日曜日。夫は自宅で仕事をする予定。わたしは、数日前、新聞で見つけていた "LIVING SPACES 2007"というエキシビジョンを見に行くため、コラマンガラのインドア・スタジアムへ。
新居に関する備品その他のメーカーが出店していればと思い、出かけたのだった。結果的に言うと、不動産デヴェロッパーが多く、バスやキッチン周りの設備を売るメーカーが多く、わたしの望むライトやファン、ギザ(湯沸かし)、オーヴンといった部類は見られなかった。
対象は、「アッパーミドルクラス」、つまり昨今のインドで増え始めている「中流の上」のようで、出店商品のクオリティも玉石混淆。わざわざ足を運んだ割に、収穫は「壁のペイント業者」だけであったが、なにもないよりはいいだろう。
我が新居は現状、すべてが白い壁なので、どこか一部、たとえばベッドルームやゲストルームを柔らかなクリーム色、もしくは淡いオレンジ色などにしてもいいかな、と思っている。などと、悠長に語っている場合でもなく、塗るなら内装工事が終盤に入る前に塗らねばならない。
写真左:スタジアムにブースが並んでいる。米国でもこのタイプのエキシビジョンはよく行われており、時折訪れていた。入場料は取られるが、一般の人でもメーカーや卸売り業者と直接に話ができるのがいい。我が家の家具の大半をしめるVINTAGE SHOPと出会ったのも、1年余前、バンガロールのスタジアムで行われた家具のエキシヴィジョンにおいてだった。たとえ1つでも、いい店に出会えると幸運。
写真右はペイント屋。ペンキメーカーが「塗り」も請け負ってくれる。お兄さんの背後にあるようなどぎつい色ではなく、あくまでも、優しい色を選びたいものである。それにしても、すごいオレンジ。実は新居のご近所さんを訪問したとき、リヴィングルームの壁がこの色で度肝を抜かれたが、この店のオリジナルだったらしい。インド。人々の好みにも多様性がある。
バンガロール郊外に続々と誕生中のプロパティ。不動産価格は高騰の極みである昨今。バンガロール中心地の新しい高級物件では、1スクエアフィートが7000〜8000ルピーというのも珍しくなく、10000ルピーを超える超高級物件もある。
つまり、1ミリオンダラー、1億円を超えるようなアパートメントが、どんどん出て来ているのだ。つい数年前までは半額以下、2割程度だった物件が、この有様だ。現在、わたしたちが借りて住んでいるアパートメント。これは十年ほど前に建てられたものだが、当時よりも値段は遥かにあがっている。アパートメントのマネージャーによると、2カ月前の時点で1スクエアフィートあたり7500ルピー程度だった。
このアパートメントは3000スクエアフィートであるから、単純にかけると22500000ルピー、インドでいうところの2.25カロール(インドには、独特の数字の単位がある。この件についてはまた改めて)。つまり50万ドル。日本円で6,000万円というところか。
現在の我が家。ぱっと見は悪くないが、あれこれと問題のある物件。
それがこの値段である。
ニューヨークの郊外よりも、ワシントンDCよりも、カリフォルニアよりも高いくらいだ。
無論、この数カ月のうちに1スクエアフィートが8000ルピーを超えている可能性もある。
新聞記事などによれば、ここ数カ月の不動産の値動きは落ち着いているとのことであるが、2カ月前に値段を交渉して購入した我が家も、すでに数パーセント、値上がりしているとの情報が入っている。
自分の家の価値が上がるのは悪くないが、しかしこの趨勢は、間違っとる。
こんなに高騰するべきではない。
物価も上昇の一途をたどり、貧富の差は一層増している。
……なんだか、また長くなってしまった。
そんなわけで、スタジアムを一巡し、ランチでも食べようとコラマンガラのショッピングモール、フォーラムへ向かった。
日曜日とあって、たいそうなにぎわいだ。上の大きな写真。安い雑貨売りの横に、 AUDIのセールスブースがある。本当に、消費が炸裂している。
お気に入りのジンガーバーガーを食べようと思う。ポイントは、「マヨネーズを少なめに、新鮮なレタスをいれてよね」と注文時に頼むこと。
すると、作り置きではなく、新しく作ってもらえるから「いい感じ」なのだ。
でも、今日の場合、長蛇の列だし、特注した日にはどれだけ待たされるかわからんので、おとなしくしておいた。
案の定、マヨネーズはたっぷりでレタスはしなびていたので除去したが、スパイシーなチキンのフライがおいしかった。
窓辺のテーブルで、チキンバーガーを頬張りながら、モールへ出入りする人々を眺める。
KFCの1つ7ルピーのソフトクリームをうれしそうに食べながら行く人々。7ルピーなら、街角のチャイ1杯とかわらない。貧しい人たちでさえも、手軽に味わえる、新しい時代の味。
ソフトクリームは、まるで豊かさの象徴のようであると、なぜか思う。わたしが子供のころ、つまり昭和40年代中盤、福岡天神のサンビームという喫茶店で、両親とソフトクリームを買い、食べたときのあの、幸せな、豊かな、うれしい気持ちを思い出す。
ベルリンの壁が崩壊した直後と数年後、わたしは旧東ドイツに足を運んだが、数年後のドレスデンで、マクドナルドやKFCが誕生しているのを見たときを思い出す。あのときも、寒風吹きすさぶ街角で、しかし家族連れがうれしそうに、おじいさんも、孫もそろって、ソフトクリームを食べていた。
グローバリズム。
先進諸国の文明が、あたかも理想の光のように、ぎらぎらと照りつけている。
この国は、これから先、どうなっていくのだろう。