わたしは、普段ほとんどTVを観ない。昔から、あまり観ない。映画やDVDを観るのは好きだが、しかしほかにやりたいことがいろいろあるし、長時間、画面に向かっていると気だるくなるのも好きではない。
とはいえ、たまには夫の傍らに座り、TVを観ることがある。インドの場合、コマーシャルそのものに、文化や生活の向上の具合が顕著に現れるので、意外に面白く、比較的覚えていたりもする。
一方、インドの番組は覚えられない。
たま〜に、一人の午後、ランチを終えたあと、「ヒンディー語の響き」になじもうと、ソープオペラ(連続ドラマ)を観たりする。
日本時代、日本語のうまい外国人にどうやって日本語を勉強したの? と尋ねると、決まって、「TVドラマで日常語を覚えた」と言われた。だから、自分もその路線で攻めてみようと思うのだが、そもそも基本がないから、何も拾い上げられない。
「アチャ〜」「ティケー」くらいである。すんなりと耳に入るのは。
さて、そんなわたしであるが、仕事の関係で、ちょっとTV番組を見なければならない(見た方がいいだろう)という状況になった。ついては昨日、やはりランチのあと、30分ほど画面に向かったのだった。
ちなみに昨今のインドはケーブルテレビが発達しているので、ものすごい数のチャネルがある。米国のHBOも見られる。英語の映画や人気番組、リアリティーショー、挙げ句は女性が半裸で登場するファッションTVさえ見られる。
インドとは思えない、性的露出度の高まりだ。この件については、社会問題になりつつある。というか、なっている。
つい先ほども、National Geographic Channelでは、サルやらゾウやら鯨やらの、動物の交尾のシーンが連続し、夫はクジラのペニスが2メートルだとの情報に驚嘆の叫びを上げ、書斎にいるわたしをいちいち大声で呼び出して、実にうるさかった。
性的露出度と動物の交尾とは、関係ありそうで関係ないな。話がそれた。
話を「ヒンディー語による連続ドラマ」に戻そう。
ヒンディー語ドラマにもいろいろある。いろいろあるが、見る限りにおいて、あらすじは似たり寄ったりな気がする。中には、ラジャスタン地方の家庭が舞台の、インテリアや服装がきらびやかで、見ているだけでも楽しいという番組がある。それはウマに教えてもらった。が、どれだったかは忘れた。
インド連続ドラマの共通項。それは「衝撃」だ。どれもこれも、「これでもか!!」というほどに、数分おきに「不幸」やら「絶望」やらが家庭を襲うのだ。
例えば、一つの番組を5分ほども見ていると、必ず「ガガ〜ン」とか「タララ〜ン」とか「グワ〜ン」とかいう効果音が入り、その都度、登場人物の顔がドアップになる。しかも、何度もだ。
そのドアップのやり方も、いちいち大げさで、ズームアウト/ズームインを急速に繰り返したり、カメラのパーンを何度も繰り返したりと攻撃的で、はっきり言って目が回る。
どのチャンネルを見ても、同じようなカメラワーク。そしてクサ過ぎる演技。ののしリ、妬み、いじめ、ひがみ、落胆、嘆き、絶望……といった感情が、ふんだんに過激に盛り込まれている。
以下の写真は、わずか10分ほど、3つほどのチャネルをパラパラと見たときにおさめた。「効果音」がないと、意外に俳優の顔は平坦であることに気づいた。「ガガ〜ン」の雰囲気が一番出ているのは、上の写真のおじさんだ。
まあ、俳優も、毎回毎回、ショック顔をするのは疲れるだろう。こんな程度でいいのかもしれん。
ちなみに、「ガガ〜ン」な顔を収集するのが、今回の仕事の目的では、もちろん、ない。
こんなことを書く暇があったら、レポートを書け、というものだ。
「そ、それは本当の話か?」「嘘。嘘でしょ?」「だましたわね」「お前、本気か?」
「なんだって!!」「俺の他に、男がいる?!」「俺は、母さんの子じゃない?」「あんた、何様?」
「痛い目に遭わせましょうか」「やめて……」「どうして?」「あなたとは結婚できない!」