わたしが噂のカーミットよ。
この間は、「触りたがり」なマダムから逃げてたんだけど、ご主人がわたしのこと、恋しがってるみたいだったから、また戻って来てあげたの。
今日はとっても風が強かったけれど、雨がたっぷり降って、うれしかったわ〜。
風でハイビスカスのお花が散ってしまったのを、
マダムがわたしの池に浮かべてくれたの。
どう? すてきなステージでしょ。
今夜も、オールナイトで歌うわよ!
●メイドのプレシラちゃん。
新しい使用人はプレシラちゃん。名前がかわいいので、ちゃんをつけたくなる。シャンティ同様小柄ではあるが、恰幅のいい20代と思しきお嬢さんだ。今日は3日目だった。
インド人宅で半年ほど使用人を経験した以外は「主婦」しかやったことのないという彼女。予想通り、仕事が遅い。驚嘆するほど遅い。南インドの人たちは、概して仕事がスローらしいが、まさにその通りである。
作業時間は10時から2時までの4時間あるはずなのに、バスルーム3つと2部屋を掃除し終えた段階で、なぜだか時間切れ。半分にも満たない。しかも、掃除が下手である。
が、ここで諦めてはならない。ひとつひとつ、根気よく要望を伝える。彼女が熱をいれて掃除してくれたところ(ガラス拭き)をほめつつ、しかし埃拭きの甘さを指摘する。なるたけ優しい口調を心がける。なにしろこのごろは、恒常的に口調がきついからね。すると素直に納得してくれる。
2日目。初日よりは、微妙に速くなったような気がするが、まだまだ、猛烈に遅い。そのうえ、彼女が掃いた後には、綿ぼこりが残っている。小姑のように、棚の上に指先をすーっと走らせる。指先が埃で白く、覆われる。
「ここも拭いてね」
「ここも、カーテンや椅子をずらして、掃いてね」
と、一つ一つ、指導する。
が、彼女が帰宅してのちは、カーペットやクッションの位置はひっちゃかめっちゃか。元通りに再現するために一仕事だ。
この時点で「使用人はもういい!」と、しかし、諦めてはならない。わたしは長い目で見なければならないのである。まだまだ彼女は2日目だ。わたし自身にとっても、これは試練である。人生経験である。忍耐強く人材教育である。
モハンの件のように、すでに経験がある人間は、無意識のうちにも新しさを受け入れず、従来の仕事のやりかたを貫く。だから、ある程度の仕事ができても、それからの成長があまり望めない。
が、彼女はまだ「手つかず」だ。動作は遅いものの、こちらの言うことを受け入れようと努力している風に見える。慣れていけば少しずつ、きっと上達するに違いない。そう信じたい。信じさせて。
3日目。掃除道具の扱い方や、我が家の間取りにも慣れて来たようで、クッションや小物などの位置についてを指摘すると、速やかに納得してくれた。そして今日はきちんと再現してくれた。仕事も、初日の1.2倍くらい早くなっている気がする。
が、掃除道具を片付けないまま置き去りだ。一部カーペットも丸められたままだ。帰る前にひとつずつ、指摘する。納得して、再現してくれる。
この調子で、少しずつ、がんばってほしいものである。わたしも、がんばりたいものである。
●モンスーンシーズン到来か。
ここ数日、夕方は強風と激しい雨。強風でなぎ倒される大木が街の随所で。車やらオートを潰して。去年は死者が出たが、今年はまだ、大丈夫なようだ。ともあれ、大雨の最中は、外に出ないのが賢明だ。
倒れた大樹を見て、ワシントンDCを思い出す。2003年9月22日の街の様子を思い出す。あの、大国でありながら、インフラストラクチャーが不備だった街。
遠い。あの日々が、遠いなあ。
(左)ちょっとした雨で、道路が冠水する。急速な都市化で、街は「コンクリート化」が進み、一方で排水設備は不十分。行き場をなくした雨水が、あっという間に道を浸す。(右)突然の雨。バイクを止めて、木陰で雨宿りをするライダーたち。
●久しぶりの優雅ランチ。
4本中、3本の仕事を終え、今月中の作業はあと1本を残すのみ。
ちょっと気分に余裕が出て来た。
日本から戻って来たばかりのユカコさんを誘って、昨日は久しぶりに、Leela Palaceのダイニングでブッフェランチ。
白ワインで乾杯して、バラエティに富んだアペターザーやアントレやデザートを、あれこれと選んで、味わう。
濃厚な日々のあれこれを、分かち合いながら。
彼女の夫は米国人。米国で一緒に仕事をしていたインド人男性とインドに渡り、ビジネスをしている。会社から辞令が出た訳でも、インド人というわけでもないのに、自らの意思でインドへやってくるそのチャレンジ精神には本当に感服する。
その夫と一緒に、そもそも縁もゆかりもなかったはずのインドへやって来たユカコさんもまた、すばらしい。
日々、いろいろある、そのいろいろを語る、というよりはぶちまけつつ、皆が次々に去り行くこの地にあって、彼らには長く住んでいてほしいものだと思う。
●少しずつ家に手を加える。
家人が不在中にやるべきことを、ということで、今日は一部タイルの目地塗りと、ロフトへの階段の手すりのペンキ塗り直しを行う。
かなり微妙な作業なので、半端な業者に任せたくないのだ。タイルの目地塗りは、かなり楽しい。「軽く濡れたスポンジか指先で伸ばしてください」と書いてあるので、最初はスポンジを使っていたが、やはり指先で整えて行くのが確実。
指紋が薄くなった気がしないでもないが、DIY (Do It Yourself)。こうして徐々に、家を快適に整えていく。まだまだ微調整は続く。
●新しいサリー。
ウマとロメイシュがサリーを買ってくれるという。スジャータ御用達の、個人宅のサリー店へ赴く。わたしのサリーは主にはオレンジやピンク、ゴールドなどの暖色系。もしくは白や黒などで、青や緑などを求めたことはなかった。
今回、初めて、今までにないブルー系のサリーを買ってもらった。グジャラト地方の織。早くブラウスを作って、着用してみたい。
サリーは、色の宝庫。自分に似合う似合わないを決めつけず、新しい色を、これからも試してみるのがいいかもしれないと思う。
●束の間の、ひとり。
ハイダラバード、4泊5日だって話じゃなかった?
なんだかんだで、仕事を早く終えて、2泊3日で帰ってくるというハニー。
そりゃあ……うれしいです。