笑うとかわいいのである。
その彼が、くねくねひゃらひゃら踊りつつ、さて、両腕を胸のあたりできゅ〜っと寄せたあと、パーッと左右に広げながら、
「海より深い、愛を表現する感じで!!」
などと、言うのである。目をキラキラと輝かせながら言うのである。
これが、微笑まずにいられようか。いや、いられまい。
そんなわけで、今日もまた、いい汗を流したのだった。
■脱・有閑マダム
飽きてきた。
何にって、家事一切を家政夫モハンに任せることにだ。特に台所仕事。「俺の城」を奪回したい本能がめらめらと燃え上がって来た。危険な兆しである。
思い返せば、わたしが親元を離れたのが18のとき。以来、20年以上も、「自炊」してきた。それをほぼ百パーセント、他者に託すのは、最初っから有り得ないと思っていた。
ところが、なまじモハンができる男だったため、ついつい今日まで来てしまった。しかし、半年以上を経て、ついには当初の懸念通り、「我もキッチンに立ちたい!」という衝動がこみ上げて来た。
とはいえ、モハンの本業は「料理人」である。なるたけ彼の技量を尊重したい。が、わたしだって好きなのよ、料理。
そんな矢先、すてきな解決策がひらめいた。週に一度、ヴァラダラジャン家に出張サーヴィスに行ってもらうことにしたのだ。名目は、スジャータが得意な「パン焼きを教わる」「インド料理のレパートリーを増やす」ということで。もちろんスジャータらは大歓迎である。
ヴァラダラジャン家は「ミニマムライフ志向」につき、使用人は週に数回雇っている程度だから、使用人の来ない日に、モハンを派遣することにした。
そんなわけで、第一回目は水曜日。
ららら〜ん。これで心おきなく、部屋で踊れる! 裸で歩ける! (嘘!!)
■日帰りムンバイ
今日、アルヴィンドは早朝の便でムンバイに出かけた。そして午後8時半頃、帰って来た。夕食は機内ですませてくるとのことだったので、わたしはモハンを早く部屋に返して、久々に「適当食」を作って食べた。
その適当食とは、「いただきものの焼き肉のたれ」を主とした調味料で味つけした、キャベツと薄切り豚肉の炒め物。最初は日本米を炊こうと思ったが、気づいたら、もうほんの少ししかない。これは、先日のいただきものの「うなぎのレトルト」と食べたい。
従っては、インスタントラーメンの麺をゆでて、上記のキャベツと薄切り豚肉の炒め物に加え、急遽、「キャベツと薄切り豚肉の焼きそば」とした。そうして、上に刻み海苔をふりかけた。かなり奇抜な料理である。とても「料理が好き」と言い切る人間の作品とは思えない料理である。
妙に麺がべたつくのが気になったが(なにしろ出自はラーメンだもの)、でもおいしかった。なにしろ、食のストライクゾーンが広域なのでね。
赤ワインを飲みながら、久々の、一人の食事は静かで平和だった。
と、食事を終えて直後、アルヴィンド、帰宅。
毎度、仕事の報告を延々と延々と延々と。わたしは良妻なので、ちゃんと聞いている。ふりをしている。たいていが数字の話とわけのわからない業界の具体的な話なので、真剣に聞いたところで、消化できないのである。
要は、彼が「話すこと」によって反芻できれば、それでいいのである。たまに意見を仰がれると困るけど。
30分ほどたって、ようやく一段落した様子で、「じゃ、お風呂に入ってくる」と言いながら、立ち上がった。その瞬間、彼は、ハッと大切なことを思いついたような顔をして言った。
「ねえ、ミホ。今日の僕の夕食、なんだったと思う?」
やはり、食の話題に触れずにはいられないようである。期待を裏切らない男だ。
「ん〜。チキンティッカ?」
「ちがうよ〜。ロブスター! それにキャビア!」
キングフィッシャー航空。いくらファーストクラスとはいえ、国内線1時間半のフライトに、それはなんて、過剰なサーヴィス。はじけるインド経済を象徴する断片だ。
「それでね〜。キュートなガール(フライトアテンダント)が、近寄って来て、眼鏡をお拭きしましょうか、なんて言ってくれるんだよ! 眼鏡を差し出したら、シュッシュッってスプレーをふって、キュッキュッって磨いてくれるんだ!」
それはそれは、よかったね!
なにはともあれ、日帰り出張の疲れも見られず、妻は安心だ。
心おきなく、踊っていられるというものだ。
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2005年11月、インド移住を機に始めた当ブログ。
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