本日は、クッキングクラスの「補習クラス」であった。第一回目のチキンカレーを再び。補習クラスのコンセプトがよくわかっていないのか、それとも毎度我が道を行きたいのか、同じメニューにも関わらず、微妙に異なるスパイスを使ってみたりしたがる料理長モハンを制しつつ、「基本形」を実習。
ところで、マンゴーのシーズンが終わってしまい、従っては人気の「マンゴーヨーグルトムース」の講習ができなくなってしまった。 ついては、マンゴーに代わる果物を、と、夕べフレッシュなパイナップルで実験してみた。酵素の成分を持つ果物を使うとゼラチンが固まらないらしいが、火を通せばいい、とのことだったので、少々煮てみた。
そして、一晩、冷蔵庫で寝かせたが……「フルーチェ」状態のまま、固まらない。しかし、味見をすると、おいしい。マンゴーに勝るとも劣らぬ風味の良さだ。半分を冷凍庫に入れ、半分をそのままにして、「アイスクリーム&ソース」状態にして食後に出した。結構、好評であった。夜、アルヴィンドに与えたら、非常に気に入っていた。
パイナップルは、ムースではなく、最初から「アイスクリーム」のコンセプトで作ってみようかと思う。するとゼラチンもいらないし。実験結果は、また後日、報告したい。
さて、クッキングクラスのあと、昨日スジャータから情報を得ていた「クラフトフェア」へ行くことにした。我が家からほど近いアートスクールにて、インド各地の工芸品のバザールが開かれているというのだ。開催は明日までとのことなので、早速出かけることにした次第。
そのキャンパスは、鬱蒼とした木々が茂り、さまざまな植物や花々が在り、寺院があり、石仏があり、学生たちは色鉛筆を片手にデッサンをし、一種独特の味わいを醸し出している。
特に何かを買い求めるつもりはなく、ただふらふらと、露店をのぞきながら歩いていたのだが、「いい香り」に引き寄せられて、手作り石けんの店で足を止めた。
手作り石けんは最近「ありがち」だし、今使っているサンダルウッドやアーモンドオイルの石けんは、そこそこ使い心地がいいので、最初は買うつもりなく、しかし手に取って匂いを嗅いだりしていたのだが、そのオイルの香りのバランスのよさに、関心が高まる。
素朴ながらもかわいらしい紙袋には、それぞれの石けんに含まれる成分やその効能が丁寧に書かれている。
「これはどこで作られているのですか?」
販売している品のいい初老の女性に尋ねたところ、
「ヒマラヤ山麓の、アシュラムで作られているんです」
たちまち、脳裏に雪を戴くヒマラヤを望む、麗しい自然のただなかにあるアシュラムが夢想された。実際はどうだかわからないが、なんだかとても、「よさそう」な気にさせられる。これは、買うしかない。
1個80〜90ルピーと、インドにしては高いけれど、上の写真の5種類を買った。ちなみに買って部屋においておいたら、野の花のような、甘く爽やかな香りが漂って、すばらしい。
さて、館内に入れば、今度は布の海。地方ごとに特色のあるサリーやサルワールカミーズの布地が売られている。ラジャスタン地方のブースで布を見ていたら、初老のマダム3人組が傍らに立った。
一人の女性が声を上げる。
「まあ、この店! わたしがジャイプールに行ったときに工房を見せてもらった店だわ!この店はすばらしいの。すべてが、天然素材なの。わかる? 布だけじゃなく、染料はすべて自然の素材を使われていて、その技術もすばらしくって。見てご覧なさい、これ!」
店のおじさんは殆ど英語を話せない。まるでそのマダムが、代わりに営業をしているようである。
「この店の布地は、本当にいいのですか?」
わたしがマダムに尋ねると、彼女は目に力を込めて言う。
「もちろん! わたしは工房で見て来たのよ。これらは、伝統的な手法で作られているの。もちろん、すべて手作りよ。これはね。服というよりは工芸。そう、芸術ね」
そういう一言に弱いわたし。次にジャイプールに行く機会はいつだかわからないし、こりゃあ、買っておいた方がいいかもしれぬ。ついつい、一枚、買ってしまった。おじさんが手に持っている、右上の写真がそれである。木製のスタンプでペタペタと判子を押すように模様を付けて行くのがジャイプールの布地の特徴。
この模様は、伝統的なチョーウンディキウティ(発音、あやしい)というものらしい。
一枚でもう十分、と思っていたが、こちらの派手派手サリーにもひかれてしまう。すべて手刺繍が施されているのだ。これも、悩んだ末に、ショッキングピンクと黒というかなりな色合いのサリーを買ってしまった。いずれも、帰路、コマーシャルストリートに寄ってブラウスを仕立てに出したので、いつか着用して、登場したいと思う。
しばらくの間、あちらこちらを散策し、すでに見慣れた、しかしどこかに新しさがあるインドの工芸品を眺めていく。
わたしもヘナをやってもらいたかったが、順番待ちに時間がかかりそうだったので、今日はよしておいた。練習して、自分で描いてみるのが楽しいかもしれない。でも、あのコーンの染料を操るのは、なかなか難しいかもしれない。
さて、明日からは、久しぶりにゆっくりの週末だ。アルヴィンドもまだ本調子ではないので、家でのんびりと過ごそうと思う。