●我が家。白く、もやの、立ちこめて。
諸事情により、昨日、キッチンのシンク(流し台)取り替え工事を行った。
諸事情。
この、たった一言に含まれる、無数の、込み入った、事情。
そもそも家を購入した際、キッチンはグラナイト(御影石)製の台とシンクだけがついていた。あとの部分はすべて自分で手配したので不満はないが、その「限りあるオリジナル部分」に、問題があった。
紆余曲折を経て、昨日の朝、新しいシンクを携えて、業者&作業のおじさん数名到着。案の定、サイズが微妙に合わない。既存のグラナイトの台を、少々削らねばならないらしい。予期していたことだった。
作業の開始段階を現場監督し、あれこれと、念を押したあと、メイドのプレシラに任せて、2階で自分の仕事を始める。
それにしたって、グラナイトを削る音のものすごさといったら。考える力をまでも削り取ってくれる勢いだ。
機内でもらった耳栓をして、作業をする。……1時間ほども、たっただろうか。削る音から、コンクリートを打つ「槌音」に変わった頃、熱いお茶でも入れようと、デスクを離れた。
書斎のドアを開けると、視界が霞んでいる。吹き抜けから見下ろすホール、リヴィングルームが、もやに包まれているようだ。疲れ目かしらん……と、強く瞬きをしてみるが、変わらず。……なんなのだ? この白さは?!
慌てて階段を下り、キッチンへ。なんてこったい! グラナイトだかコンクリートだかの粉が空中に飛び散って、霧の中のようじゃあないか!
工事作業員3人組も、そしてプレシラも、白く粉を被っている。
何やってんでしょうか、あなたがた。
粉が出るなら、出るとあらかじめ、言ってはくれんかね。出たとわかったら、その段階で、食器棚関係をカヴァーしてはくれんかね。それでもって、被害を最小限に食い止めるためにも、キッチンのドアを閉めてはくれんかね!
と思うも、すでに時遅し。ここで冷静にしていられる自分に、成長をみる。
明日、プレシラは、粉にまみれたキッチンを掃除するだけで、一日が終わるだろう。
そうして明後日は、ホールやリヴィングのそうじをするだけで、一日が終わるだろう。
アルヴィンドは、またしてもムンバイ出張中である。出張中で、よかった。
●ともあれ、"mint" はお勧めです。
埃被った、まるで廃屋の中のようなキッチンで、夕食の準備ができるはずもなく。埃を立てぬよう、鼻息さえ控えめに、今夜はワインと、そして冷蔵庫からチーズやオリーヴを取り出し、ソーセージをやむなく電子レンジで温めて、質素な夕食である。
と、ムンバイ出張中の夫から電話。
「ミホ〜? オゲンキ〜? ア〜、キモチイイ〜!」
何やらバイブレーションのきいた陽気な声で、いったい何やってんだこの男は。
聞けば予約していたホテルがオーヴァーブッキングで、スイートルームにアップグレードしてもらえたらしい。そのスイートルームがかなりゴージャスで、広々としたリヴィングルームに、ライブラリースペースまであるという。
それでもって、「日本製」のマッサージチェアまでついているらしい。そのチェアにマッサージをしてもらいつつ、電話をしているがための、バイブレーションのきいた声のようである。
最近は出張も多く、なんだか白髪が増えているようで(若白髪家系ではある)、妻はちょっぴり心配していたのだが、ご機嫌そうでなによりだ。
昨今のインド。ホテル宿泊料の高騰ぶりは目を見張るものがあるが、特にムンバイは11月に入り、カンファレンスでも行われているのか、あるいは単に「シーズン」なのか、その傾向に拍車がかかっているようす。
高い上に、どこもここも満室で、ぎりぎり土曜の夜までホテルが決まらなかった。決まったとはいえ、4泊のうち2泊ずつ、異なるホテルに泊まらねばならないとのこと。
尤も、バンガロールのホテルに関しては、ホテル料金のピークは過ぎようとしているらしい。何でも新しいホテルが数年のうちに、かなり出来上がるようなのだ。
現在、ラグジュアリーホテルに関して言えば2400室しかないとのことだが、これが5年後には13,000室に跳ね上がるらしい。シャングリラ、マリオット、ヒルトンなども参入するとのこと。バンガロールの変貌はこれからまた著しいのだろう。
ちなみに情報源は、先日より購読を開始したmint。経済誌ながら、読む気にさせてくれる、本当にいい新聞だ。
他の新聞は、惜しみなく捨てるが、mintだけは、捨てる気にならない。役立つ情報があちこちに載っているので、取っておきたくなる。
変な広告がないのもいい。インド最大の英字新聞、The Times of Indiaは、広告に節操がないからいかん。その子分格のBangalore Mirrorはもっと品がない。
皮膚疾患の「治療前」「治療後」の写真をでかでかと載せた皮膚科の広告とか、リアルな害虫の写真をでかでかと載せたペストコントロールの会社の広告とか、朝の爽やかな気分をぶっ飛ばす鮮明なカラー写真の数々。
加えて記事も、毒々しい写真が少なくない。バンガロールのインフラストラクチャーの悪さを指摘する「ゴミだめ」の写真とか、あるいは流血事件の「なまなましい血痕」などを見せつけられることも多々あり。いっそ白黒にしてほしいというものだ。
新聞を開く時、やや「焦点をぼかして」、それらしい写真が視界の隅に入ったら、決してそこに焦点を合わせないという高度な技まで身についてしまった。
朝、安心してページを繰れる新聞が登場しただけでも、ありがたいものである、
●ヒラリーとビルの物語/ HILLARY'S CHOICE
米国時代に購入していた「ヒラリーとビルの物語」飛鳥新社/ 2000年(ゲイル・シーヒー著 櫻井よしこ訳 )を、読んでいる。450ページほどの分厚い本で、途中までしか読まないまま、書棚に眠っていたのを、引っ張りだして読んでいる。
櫻井氏の的確な訳がすばらしく、読み進めやすい。
それにしても、ヒラリー・ロダム・クリントン氏の、「物凄さ」。厳格な共和党支持の家庭に生まれ育った彼女が、ビル・クリントンと出会い、民主党に転身するあたりまでを今読んだが、ひたすらに、圧倒される。
ビル・クリントンが、大学院を卒業した直後、まだ26歳だった彼女はボーイフレンドだった彼が、やがて米国の大統領になると断言していた。
その彼女が、今、大統領選に向けて、突き進んでいる。なんという、タフな人間であろう。
途中までしか読んでいないうちに、あれこれと書くのは憚られるが、生きている人の「伝記」をここまで取材して、また「読み物」としても興味深くまとめている政治ジャーナリストである著者にも、敬服せずにはいられない。
上の写真は、サフィナプラザの裏にあるカフェ。
いくつかおしゃれなブティックが入っていて、なかなかに感じのいい場所だった。
今後、コマーシャルストリートやサフィナプラザ界隈を訪れたときには、ここを「お茶休憩」の場所にしようと決めた。