ではもちろんなくて、舞い飛ぶゴミ。ゴミだ。
前方を走るゴミの回収車が、集めたゴミを、力一杯、撒き散らしながら爆走しているのだ。
ゴミがびゅんびゅん、舞い散らばるさまは、呆れを通り越して、コメディである。
回収車を追跡して、作業員を捕まえて、文句のひとことでも言いたかった。
ごみの回収に使役する人々は、貧しい人々だ。
彼らに、衛生の観念がないのは、仕方がないとはいえ、誰かが教育をせねばならぬ。さもなくば、この国は、よりいっそうのゴミ溜めとなってしまうだろう。
すでに何度も書いているが、なんとかしてほしいゴミ対策。
州政府はまったく当てにならないのだから、大手企業が率先して、なんらかの組織を作ってはくれないだろうか。そこいらでうろうろしている暇そうな貧しい人々を駆り集めて、本当に「お掃除隊」を組織したい。
区画ごとにチーム編成をして、リーダーを決め……緑の文字で"Garden City Bangalore"とかなんとかのロゴが背中に入った黄色のユニフォームを着せて、黄色い帽子を被らせ、あの「柄のない」帚ではなく、丈夫で機能性の高い掃除道具や軍手や頑丈な運動靴を支給して、掃除の仕方もレクチャーして……。
と、無闇に具体的だが、それは多分、気を失うほど、たいへんなことだ。
左の写真は、ロフトの部分を作っているところ。ヘルメット、持っていたらしい。
初めて見たよ。
なんだか、似合わないよ。
ところで、
「ま〜だ、こんな状態で、本当に数日中に引っ越せるの?」
と思われるだろう。
ふふん。
こんな工事は、まだ序の口である。
実は、明日、この部屋の傷つけられたフロア(部屋面積のおよそ半分)を張り替えることになったのだ。もう、とほほ、なのだ。だから今夜もマッサージなのだ。週に2回マッサージを受けたからといって、誰がわたしを責められようか。責められまい。
とはいえ、捨てる神あれば拾う神あり。今まで登場の機会がなかったが、このアパートメントコンプレックスのマネジメントオフィスで働く女性ニタが、なにかと助けになってくれているのだ。
たまに現れて通訳をしてくれたり、タイルのショップや職人を手配してくれたり。モハンとわたしが言葉が通じていないということに彼女は愕然として、「なにかあったら、すぐに電話してね」などとも言ってくれる。
彼女にはチップをかなり弾んで、わたしの不在時の現場監督を頼んだ。
「できる人」には、然るべき謝礼をしたいものである。そういう人の存在は、この国では貴重なのである。
それから塗装業者のマネージャーのモナも、今日は終日現場監督をしつつ、わたしとメタルワーク職人がもめているところでわたしを援護してくれたり、引っ越しスケジュールを遅らせることはない、塗装はなんとか仕上げられると励ましてくれたり。
引っ越しを数日遅らせてもいい、ということはすでに書いたが、とはいえすでに1日遅らせて31日。ずるずると、遅らせていくときりがない気がするのだ。
隣のCEO宅のように、工事まっただ中でも引っ越す人がいるのだ。うちは上出来だろう。などとも、思う。
それにしても、職人や業者にもいろいろなタイプがあり、決して一筋縄ではいかないインド社会の「運行体系」を、身にしみて実感している。
さて、庭の方は順調に進んでいる。
「こんなに、ちょろちょろとしたボリュームでいいの?」
と、何度も尋ねるが、ガーデナーは、
「すぐに大きくなる。植えすぎるとだめだ」
とのこと。
ジャックと豆の木じゃあるまいし、そんなに大きくなるものなんだろうか。数カ月後に期待である。
左は白と黄色の花が。これらも「すぐに」大きく伸びるらしいが……。手前は庭師らの弁当箱がとっ散らかっている様子。
右はカラフルなハイビスカス。オレンジや黄色のハイビスカスが、やはり「すぐにぐんぐんと」伸びるらしい。本当でしょうか。
植木鉢をとりはずして欲しかったのだが、植えたかった場所の真下にコンクリートの地盤があり、深く掘れなかったため、鉢ごと埋められている図。
周囲に紫色の花をちりばめてもらったので、そのうち鉢が目立たなくなるだろう。紫の花も、一気に育つらしいので。
ところで、「トリミングする」といいながら、すでに植えられていた赤いハイビスカスの枝葉を、バッサンバッサンと切り、小さくしてしまった。驚いた。本当に、そんなに成長するものなのか。
ともかくは、見守るべし。
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そもそもは、「ガーデンシティ」と呼ばれていたバンガロール。ここ十数年の経済成長に伴って、都市開発が進み、当然ながらの趨勢で、緑はどんどん伐採されている。
かつては緑が太陽の日差しを遮り、涼しげな風が吹いていた場所の、木々が伐採され、コンクリートやアスファルトがあらわになり、そこに鋭い夏の日差しが照りつけて、気温があがる。
以前歯医者のお兄さんに聞いた話を思い出すたび、この先のこの街を、憂いてしまう。
どの国の、どの町も、たどりがちな道ではあるとはいえ、誰かが緑を尊ぶ気持ちを大切にしていかなければ、この町の取り柄がなくなってしまう。
デヴェロッパーたちには、そのあたりのことを十分に考えて、緑を尊重した開発をしていただきたいなどと言ったところで、やっぱり馬の耳に念仏であろうか。
たとえほんのわずかな場所であれ、わたしはこの庭を緑と花でいっぱいにして、鳥や蝶たちを招きたいと思う。