仕事の資料を求めに、午後、書店へ向かう。いつものCrosswordだ。最寄りの書店、というわけではない。バンガロールの町中にある、唯一の大型書店がそこなのだ。
バンガロールは小さい町にも関わらず、昨今は交通渋滞が著しいから、わずか5キロ先を行くのにも、何十分もかかることがある。幾度もの長い信号待ちや渋滞に巻き込まれながら、ようやく書店へたどりつき、目的の物を購入した後、今度は町の北部へ。
実は先日、家電フェアをやっているのを見かけていた。引っ越しを控えていることもあり、見ておきたいと思っていたのだが、なかなか行けず、すでに終わっているだろうと思ったものの、試しに赴いたのだ。案の定、すでに終わっていた。
そのまま帰るのもなんなので、帰りにRain Treeに寄った。
何度かここでも書いたが、古いバンガロー(邸宅)を改装して作られた、ブティックの集合体だ。
まずは、おなじみのジャイプール発テキスタイルショップ、Anokhiで、ブラウスやノートやファイルをお買い物。ここへ来ると、何かを買わずにはいられない。
ノートもファイルも、木綿のカヴァーがかけられている。気に入った柄を買うと、だから例えば、ブラウスとノートがお揃いになったりする。
それにしても、この店。じわじわと値段が上がっている。インドのインフレーションが取り沙汰されているが、この店に関しても、かなりのインフレだ。安くなくなると、ありがたみが減ってしまう。
しかし生活苦のため農薬をあおって自殺する「綿農家」の人々が、激増しているとの新聞記事を数カ月前、目にして以来、複雑な思いでいる。
綿の販売高は増えているのに、農家が苦しんでいる。弱い立場の人間は、搾取されるばかりだ。AnokhiやFabIndiaが、綿農家にまっとうな利益を与える仕組みを持っていることを願わずにはいられない。
それが叶っているのであれば、少々値段が上がっても、いいと思えるのだ。
さて、Rain Treeには、小さなカフェがある。ドアが開けられ、風通しがよく、「お茶でも飲んで行きませんか?」という雰囲気を漂わせていた。
ドアの近くの席を取る。カプチーノを一杯。窓の向こうでは、青空に映えて、ピンクやオレンジの、ブーゲンビリアが揺れている。ピョロロロロ〜と、鳶の声が聞こえる。心地のよい風が、そよそよと吹き込んで来る。
時代の重なりを感じさせる古い建物。重厚な梁や、静かな壁。
ほんの15分ほどの、静かなひとときが、この上なく心地よかった。
こういう場所は、いい。