インドに移住したのは2015年11月だったが、なぜかこの季節になると毎年、移住当初の心持ちを思い出す。多分このころの空気の乾きや青空に、この地の個性を強く感じていたからだろう。
バンガロールの盛夏は4月から5月にかけて。ゆえに、今はまだ、夏と呼ぶには早いのだが、ここ2、3年は暑くなる時期が早くなった。夏の気温も過去に比べて上昇傾向にあるという。それはそうだろう。ここ20年の間にも、街の樹木は悉く伐採され、近代的なビルディングが建設され、街の様相は刻一刻と変化しているのだから。
さて、昨日は久しぶりに、ミューズ・クリエイションのメンバーと「サリーランチ」を実施したのだった。来月に日本へ帰任となるメンバー2人との最後のサリーランチでもあった。一方、新メンバーの「初サリー」の場でもあった。
新しいメンバーが、先日の『インドのテキスタイルとサリー講座』を受講された数日後、たまたまいつものアートスクール(Karnataka Chitrakala Parishath)で、サリー&テキスタイルの展示会が開催されていたので、お買い物にも同行し、よさげなサリー選びを手伝った次第。
普段は人と一緒に買い物に行くことなどほとんどないわたしであるが、ミューズ・クリエイションを始めてからというもの、インドの工芸品やサリーなどの展示会に関しては、メンバーの方々を案内する意味でも、折に触れてご同行している。
自分のサリーを見立てるよりも、むしろ人にアドヴァイスをして、それがとても似合っていて、本人も周りの人も盛り上がる感じが、とても楽しい。洋服では決して選ばないような色柄を、サリーでは選べるのもまた面白い。
スリムで小柄な日本人女性にもよく似合うサリーは、「発掘」すれば必ず見つかる。ただ最初のうちは、色柄溢れる布の海に溺れんばかり、何をどう選べばいいのか、さっぱりわからないものである。自分に似合うものを見つけ出そうとしても、自分がどれが好きなのかもわからなくなってしまい、あっというまに疲れる。
しかし、選び方のコツや、布の特徴などをある程度知っておくと、それが「目安」となって、俄然、選びやすくなる。
ピンク色が愛らしい手織りのイカット(絣:かすり)のサリーに、ナチュラルなシルクの光沢がやさしい手刺繍(カンタ刺繍)のサリー。どちらも上品ですてきです!
落ち着いたグリーンがすてきな、こちらも上品なイカット。お嬢さんが着用されているのは、柔らかなシルクジョーゼットにチカンカリ刺繍が施されたサリー。
わたしはといえば、移住当初に購入した古いサリーを着用。涼しげな顔をしているが、実は苦しい。当時に比べ、数ロッキー増量したせいで、ブラウスがパッツンパッツンなのだ。腕まわりにも、隙間がない。そのあたり、皮膚呼吸ができない。我ながら、とてもインド女性的、である。
そもそも、ブラウスはゆるゆるではなく「ピシッとサイズ」にしておくことが大切だ。さもなくば、着崩れるし、見ためもだらしない感じになってしまう。だからといって、贅肉がはみ出るのもまた問題である。
インドのローカルのテイラーでブラウスの縫製を頼むと、「まち」の部分を非常に幅広く残しておいてくれる。更にはそのまちの部分に、5ミリおきくらいに数本の縫い目を入れておいてくれたりもする。その理由、お気づきの方もあるだろう。
そう。太った時に自分で糸をほどいて、緩めることができるようにとの配慮である。なにしろインド人女性。結婚したあとにはみるみる太る方が多数。世間には、ブラウスの耐久性に感嘆せずにはいられないほど、腕やら腹回りやらの贅肉をはみ出させながら着用している人がいるが、それが証拠、である。
太ってはほどき、太ってはほどき、限界まで達したら、あとは肉がはみ出るに任せ……。それでも入らなくなったら、新しいブラウスを仕立てる。なにしろサリーは、いつまでも着られるがゆえ、ブラウスさえ仕立て直せば問題ない。
わたしは、そうなってはいけない、そうはなりたくない、との思いから、敢えてブラウスにはまちを大きくとらず、「不動の1サイズ」を貫いて来たのだが、今になってやや後悔だ。
ランチの開催場所は、市街のホテル、リーラ・パレスのカフェにて。サリーがよく似合う内装である。
さて、今日もまた、これからサロン・ド・ミューズ。ジャパン・ハッバを終えて一段落……と思いきや、来月に小さなバザールに出店&出演することになり、またしても準備開始。自分たちのペースで自由に、無理なく活動を目標に掲げているが、イヴェントなどがある方が、気分的に張り合いもでる。
そのあたり、「いい塩梅」を心がけつつ、そのときどきのメンバーのペースに合わせて、活動を続けて行きたいものである。
今夜は「特殊なゲスト」もやってくる。楽しみだ。