このごろのインドは、祝祭が続いている。宗教的な儀礼があれこれと、各地で行われていて、わたしだけでなくアルヴィンドも、なんのことやらわかっていない。
今朝の新聞。小さな告知広告。
"BUTTER WILL BE ACCEPTED FROM 17.08.2006 ONWARDS"
バター……が、受け入れられる? バター……?
一瞬、自分が寝ぼけているのかと思ったが、さにあらず。神様の像に塗り付けるバターの、受納に関する案内記事だった。精製バターの粒を神像に投げつけ、奉納するのである。想像するだけでもべたべたと、脂っこいのである。
さて、何かしら、気分が浮き足立ったままのインド生活。時にはゆっくりと、ということで、今日は久しぶりに夫と二人でアンサナ・スパへ。車で40分から1時間と、決して便利な場所ではないけれど、町中から離れたところで、身をほぐすのはいいものだ。
今日はフェイシャルとマッサージのセット。風が吹き込むトリートメントルームで、小鳥のさえずりを聞きながら、瞬く間に眠りに落ちて行く。夢と現の狭間で、雑念が、浮かんでは、消える。
明日は、デリーの伯父が泊まりに来る。片付けをしなければ。
あ、パンを切らしてるな。花も買わなきゃ。
伯父さんは、朝食、何がいいだろう。
仕事が入り始めたのは、いいことだ。忙しくなったとしても。
クッキングクラスも、軌道に乗り始めたし、新しい企画も考えたい。
そうだ。10月には、一度米国に行かねばならないのだ。査証の関係で。
アルヴィンドはハワイがいいと言うけれど。わたしはニューヨークがいい。
日本へも、年内には一度、帰りたい。温泉。刺身。
本棚が届いたら、掃除が忙しいな。クローゼットも片付けて……。
あ、オーヴンの修理を頼まなきゃ。やっぱり、食器棚も買うべきか……。
しばらくの、まどろみのあと。
目が覚めたら、雨音だった。葉に打ち付ける雨の優しい音が、また心地よい。ここは本当に、気持ちの落ち着く場所だ。
あいにく、帰路は渋滞で、しかし、雨に滲む街の様子を、車窓から眺めるのも悪くない。
夜になると、ひときわ賑やかになる、インドの街路。たとえ、雨でも、人は歩いている。闇に浮かぶ、裸電球に照らされた、軒先、人々。
わずか数メートル先にある世界が、まるで映画のスクリーンの中のように見える。
近くて、遠い世界。