先日、スケジュールノートをめくりながら、7月8日の土曜日は、一日遅れの七夕パーティーを開こうと思い立った。
今回は、あらかじめ1週間前にゲストに声をかけ、そしてマダム自ら、何らかのおもてなしをしたいと思う。
だってインドに来て以来、パーティーの陰なる主役は「モハンのインド家庭料理」でしょ〜?
それなりに料理の好きなマダムとしては、らくちんでうれしい反面、不完全燃焼でもあったのね。
主なる料理はモハンに任せるとして、前菜やデザートは、マダムが担当しようと思う。そんなわけで、昨日の午後は久しぶりに、モハン共々買い物に出かけた。
Bamburiesで鶏肉(丸ごと)、ラムチョップ、タイガープラウン(エビ)を買い、ラッセルマーケットで野菜、フルーツ、花を選び、Thoms Bakeryで卵、乳製品、ワインを求め、最後にオーガニック野菜や舶来の食品などを扱うNamdariesへ。
ここでベイジル(バジル)やヴァニラビーンズ(もしくはエッセンス)などを買おうと思うが、どちらも品切れであった。やむなく、パン、バルサミコ酢などを調達し、帰路につく。
さて、パーティー当日は「俺の城」なキッチンが込み合うことが予測される故、モハンが休憩している間、菓子づくりの下ごしらえを行う。
今回の品目は、アップルタルト、マンゴームース、ブレッドプディングの三種である。マンゴームースはデコレーション以外、ほぼ完成させ、タルトはパートシュクレ(タルト生地)のみ作り、冷蔵庫で寝かせるところまでをやっておいた。
そしてパーティー当日である。朝食を終え、一段落した後、準備を開始しようかと思う。
キッチンのL字型になっている調理台の、少なくとも4分の1は確保したい。しかも、干渉されたくない。
モハンは未だに、「マダムに台所仕事をさせることに気がとがめているらしい」(スジャータ談)が、そんな配慮は捨ててほしい。
従っては、アルヴィンドに、「私見を交えず、ただ翻訳マシンと化して、わたしがこれから述べることを、一語一句違わず、モハンに伝えてくれ」と依頼し、二人してキッチンへ。
「わたしは、今日、パーティーのために、前菜と、菓子を作ります。
「従っては、調理台の、ここから、ここまでを、使用したい。
「材料などの準備は自分で行います。
「ゴミ処理もします。
「わたしが、それをしたいのです。
「洗ってほしいものは、シンクに置きます。
「だから、わたしの領域内には手を出さないでください」
これでなんとか、自分の世界に没頭できるだろう。
さて、インドで焼き菓子を作るのは、今回が初めてなので、素材のバランス、オーヴンの火力などの勘がつかめておらず、うまく焼けるか心配したが、少々焼けすぎたものの、概ね合格である。
タルトの焼ける匂いに、モハンも「グッドスメル(いいにおい)」と、感想を漏らす。気を良くしたマダム、味見のタルトを少しモハンにあげる。書斎で仕事中のアルヴィンドにも食べさせる。「オイシ〜!」と叫んでいる。
焼きたての、まだ温かいタルトも、サクサク、ほくほくしておいしいのだ。
途中、ランチ休憩をはさみつつ、キッチンにおける平和的共存を実現し、菓子作りは終了。
前菜用に日本的サラダ(ジャガイモ、ニンジン、卵、そして、キューピーマヨネーズ!)を作り、ナスとマッシュルームのフライ(日本のパン粉使用!)の作り方をモハンに伝授し、イタリアンなサラダ(レタス、インゲン、ウォルナッツ、マンゴーにオリーヴオイル、バルサミコ酢)の下準備をする。
さて、シャワーを浴び、サリーに着替えて(本日は伝統的サリー)、本日の主役である「七夕の飾り付け」を始めねばならない。竹は、朝のうちにアパートメントのマネジメントオフィスに足を運び、事情を説明し、庭にある竹を2本ほどもらうことにした。
ガーデナーに依頼して、部屋まで運んでもらったのだが、彼が持っていたのは、葉をすべて切り落とした「竿竹」。
「オウ! ノ〜!!」
まさか竹全体を所望しているとは、ガーデナー、思わなかった様子。ゼスチャーで事情を説明し、改めて、「枝葉付き」を持って来てもらった次第だ。
夕方、義姉スジャータがやってきた。ラグヴァンは今日からヴァンクーヴァーへ、学会のため出張につき、彼女はこの週末、我が家に「泊まりがけ」で滞在するのだ。
さて、「七夕飾り隊」のカナコさんが、折り紙とマイハサミ持参で一足先に登場。
二人して、短冊やら飾り作りに励む。が、こんなことをするのは数十年ぶりで、気の利いた飾り付けを思い出せない。リング(チェーン?)だけは、速やかに思い出せたが、あとはだめだ。
ああでもない、こうでもないと、首を傾げながらも、取りあえずは作り上げていく。短冊作りは、糸を通して結ぶのが結構面倒。それでもなんとか共同作業で、それなりに七夕らしいムードを演出できたかと思う。
それはそうと、マダムのサリーと、テーブルクロス、テーブルライナーが一体化してはいまいか。
