とでも訊ねたくなるような、マルハン家の、今朝のキッチン。
「限られた一人の時間を大切に過ごそうと思う」と書いたのは、確か夕べのことだった。朝のラッセルマーケットへ出陣することが、一人の時間を大切にすることだったのかどうかはさておき、今朝、出張の夫を送り出した我は、久方ぶりにラッセルマーケットの魚市場へ向かったのだった。
なにしろ高原だからね。仕方ないんだけど。
日本人駐在員の皆さん宅には、通常、業務用の巨大な冷凍庫があり、日本やらバンコクやらで仕入れた刺身を含む魚介類や肉類などが保存されているらしいが、我が家にそのような設備はもちろんない。
Samsungの、ごく普通の、冷凍冷蔵庫があるばかりだ。その、ごく普通の冷凍冷蔵庫の冷凍庫部分に入るだけ入れたろう! の勢いで、今日はまとめ買いをした。
やはり日本人マダムの間では、チェンナイの日本料理店だか業者だか忘れたが、共同購入で魚を仕入れているらしい。一応、刺身もあるらしい。しかし我が家の購入先は、ラッセルマーケットのみ。
つまり、ラッセルマーケットの魚市場に赴かなかったここ数カ月、魚介類ゼロな家庭料理だったのだ。たまにツナ缶でお茶を濁したりしていたのだ。勢い余って大量買いするする気持ちもわかっていただけよう。
無論、外食では魚介類も食べていたけれどね。
魚の説明は毎度やっているので割愛するが、ともかくは本日、写真のものを、購入した。カニは生きている。ざわざわと音をたてている。今日は夫が不在だから、明日、調理しようと思う。つまりは、一日飼育することになる。情が移りそうでいやだな。移らんって。
これら大量の魚介類を冷凍するべく下準備が手間である。が、魚屋に捌いてもらうのはいやなので、自分でやる。米国でもそうだったけど、ヒレなどまで、全部切り取られたりするのだ。その姿は、美しくないのだ。
ところで今日は、はじめてイカを購入した。新鮮なんだかそうじゃないんだか、よくわからんが、ともかく巨大だ。店の兄さんが新鮮だ新鮮だと言うので、わかったわかったと、買ったのだ。
透明感がまったくないから、新鮮でないには違いないが、ま、バンガロールだし。福岡のおいしい魚のことなど、もう忘却の彼方で生きて行かねばならないのだ。
上の写真は、その表と裏である。
これの下準備が大変だった。イカスミ袋がすでに破れていて、洗おうとしたら墨がドバドバと出てきてもう、流し台が真っ黒。今日の午後は書道でもしようかしらん。と思うくらいの、濃厚な墨が大量に出て来た。
モハンは出張サーヴィスに出ているし、後片付けまでやらねばならんのが、辛いところだ。
さて、片付けをしながら、イカの味見をしてみようと、ゲソの部分を塩ゆでする。ゆでたてのアツアツを、ちょっと切って食べてみる。……ん? うまい! うまいじゃんこのイカ! 歯ごたえもあるし、いける!
と、冷蔵庫からキューピーマヨネーズを取り出し小皿に入れ、醤油を入れて、イカにつけて食べてみる。おいし〜い。七味唐辛子があると、なおよいかもしれん。
このイカなら、煮付けにしてもよさそうだし、イカめしにもいいかも! 思えばワシントンDC時代。初めてイカめしを作ってみたのだが、中にご飯をつめすぎて、炊いているうちにご飯がムニムニと溢れ出てきてぎょっとしたことなどを思い出す。
……。
魚に満ちた台所でイカゲソを立ち食い、過去を回想する女。
我に返れば、かなりインパクトの強い光景である。
一人でよかった。