●ここ数日、なんだかお肌がしっとり潤っている。と思っていたら、バンガロールはどうやら、最近、湿度が高いようである。世間は「蒸し暑い」と言っている。今週は外出が少なかったが、確かに外に出たときは、暑かった。わたしは暑さに強いため、さほどの不快を感じなかった。
●ヴァラダラジャン夫妻によれば、バンガロールもまた、ここ数年、雨期や乾期のサイクルが狂っているようである。地球規模で、気候が読めない。
●今日は、午後から肉体労働。ようやく、本棚に書物を詰め始めた。あの日のから生まれ変わった書棚に。米国で、たっぷり処分して来たはずだったのに、思いがけない古い書類なども出て来て、捨てられなかった自分に呆れる。
●こういうとき、いつだって、モンゴルを旅したときを思い出す。遊牧民のように、身軽に、身軽に、在れたらいいのに。という思いと反するように、物欲。わたしのそれは、かなり軽いはずなのだが。
●パタパタっと、ゲルを解体し、草のある地を求めて、ウマと、ヤギと、ヒツジらと。そうして、タタタッと、ゲルを組み立て、そこで暮らす。南に玄関、西に男、東に女の寝台を。
●「永遠なるものとはなにか、それは人間の記憶である」「財宝がなんであろう。金銭がなんであるか。この世にあるものはすべて過ぎ行く。この世はすべて空(くう)だ」……オゴタイ・ハーン(チンギス・ハーンの息子)の言葉。
●片付けは、中途半端で挫折。昔なら、一気にやっていたところだが、どうも横着なマダムライフが定着して、いや、インドの呑気な気風が定着して、「ま、残りは明日でいいや」の気分で。
●七尾さんに送ってもらっていた本の中に『出口のない海』(横山秀夫著)というのがあった。恥ずかしながら、「回天」と呼ばれた人間魚雷のことを、わたしはよく、知らなかった。神風特攻隊のように、海での自爆兵器が存在していたことを、知ってはいたけれど。
●読んでいるだけで、息苦しくなり、何度も深呼吸が必要だった。
●ヨガ師匠は、よく生きる術を、知っているようだ。スジャータやラグヴァンは、しばしばヨガの終わり、彼から話を聞いている。彼が話す「日常生活の中の哲学」は、わかりやすく、実現が簡単そうに聞こえるのだが、実のところ難しい。
●人はたやすく、邪念に囚われ易い。
●アルヴィンドは、太っている。出会った頃から、10キロは太った。かといって、食べ過ぎているわけではなく。わたしよりも少し多いくらいか。アルコールはわたしの方が遥かに多く摂取しているし、菓子も同程度。しかし、体質のせいだろう、コレステロールも高く、太り易いわたしよりも更に、太り易い。
●「僕は体重を減らしたい」と、ヨガ師匠に話すたび、「気にするな」と言われる。たとえば腹部が堅い太り方はよくないが、アルヴィンドは「やわやわ」だから、いいらしい。わたしは、いやだけど。
●なにしろヨガ師匠、長身だが、同時に太っている。「僕は96キロある。理想だといわれる体重は65キロだ。しかし、30年間、この体重で、常に健康を保っている。同じ太り方でも、健康的と不健康的があるのだ。君は過食をしているわけでも、不健康な暮らしをしているわけでもない。気にするな」
●確かに、彼に食事制限をするのは酷とも思えるのだ。なにしろ、そんなに食べ過ぎていないのだから。でもね。見た目がよくないの。その点、どうなんでしょうか。
●「幽霊の存在なんか、有り得ない」と言ってる割に、モハンの幽霊話のことが気になっているアルヴィンド。今日も、「その後」を尋ねている。
●彼の部屋には、以来変化はないが、同じ棟の使用人もまた、自分の家でしばしば幽霊を見るらしい。インド人幽霊体験インタヴューでもしたいくらいだ。