さて、そろそろゲストが来る頃だ。マダムはキッチンへ向かい、スナックの準備をし、前菜の作り方をモハンに指導する。輪切りにしておいたバケットに、あらかじめ作っておいたガーリックバターを塗り、トーストする。
日本的ポテトサラダは、ディップよろしくガーリックトーストに載せて食べる。結果的には、「好評な味」となった。
また、モハンにナスとマッシュルームのフライも指導したが、「パン粉をむらなくつけること」という部分が遵守されておらず、また、最初の数個は火が強すぎたのか「焦げ過ぎ」だったので、現場で実地指導。味見をした上で、ゲストへ出した。これも、概ね好評であった。
次々に、ゲストは訪れ、今日は少々多めで18人ほど。一人一人に短冊を渡し、願い事を書いて笹の葉に吊るしてもらう。ゲスト同士、初めて顔を会わせる人も多く、しかし皆、楽しげな様子で何よりだ。
強いて言えば、ラグヴァンが不在なこと、また、友人のナターシャが足首を骨折してギプスをしており、参加できなかったのが残念であった。ナターシャは近くに住んでいるので、近々見舞いに行こうと思う。
さて、本日の夕餉のテーブルである。食事の前に、まずトマトと豆(カルダモンとジンジャー入り)のヘルシースープが出された。これは我々のお気に入りスープである。
写真左は、左端から、オクラのカレー、ジャガイモのグリル、ライタ(キュウリ入りヨーグルト)、マダム作イタリアンサラダ、コーン入りカラフルサラダ、右端はおつまみのフライの残り。
写真右は、奥からグリーンピー入りごはん、トマト風味カレーのパニール(自家製チーズ)、エビカレー、ラムサグ(ラム肉のホウレンソウカレー)、チキンカレー、ニンジンのグリルである。
本日は七夕ということもあり、いつもより品数多く、華やかにしてみた。このごろは、モハンの実力を理解しているので、どれくらいを作れるか予測することができ、従っては買い物時にメニューの内容を伝えておけば、つつがなく、かような食卓が実現するのである。
料理はいつも通り、とても好評で、みな、2周、3周して、堪能してくれた。でも、お腹いっぱいにならないでね〜、マダムのスイーツがあるのだからね〜と、久しぶりのことゆえ、マダム、何度もうるさい。
皆が食事をしている間、ブレッドプディングをオーヴンに仕込んで焼く。
皆が食事を終え、ブレッドプディングがいい感じに焼き上がったところで、デザートの時間。上の写真の手前から、アップルタルト、ブレッドプディング、マンゴームース、そしていただきもののチョコレートケーキである。
アップルタルトは本来であれば、表面にアプリコットジャムなどをぬり、てかてかとさせるところだが、ジャムはないので、代わりにザクロの実を散らす。なかなかにかわいらしい。
写真左のブレッドプディングは、ヴァニラ風味を得られず、どうしたものかと思ったが、レーズンをラム酒漬けにして、ほのかに「ラム酒風味」にしてみた。ちなみにパンはDaily Breadのイングリッシュバタートーストを使用。
写真右のマンゴームースは、本日、表面に軽くホイップした生クリームを流し、豪華にマンゴーを盛りつけた。マンゴーこそ、表面に光沢がほしいところだった。小さく切って表面に散らした方が美しかったかもしれない。
結果としては、自分で言うが、どれもおいしかった〜! ほかほかブレッドプディングもおいしいし、タルト生地がさっくりとしたアップルタルトもおいしい。マンゴームースはすでに数回作って味は予測していたが、変わりなくおいしかった。
無論、使用しているマンゴーの種類は毎回異なるが、今が旬のマンゴー(名前を失念)も、非常に美味である。ちなみに数種類を混ぜた。
インドは乳製品(バター、生クリーム、牛乳)がおいしいし、小麦粉(Maida)の風味もいい。素材の味がいいので、おいしい焼き菓子が作れて当然かもしれない。
米国時代は、日本のレシピを使用すると、うまく焼けないことがあった。小麦粉が異なるし(薄力粉、強力粉の区別はなく、All Purposeを使用する)、乳製品は淡白なものが多い。
一方、インドのバター(Nilgiri'sのクッキングバター)は濃厚だし、生クリームもこってりだし(Nilgiri'sの生クリームを使用。少々酸味がある)、牛乳はわたしの場合、乳脂肪分の高いRich Milk(やはりNilgiri'sの宅配牛乳)を使用しているので、カロリーは高めと言えば高めだが、風味は格段にいい。
みんなに喜んで食べてもらえて、マダムは非常にうれしかった。やっぱり自分で作って喜んでもらえるというのは、いいものである。心地よい達成感である。
「みんなの願い事を読んでいいの〜?」
と、アルヴィンド。読んじゃだめなんだっけ?
日本語、英語、ヒンディー語、カンナダ語(バンガロール界隈の現地語)、ロシア語、チェコ語、スロバキア語で書かれた願い事の数々……。
非日本人のゲストへ七夕の習慣を伝え、おいしいものを食べ、親睦を深め、テーマ性のある、本日もまた、いい夜であった。
「キューティー七夕飾り隊」
……おばかね。
楽しゅうございました。