思いがけず長々と綴ることになったシルクマーク・エキスポのレポート。今回でひとまず終わります。
今回買い求めた品については、また後日、「テキスタイルに見るインド伝統美」とでも題して、ご紹介します。
このサリー。ド派手! と思いつつも、広げられている方へ吸い込まれたところ……。今まさに、どなたかがお買い上げ! でした。
写真を撮らせてもらっていいですか? と頼んだら、どうぞどうぞと、にこやかにおばさま方。「いい柄でしょ?」とうれしそうです。
こんな虹色を着こなせるのは、顔が派手なインドの女性たちだからこそ。
よく見れば、インドらしく象とクジャクがモチーフになっています。かわいらしい。
「あれ、見せてちょうだい!」
「これはどうかしら」
「いやいや、こっちも捨て難い!」
奥様方の炸裂する購買意欲とエナジェティックな様子とは裏腹に、同行している殿方たちは、疲労困憊の様子。
「いったい、何枚、買う気なんだ……」
殿方の声なき声が聞こえてきます。頬に手を当てて、いかにも心配そうなおじさま!
まさに大バーゲンの様相を呈している人気店のブース。体格のいいご夫人たちが、押し合いへし合い、たいへんな熱気です。
その周辺をちょろちょろと動き回るわたし。どれにしようか迷っていると、
「迷わずにどっちも買っちゃいなさいよ! このクオリティでこの値段、それに豊富な品揃え、滅多にないチャンスよ!」
わたしに向かって言い聞かせるおばさまたち。いやはや。危険。
目が「派手な彩り」に疲れて来ました。素朴手織りコーナーで、ちょっと目休め。こういう着色のない、素のままのシルクもまた、気持ちがいいもの。
欲しいけど……ストールはもう、十分に持っているでしょ! と自分に言い聞かせて通過……。
と、隣のブースで、派手派手サリーに埋もれた「静かに上品な一枚」を発見!
嗚呼、わたしを呼んでいるのはあの一枚だわ!
と、おばさまがたの間をぐいぐいと入り込んで手に取ります。
色染めしていない、素のタッサーシルク。それにチカンカリ刺繍が上品に施されています。
さらには、落ち着いた色調のピンク、緑、そして金色の繊細な織りがすてき!
あ~、柔らかくて気持ちいい~。やさしい感じ~! 脱ぎたくない~~!
というような一枚です。あの日あの時ムンバイでの興奮が蘇ります。
あの日、チカンカリ刺繍の「超すてき」なサルワールカミーズのマテリアルを見つけたのですが、あいにくサリーは見つけられませんでした。
あのマテリアルの刺繍よりは淡白なサリーですが、しかしこれで十分です。これはもう、即決!
なにしろこのようなものは、一点もの。
「似たようなの、ないですか?」
と尋ねるのは野暮なこと。ないんです。たいてい。だから二度と出会うことはないのです。一期一会なのです。
この広大な会場の、何千枚、何万枚、いや何十万枚ものなかから唯一出会えたこのやさしさ。
これを見逃すことができましょうか。いや、できません。
ちなみにこれがタッサーシルクの糸です。糸さえも、愛おしく見えてきます。シャレではありません。
今日は一枚購入で撤退です。これ以上ここにいてはもう、一期一会が乱発しそうですので。
おっと。開催3日目にして、いまだスキンヘッドの彼女たち。なんともお気の毒なことです。
このお姉さん(マネキンではない)の、髪の豊かなことと言ったら! インドの女性たち。いったいどれだけ密集した毛穴なんだろうといつも思います。
この髪を束ねたら、車一台くらい、平気で引っ張れそうです。
そんなわけで、シルクマーク・エキスポ「これでも氷山の一角」レポート、今回で終了です。