朝からガーデナー4人衆が登場。毎度おなじみ、人手過剰なインドの肉体労働者たちである。100鉢を超える植物を、ほうき片手にあっちに、こっちに、いややっぱりそっちに、と、レイアウトを指示しつつの現場監督。
植物のことをよく知るガーデナーの一人に、その特性を確認しながら、アレンジを考えて行く。が、かなり大ざっぱである。今はまだ、いずれも小振りの植物らだが、数カ月もすればかなり「生い茂った感じ」になるだろう。
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我が庭の「_部分」は、THE TAJ WEST ENDの裏庭的な雰囲気にしたいと思っているのだ。スケールはかなり小さいが、あくまでも、雰囲気として。
加えて言えば、ワシントンDC時代に「我が庭」として利用していたナショナル・カセドラルのビショップス・ガーデン的な要素も加えたい。ジョージタウンのダンバートン・オークスも、いいな。
そんな妄想を、速やかに打ち砕いてくれる事件がいきなり発生。
よりによって、大きな植物を植えるために深めに掘ったところに、排水のパイプが横たわっていた。それを力一杯、破壊されてしまった。写真左は、最初に発覚した穴。写真右は、掘り起こしてみたら他にも空いてるじゃないのよ、穴。
万一のことを考えて、じわじわ掘ってよね。と頼んだのに、こういうところだけはアグレッシヴに、鉄の棒でガツンガツンと掘るから腹が立つ。
またしてもアパートメント・ビルディングのマネージャー、ニタを呼ぶ。
「マダム。これ、パイプを全部掘り起こして、新しいのにかえなきゃだめですよ」
「そんなわけないでしょ! この部分だけ切って付け替えればいいはずよ。もう、脅かさないでよね。これ以上、庭を掘り起こすの、いやだから」
そんなわけで、配管工を呼ぶ。この配管工とは共通会話どころか、単語すらほとんどゼロ状態。いつも、100%ゼスチャーだ。そんな彼が、しかしノープロブレムな表情で、材料を買いに行った。
その間、庭仕事は、遅々として進んでいるんだか進んでいないんだか。
「マダム、チャイ!」
などと、茶の要求はちゃっかりしているが、仕事はなにしろ、遅い。
さて、配管工。糸鋸の「糸」の部分だけを持って、ちまちまとパイプを切る。それにしてもこの排水がキッチンからのものでよかった。トイレなんかだったら最悪。無論、トイレの配管は、こんなプラスチックじゃなくて鉄だろうけど。そう信じたい。信じさせて。
ちまちまちまちま切っている様子を眺めつつ、新しいパイプをどうやってつなぐのだろうとやや不安に思う。
と、パイプを切り終わった配管工。急に庭の端っこで、紙切れを燃やし始める。なにをするんだと思いきや、おおう! つぎはぎ用のパイプの両端を、温めて柔らかくして、口を「広げる」ではないか! なんという妙案! これって普通なの?
その鮮やかな仕事ぶりに <こうなったらもう敢えて鮮やかと言わせてもらおう> 感心する。
そんなわけで、意外にあっさりと、補修工事はすんだのだった。ブラボー。
と喜んでいる場合ではない。ガーデナー軍団、遅すぎる。今日は午後からフェイシャル&マッサージと思っていたが、どうにも無理そうだ。こうなったら、いっそ今日中にレンガ仕事もしてしまおう。
レンガとは、小径を造るためのレンガである。
レンガ屋の場所を確認し、値段を聞き出し(1個4.5ルピー)、ドライヴァーを呼び、相変わらず大ざっぱに計算し、600個を手配。500個ではなく、600個というところが、微妙になにかしらの信憑性があるが、特に根拠はない。
3時を過ぎて、ようやくガーデナー軍団が引き上げ、束の間休憩。母が持参して来てくれた白玉粉とこしあん、きなこで、和菓子なお茶のひとときを楽しむ。良質の白玉粉らしく、かなり美味。
夕方になってレンガ到着。一旦ガレージに下ろされたレンガを、今度は庭まで運んでくれる人が見つからない。
ガレージで暇そうにしていた配管工にアルバイトを頼む。最初はいやがっていたが、無理矢理頼む。もちろん、アルバイト料は払う。
ひとりでせっせと今日は半分、運んでくれた。
その間、わたしは庭で「小径作り」に励む。足腰にこたえるが、かなり楽しい仕事。途中、ダージリンの旅から帰って来た3階のマダムが、挨拶にやってくる。
「楽しそうね〜」と言われる。
確かに、楽しんでいるのかもしれん。
でも、疲労困憊でもある。明日は必ず、マッサージに行こう。フェイシャルにも行かねば。なにしろ、今日の昼間、ニタがわたしと母をしみじみと見比べながら言ったのだ。
「マダム。マダムのお母さんは、まるでお姉さんみたいですね」
そりゃね。後れ毛満載、メイクもせずに荒れた顔をしているといえばしているが、それにしたって「母が、姉?」
かちんときたね。母が若く見えるということもあるが、だからって、姉? そんなにわたし、老けてみえてるってわけ?
だいたい、昨日も、母から夕食時に言われたのだ。
「美穂。そうやって、アルヴィンドと並んで座ってると、母と息子みたいだから、もうちょっと、ちゃんとしなさい」と。
ちゃんとしなさいって……。
出会った頃は、23歳と30歳だったわたしたち。わたしの方が年上にも関わらず、ハニーのほうが濃い顔で老けて見えたはずだった。わたしが年上だとばれることは、ほとんどなかった。
なのに、いつごろからだろうか。同じ年くらいに見られるようになり、最近じゃ明らかに「年下の夫」と、ばれている。
そしてしまいには、母と息子かい!
やれやれ。
美容やら健康やらなんやらかんやら。人生、あれこれやることが尽きぬ。