●インターネットと電子メールと電話。
全世界的に、ビジネスにおけるコミューニケーションの手段の中心が電子メールで、という趨勢になって約十年。インターネットの誕生による恩恵ははかり知れない。
わたし個人は、それまではワープロを使用するばかりだったのが、1996年4月の渡米にあたり、Windows95を搭載したDellのラップトップコンピュータを購入(1998年以降はアップル・コンピュータに移行)。インターネットを使用するようになった。
電話やファックスが中心だった東京時代のビジネスコミュニケーションが、まるで幻のようだ。
日本を離れたと同時に、インターネットを利用し始めたわたしには、それなしでの「日本ー海外」間のビジネスは考えられない。1998年にMuse Publishing, Inc.を立ち上げてしばらくは、それでも「足での営業」「郵送物での営業」が軸だったが、2000年2月にホームページを設けてからは、日本からの仕事の8割近くがホームページを通しての受注となった。
インターネットにも、コンピュータにも、ともかくは感謝している。が、たとえば電子メールだけを通してのコミュニケーションのスタイルには、もう何年も前から懐疑的だ。社会人の一年生からインターネットでやりとりをしている世代には、違和感はないのかもしれないが。
わたしは「じかのコミュニケーション」も大切だと思っている。初めて仕事をする相手とは、本来ならば一度お目にかかりたいところ。しかし、そういうわけにもいかないので、必ず電話で一度お話をさせていただくようにしている。
基本的に、メールのやりとりだけで仕事を受けることは、ない。メールには行き違いが多く、ときに、余計な時間がかかる。電話でやりとりをすれば3分ですむところを、何度もメールをやりとりして、1日2日かかることもある。
わたしとしては、「電話でごあいさつをすること」は「正当なこと」であると理解していたのだが、最近はそうでもないらしい。電話によって相手の時間に割り入ることは、むしろ失礼で、メールによるやりとりが基本のようだと理解されている向きを少なくないようだ。
これは多分、日本に限ったことではない。米国時代、夫の会社の秘書が、毎日顔を合わせているにも関わらず、言葉を交わすのをいやがり(ハニーは嫌われていたのか?)、「メールしときますから!」と言うばかりだったことを思い出す。
わたしと同世代の米国人女性も、やはり秘書が直接話したがらず、すぐ目の前にいるにも関わらず、なんでもかんでもメールでやりとりをするので辟易したということを、話していた。
日本では、多分業界によっても異なるとは思うのだが、やはり電子メールがコミュニケーションの主流となっているのだろうか。
と、ここまで長々と書いて、いったい何が書きたかったのだ?
そうそう。そんな次第で、「午前中は日本のクライアントと電話で打ち合わせ」というのが先週後半から何度かあった。
今朝もまた、ドアをしめて書斎に籠っていたのだが、メイドのプレシラちゃんがずかずかと入って来て、いきなりバスルームのドアを開放し、「ジャ〜ッ」「ゴーッ」とトイレの水を流してガシガシと掃除を始めたりなんかするもんだから、マダム辟易。
なにもわざわざ、今この部屋を掃除せずともよかろうに。お願いわたし電話してるんだからその様子を察してよ。などということを望むのは、無理な話であるから、本当に、一つ一つを丁寧に、教育していかねばならない。努力。忍耐。
相変わらずスローモーションなスピードで、しかし相変わらず「ガラス磨き」にはただならぬ熱意を持って取り組む彼女。埃ふきは苦手だが、料理はしたがる。帰り際にはマットを相変わらずあっちこっちにぐしゃっとしたまま帰ったりして、まだまだこれからである。
でも、床掃除のあとに、
「マダム、抜け毛が激しいですよ。**というオイルを使ってヘッドマッサージしてください。ココナツオイルよりもいいんです」
などと、知恵を授けてくれたりするから、ありがたい。
「具合の悪いときには、リンゴと牛乳をまぜてハチミツを入れて飲むといいんです。みるみる元気がでますよ」
とも言う。なにやら、まずそう? な気がしないでもないが、実行してみたくなるアドバイスではある。
●財布忘れて虚しき外出。携帯電話のプリペイド。
そんなことはさておき、午後、仕事を終えて後、いくつかの用事と買い物をするべく、街へ出た。途中、相変わらずの渋滞に巻き込まれ、約30分を過ぎてようやく目的地に到着して、気がついた。
財布……忘れた……。
ああもう、自分のバカバカバカバカバカバカ!
あれこれと考えごとをしていると、うっかり忘れることが多い昨今。加齢のせいでは決してない。考えごとのせいである。
それにしたって、来た道を引き返すことの虚しさよ。せめて車窓からの光景を、いつもよりじっくりと、楽しもうではないか。
無茶するライダーたちを、撮影したりなどして。
当初の予定を大幅に変更し、近所ですむ用事のみを、今日のところはすませることにした。やれやれ往復1時間のロスは痛い。
滞在1カ月を過ぎ、しかしまだ残すところ2カ月の母。お友達とのお出かけも増え、母の社交のあれこれを、わたしが中継ぎするのもなんなので、携帯電話&プリペイドカードを用意することにした。
Airtelという電話会社のオフィス。そこには5人ほどの社員(男衆)がいるのだが、プリペイドカード担当の女性は不在だという。
「5分後には帰って来る」
とのこと。前に待っていたおばさんに聞いたら、30分以上は待っているとのこと。
「わたし、1カ月近く通ってるけど、いつも彼女いないのよ。今日こそは、つかまえようと思って」
気の長いお方。
即刻店を出て、その近くにあるNokiaの看板を掲げた店へ。そこでもプリペイドカードは手に入るのだ。が、日本のパスポートのコピーでは、申請できないかもしれないから、受け付けられないという。この先の店へ行けという。
3軒目。やはりNokiaの看板を掲げた電話関係の店。それにしても、携帯電話の店が多いのには驚かされる。低所得者層ですら、いまや携帯電話の所持が普通となっている昨今。ニーズの高さをしのばせる、店舗の多さだ。
そりゃそうと、最後の店でようやくSIM CARDを購入し、数百ルピーの通話プランを購入することにした。SIM CARDをアクティヴェイトさせるのに数十分かかるというので、近くのCAFE COFFEE DAYでお茶。
上の写真が、そのときの様子である。このピンクのバッグとノートカヴァーとキーフォルダーは、例の革工場にて注文した品だ。先週末、仕上がりを取りにいったのだった。
前回の光り物系に続き、CELINEに申し訳なさ過ぎる。CELINEとしては、痛くもかゆくもないだろうが、それにしたってFeel Guiltyである。たとえ、色遣いは自分の選択とはいえ、だ。
クリエイターな自分としては、今後、自らデザインしたものを主に発注しようと思うのだった。
そりゃそうと、コーヒーを飲み終えて、店に戻れば、SIM CARDの次に、今度は通話度数(というのか?)をアクティヴェイトさせねばならぬという。それは15分後には確実になされるはずだというので、支払いを済ませて帰宅したのだが……
案の定、つながらん!!!
すでにオフィスは閉店したのか誰も電話をとらない。また明日の仕事だ。何をするにも根気と忍耐。しかも気楽な感じで。ぴりぴりしていたのでは、身が持たない。
せめて自爆は減らすべく、今後、財布は忘れずに持参したい。