米国在住時代のわたしは、ジュエリーにさほど関心がありませんでした。
指輪と、そして夫の亡母の形見であるバングルは日常的に身につけていましたが、ネックレス類は肩が凝ると思い込んでいたので、「ハレの日」以外にはほとんど使いませんでした。
そんなわたしが、インド移住を目前にして、ピアスホールを空けました。
夫の家族からもらっていたイアリング(ピアス)を身につけたいということもありましたが、インドに住めば、間違いなくジュエリーの虜になるであろうとの予感があったからです。
インドはジュエリー王国。金、銀、天然石、真珠……と、人々は日常的に宝飾品を身につけています。激しくも大振りなジュエリーが、ごくごく普通に店頭にディスプレイされているのです。
インド移住当初は、シルヴァーとセミプレシャス・ストーン(半貴石)の組み合わせのジュエリーの安さに、衝動買いを連発していましたが、最近は、身につけていて「心地が良い」と感じる品質のよいものを、少しずつ買い求めるようになりました。
今後は、インドのジュエリー事情を何度かに分けてご説明するとともに、わたしが気に入っているジュエリーについても、少しずつ、ご紹介しようと思います。
さて、上の写真の指輪。わたしの左手の中指に、いつもおさまっている指輪です。ムンバイにあるホテルのジュエリーショップで見つけました。
「なに? この派手な指輪は?」
と思われることでしょう。マルチカラーと呼ぶには洗練されていなさすぎる色遣い。事情を知らなければ、欲しいとは思わなかったであろうこの指輪。事情を知ると、これがついつい、欲しくなってしまうのです。
この9つの石は、ナヴラトナ・ストーンズ (Navratna Stones)、あるいはナブラタン・ストーンズ (Navratan Stones) と呼ばれるもの。
インドで古くから親しまれてきたこのナヴラトナ・ストーンズは、太陽及び太陽系の惑星(プラス恒星)を表していて、幸運を招くと言われています。
ナヴラトナ・ストーンズのことは、インド移住当初に知ったのですが、大振りなペンダントヘッドや、首に激しく負担がかかりそうな巨大なネックレスとして売られていることが多く、「欲しい」と思えるものが見つかりませんでした。
ところがこのときは違いました。この小さめでかわいらしいデザインの指輪をショーウィンドーに見つけた瞬間、店内に吸い込まれました。試してみれば、わたしの指にぴったりサイズです。これを買わずにはいられましょうか。いや、いられません。
ところでインド占星術では、出生データから9つの星の状態を調べ、自身に見合った宝石を選び、身に付けることを勧めています。それぞれの石にヒーリング効果があり、自分にふさわしい石を着用することで運気を高めるというのです。
つまりは、自分に合う一つを選べばいいわけで、9つ全部を身につけることもないのですが、なんとなく「太陽系ひとまとめ」というダイナミックなコンセプトにひかれました。
ナヴラトナの9つの石の構成や、星との関連性は、文献によって若干異なるのですが、わたしが購入した指輪の構成をもとにご紹介します。中央から時計回りに、
・ルビー(太陽)
・ダイヤモンド(金星)
・ヘソナイト(RAHU)
・真珠(月)
・珊瑚(火星)
・ブルーサファイア(土星)
・キャッツアイ(KETU)
・イエローサファイア(木星)
・エメラルド(水星)
という構成です。RAHU/ KETUというのは、日食や月食に関連する言葉で、神話に登場する神の名としても知られています。
この指輪を購入したのは今から1年半前、二都市生活を始める直前でした。当時、わたしたちはムンバイでのアパートメントを探し始めていたのですが、この都市の不動産の著しい高さとクオリティの著しい低さに打ちのめされていたところでした。
ところが! 指輪を購入してまもなく、思いがけず良好な物件が見つかり、入居が決まったのです。わたしにとってはたちまち「幸運を招く指輪」と化しました。夫は「偶然に決まってるじゃない」と言い張りますが。まあ、確かに偶然だとは思いますが……。
上の写真は、まだ引っ越しをする前の、ムンバイ宅の一隅です。明るい日差しが降り注ぐダイニングルームに、ガネイシャ像が飾られていて、「ここはいい物件!」と直感しました。
バンガロール本宅と、このムンバイのアパートメントを行き来しながらの日々も、しかしまもなく終わります。実は来週、このムンバイ宅を引き払い、一旦バンガロール一都市生活に戻るのです。
とはいえ、夫の仕事の都合によって、また近々ムンバイ、もしくは他都市での二都市生活が始まる可能性大ですが、ともあれ、この家とはお別れです。
今、ムンバイでの暮らしを反芻しつつ、少しずつ、引っ越しの準備をしているところです。