こんな静かで穏やかな土曜日をインドで過ごすのは、いったいいつ以来だろう。思えば去年の夏あたりから、仕事や出張や旅行が続き、更には新居の購入と内装工事なども加わって、「時間の隙間」があれば、たちまち埋められる、そんな日々が続いていたように思う。
尤も、隙間を埋めるものには、友人らとの会合や、読書や、買い物や、スパでのひとときもあったわけで、だから厳密に言えば、多忙というよりも「豊かな日々」と表現したほうがいいかもしれない。
それにしても、こうしてここしばらくのことを省みてみれば、途切れなく起こる様々に翻弄されていたようにも見える。さらさらと 握れば指のあひだより落つ砂のごとく、取りこぼしてきたことも多く。
たとえばメールマガジン。ニューヨーク時代、ホームページを立ち上げた直後から開始したメールマガジンを、やめてしまった。しかも、読者の方々へ、「やめる」というお知らせもないままに。
厳密に言えば、積極的にやめたのではなく、やめざるを得なかったのだ。半年近く発行していなかったことから、「4月30日までに発行しなければ無効となる」との旨、「まぐまぐ」から伝達が届いていた。
1回でも出せば、また継続して同じ読者へ届けることができた。けれど4月は、あまりにも諸事に追われていて、しかも30日は旅行中で、こうして日々のブログは書き付けておきながらも、久方ぶりのメールマガジンを、気安く綴ることができなかった。
そして挙げ句には、145回目で、まるで自然消滅のように終えてしまった。
最近では、ホームページやブログを読むことに移行してくれている読者の方々も多かったが、一方で、定期的に届くメールマガジンを楽しみにしてくださっている方々もいたので、心苦しい。が、仕方ない。
ところで、見たい映画があまり上映されないインドにいてなお、身損ねた映画もいくつか。
筆頭は、Mira Nair(ミラ・ナイール)監督、Jhumpa Lahiri(ジュンパ・ラヒリ)原作、のThe Namesake。これはぜひとも劇場へ見に行きたかった。
“The Namesake”(邦題『その名にちなんで』)を書いたジュンパ・ラヒリの著書は、個人的には短編集 “Interpreter of Maladies”(邦題『停電の夜に』)の方が好きなのだが、とまれ、非常に印象に残っている作品だ。
米国に暮らすインド人(NRI)を主人公に据え、背景にニューヨークやボストンがある。インドと米国の狭間で揺れ動く若いインド人たちの心情に、夫をはじめとする自分の周囲のインド人たちと重ね合わせ、読中・読後、陳腐な表現だが、ひどく「しんみり」とさせられた。
このことについては、書き始めると長くなるので、この辺で。
さて、今日はのんびりしたとはいえ、午前中にはLal Baghから庭師が訪れ、数時間、庭仕事をやった。
その間、わたしも帽子を被り、庭ばさみを片手に「剪定」をしたり、庭師の一人(英語可能!)にあれこれと質問したりして、なかなかに楽しい時間を過ごした。
アルヴィンドも、芝生のなかに紛れている「雑草抜き」を手伝ったりした。
ちょこちょこと緑を追加しているうちにも、そもそもからあったあまり好きではない植え込みなどを一掃して(あまり好きじゃない草木に限って、成長が恐ろしく速いのだ)、一から全部、やりかえたい衝動に駆られる。
が、それはそれでまた「一大事業」となってしまうので、今のところは、我慢しようと思う。
夕方は、スジャータとラグヴァンが遊びに来た。夕食は友人宅に招かれているとのことで、ワインをあけ、揚げたてのサモサをつまみにおしゃべり。
ダディマを亡くして落ち込んでいる義父ロメイシュ。金曜には義継母ウマとここへ訪れるのだが、来月6月には、ギリシャに旅するらしい。
スジャータとラグヴァンは、来月中旬から米国行きで、その帰りにロメイシュたちと、ファミリーフレンドのいるスイスで合流し、ギリシャへ赴くとのこと。
我々夫婦だけでなく、我が家周辺はみな、常に流れながらあちらこちらへ。
ところで、「インド人」が「ギリシャの観光査証(ヴィザ)」を得るのはかなり面倒な様子。
「航空券を提示」するのはもちろん、「宿泊先の全ホテルから直接大使館に予約確認証のファックスを送ってもらわねばならない」とか、「長いドキュメントを埋めねばならない」とか、挙げ句は「過去3年間の所得税の記録」や「銀行通帳の残高記録」なども必要らしい。
アルヴィンドが過去ギリシャに行ったときには、そんな面倒はなかったらしい。
「なんでそこまでして、ギリシャに行くの? やめちゃえば? 僕だったら絶対行かない」
などと、スジャータが苦労して書類集めをしている最中だというのに、あっさりと言うアルヴィンド。
インド人が他国に渡るときの障害を思うと、日本人であるわたしたちは、いかに「優遇」されているかを認識させられる。この点、日本の外交のおかげである。
ところで、新居関連。内装工事中のさまざまは、写真付きでレポートしてきたが、「出来上がり図」を掲載するには至っていない。
家具やその他を入れた途端、気分が「プライヴェートモード」になり、ディテールを紹介するのが少々憚られたりもするのだが、しかし、関心をもって経過を眺めてくれていた方々から、新居の写真を、とのリクエストをいただいているので、今後徐々に、載せていこうと思う。
ちなみに、まだまだ「微調整」は続きそうな、新居プロジェクトではある。