●ひねもす(終日)、家で過ごす。
●昨日の日記を読み返してみるに、結婚記念日にはあまりにふさわしくない内容である。やや酩酊気味にて書き記した所為か。他所様の目に触れる文章は、しらふの、深夜ではない時間帯に、きちんと校正した上で仕上げとするべきだな。と、反省はしてみるが、取りあえず、昨日のことは、昨日のこととして、そのままにしておく。
●上の写真は、スジャータからもらった草花。草、と言っても、ただの草ではない。するりと長いのはレモングラス。少ししおれ気味の葉は、Tulsi。わたしの好きなホーリーベイジル(聖バジル)だ。どちらも料理に使えるが、ちょうど花を切らしているので、部屋に飾っている。
●このところ、ラッセルマーケットへ行っていないので、家に花がない。ラッセルマーケットで買う花が、結構長持ちするので、他ではあまり買わない。バラ、グラジオラス、月下香(チューベローズ)、ガーベラ……。と、買える花の種類は限られているけれど、いずれも美しいし、元気だし、安い。
●今日は、読むことも、話すことも、書くことも気が乗らず、つまりは体調がいまひとつだった。ニュースを見ても、よくない知らせばかり。こういう日、キッチンに立つのは、いい。ちょうどモハンはスジャータ宅に出張サーヴィスに出ていたため、少々早いが午後6時頃から、夕飯の支度をする。
●今日はポークチョップをマリネして、オーヴンで焼く。ジャガイモも、オリーヴオイルを振りかけて焼く。あとは、キャベツとニンジンのヘルシー野菜スープ。野菜スープの、さまざまなスープのだしの香りが、鼻から吸い込まれて全身に行き渡り、薬草のように癒してくれるようだ。
●夫は来週、ムンバイ&デリー出張で、再来週は、香港へ再び。「ミホも香港、行く?」と誘われたが、つい先日、行ったばかりだし、日本米はまだ潤沢に残っているし、寿司や刺身を切望しているわけでもなく、点心類もたっぷり食べて来たから、今回は留守番することにする。わたしとって、香港って、いったい……。
●「僕が子供の頃は、おじいちゃんが海外に出るとき、みんなにお土産のリストを託されてたんだよ。当時、インドにはなにもなかったからね。お菓子とか、化粧品とか、電化製品とかね。ミホも、香港で僕に買って来てほしいものがあったら、リストにしておいてね」
●日本の暑さがおさまるころ、久しぶりに帰ろうかと思う。カリフォルニアに住んでいた1年前に帰国したが、名目は「母を迎えに」だったので、東京に3泊、福岡に2泊という超短期滞在だった。今回はせめて10日は過ごしたい。日本の暑さがおさまるとは、いったいいつだろう。10月くらいか。
●久しぶりに日本へ帰ったら、久しぶりに温泉にでも行こうと、母と妹との間で話が出ているようだ。温泉と言えば、父他界にあたって帰国した折、妹夫婦と我々夫婦と4人で、黒川温泉へ行った。
●浴衣姿でアルヴィンドと二人、湯巡りをしていた。わたしの後ろには、アルヴィンドしかいないはずなのに、どうしても、二人の男性の気配がしてならなかった。父もついてきたのだと、思う。あの旅もまた、それはそれで、いい旅だった。
●アルヴィンドの実母の遺灰は、ヤムナ川に流され、大海に流れ出でた。墓がない、というのは、いいものだとも思う。
●若い女しか相手にできないことを自慢げに語る哀れな男が蔓延っている日本。それを笑いながら受け入れる日本の慣習は狂っている。あどけない顔に化粧を施し、薄汚れた男に近寄り、金を求める。そういうことが、どうして「普通のこと」になってしまっているのだろう。
●今日のインターネットにおけるニュースが、あまりにも、ある芸人の不祥事を盛んに取り上げているので、不思議だった。彼のことを、わたしは見たことも聞いたこともなかったが、そんなに有名な人なのか。欽ちゃんが、目頭を熱くして球団を解散するほどに、連帯責任であるべきなのか。
●ポークチョックが、ジュウジュウと音をたてて焼けている様を、オーヴンのガラス窓越しに確認しながら、よく冷えた白ワインを飲む。その瞬間の、得も言われぬ、幸せな気持ち。
●スジャータは明日から1週間ほどデリー行きだ。ヴァンク−ヴァーから帰国するラグヴァンと合流して、バンガロールに戻ってくるらしい。みんな、行ったり来たりだ。
●次の「十億分の一のインド」は、実はラグヴァンにインタヴューをしたいと思っているのだ。
●涼しい気候というのはいいが、こうメリハリがないと、記憶の順番が刻みにくくていけない。感性を育む上で、記憶を彩る上で、四季の果たす役割は大きい。日本の四季は、そこに明らかな濃淡があるからこそ、美しい。しかしこのごろは、四季の強弱の、不快さばかりが耳に届く。なぜだろう。
●あまりにも、長い、長い冬が続いた果ての、ワシントンDCの春は、すばらしかった。あの、4月から5月にかけての、水仙にはじまり、桜や、ツツジや、ハナミズキや、バラの、次々に花々が開いて、開いて、なんて花は美しく、なんて緑は瑞々しく、豊かだったろう。
●ここ「ワシントンDC情景」に、たくさんの花が咲いている。四季を問わず。こんな綺麗な場所にいたのに、どうしてこんな汚い場所目指して、一生懸命だったろう。どうしてこっちが、いいだろう。
●世の中、わからないことばかりだ。