今月は、留守にすることが多いため、本日を最後に向こう一カ月はクッキングクラスもお休み。
そんなわけで、普通は最大8名のクラスだが、今日のところは10名をお招きし、「パーティー感覚」なクラスとした。
普段、ダイニングテーブルで食事をするところを、立食&リヴィングルームで食事をする、というだけの違いなのだが、パーティー感覚、と呼んでみるだけで、華やかな感じがするからすてき。
今日もまた、レシピの概要をここに転載する。
【ミューズ・クッキングクラス 第9回】
今回は、「パーティーにおすすめのインド家庭料理」として、スナックでおなじみのサモサと爽やかなヨーグルトの酸味が利いたチキン、あずきに似た風味がやさしいロビアの3品を作ります。また、子供も大人も楽しめる、マダムお勧めの「ブレッドプディング」も講習します。
●ヴェジタリアン・サモサとソース2種
海外のインド料理店では「前菜」として出されるサモサですが、ご存知の通りインドでは、カジュアルなストリートスナック。おいしい反面、油っこく、どっしりとしたサモサは食べ過ぎが気になります。そこで講習では、パーティーの際にも気軽につまめる「ミニサイズ」サモサを作ります。ソースは、タマリンドソース、コリアンダーソースの2種類です。
ヨーグルト、牛乳とスパイスでマリネするチキンは、簡単ながらも個性的な味わいが魅力です。講習では、いつものように一羽の鶏を丸ごと調理しますが、好みの部位のみ購入して作るのもいいでしょう。パーティー用には食べやすいよう細切れにします。モハン料理長のオリジナルメニューですが、なぜ、「アフガニ・チキン」と呼ばれているかは、不明です。
●ロビア(豆の煮込み)
あずきによく似た風味の白い豆、ロビアを使ったダールです。まろやかな味わいがやさしく、後を引くおいしさです。
●ブレッドプディング
残ったトーストなどを用いて簡単にでき、しかもおいしいブレッドプディング。講習ではDAILY BREADのPREMIUM ENGLISH BUTTER BREADを使用。ふんわり優しく焼き上がります。
モハン料理長のインド料理は、「タマネギのすり下ろし」だの、「トマトのすり下ろし」だの、「ニンニクのすり下ろし」だのと、涙が出たり、指を一緒に下ろしてしまいそうになったり、指先が猛烈に臭くなったりと、それなりの試練を乗り越えてできあがるのだが、今日はまた、異なる試練であった。
サモサの皮。
この皮を作るために粉を捏ねるのは、かなり力がいるのだ。「できる限り硬い生地」を作る必要があり、そのためには「腰から力を入れて、全身の重量をかけて捏ねる」くらいの気合いが要される。皆、ひと通り、試してみる。
「餃子の皮で代用できるかもね」
「春巻きはどうかな?」
「日本から持って来られます?」
早くも安易な対応策が飛び交う。
うまく長方形(?)に伸したあと、三角錐型にするのも難しい。だいたい、伸してる段階で、かなりイカした形になるわけで、うまく蓋ができなかったり、シッポが余ったり、なかなかきれいにできないのだ。
この道25年のモハン師匠は、手際よく作り上げるので簡単そうに見えるのだが。
それにしても、こうして皆で手作業をするのは、楽しいものである。会話が弾みすぎて、うるさいくらいである。
「今、ポテトを茹でてます。それから、豆も、先に茹でます……ちょっと、そこ聞いてる?!」
マダム、まるで学校の先生である。
皆が料理をしながら朗らかにおしゃべりをする様子を見ていたら、ふと、遠い昔、メキシコの田舎を取材したことを思い出した。
ドライヴの途中に出くわした村人の結婚式。屋外で、1週間近くも続けられていたその披露宴。
立ち寄る誰をも受け入れてくれるハッピーな人々。言葉も通じぬ外国人の我々にさえ、次々に、酒や料理をふるまってくれた。
思えばあのときまで、わたしはアルコールが苦手だったのだ。ところが、遠慮をしてはなるまいと、テキーラを、コロナビールを、ラムを、勧められるがままに飲み、気づいたときには、「意外に大丈夫?」な自分を発見し、あれからお酒を嗜むようになったのだ。
26歳の秋だった。
そんな話はさておき、そのとき、一画の掘建て小屋(台所)で、村の女たちが集い、料理をしていた。いかにも楽しげに、賑やかに、和気あいあいと。
夕暮れ時の、食べ物のいい香りがする場所。火の温もり、たちのぼる湯気……。ある人は、トルティーヤを捏ね、ある人は、チョコレートソースを作り、ある人は牛肉をあぶり……。
西日を受けながら、満面に皺を浮かべて、その彼女たちの笑顔が、とても美しかった。
遠い日の情景が、束の間、懐かしく脳裏を過る。
さて、今日もまた、実習以外の料理もいくつか加わって、豪華な昼餐。
ブレッドプディングは、ちょいとパンが多すぎて「あふれ気味」だが、オーヴン不調ながらもふんわりと焼けて、先日のいただきもの、「巨峰のレーズン」もぷくぷくとして、とてもおいしく仕上がった。
クッキングクラスのあとは、アーユルヴェーダのスパを取材に、近所のホテルへ。ドクターの話は非常に興味深く、改めてゆっくりと話を聞かせていただきたいくらいだ。
今、作業をしているバンガロールの記事は、数カ月後にインターネット上で公開される予定なので、その折にはまたここでお知らせしたい。
取材のあと、アーユルヴェーダのフェイシャルもついでに受けて来る。とても女性らしい男性セラピストによる、マッサージが丁寧な、心地のよいトリートメントであった。
深夜、アルヴィンドがムンバイ&デリー出張から戻って来た。明日は6時半起床で、二人して病院へ健康診断(プチ人間ドック)へ行く予定で、従っては午後8時以降、飲食一切禁止。
わたしは、ランチの残りなどを軽く食べたが、移動の都合で夕食を食べ損ねたハニー。帰宅するなりお腹が空いたお腹が空いたとうるさいったらありゃしない。
インドの病院。きれいと噂の場所だが、いったいどんなものだか。
楽しみだ。