"Don’t Hold Back!" 「ためらうな!」 サリー着て走れ!
今朝は、サリーマラソンに参加するため、超早起きをして5時過ぎに家を出てフリーダム・パークへ。
主催者は、女性の健全なライフスタイルを支援する慈善団体Pinkathon(ムンバイ拠点)、及びタタ・グループ傘下Titanカンパニーのサリー専門店TANEIRA。以前、ミューズ・クリエイション企画でインド最大のジュエリー専門店Tanishqの工場見学を実施したが、同店と同系列だ。
2017年2月、バンガロールに1号店をオープンしたTANEIRAは、インド各地の伝統的な手織りのサリーをヴァラエティ豊かに取り揃えている。綿や絹、麻など天然素材が用いられた彩り豊かなサリー。その製法や技術にもよるが、数千ルピーと手頃なサリーから数十万ルピーの高価なものまで、選択肢も幅広い。
ミューズ・リンクスにて『インドのテキスタイルとサリー講座』を実施した際、参加者を対象にショッピングツアーを開催している。ここ数年は、インディラナガールにあるいくつかの店舗を案内しているが、TANEIRAがオープンして以来、店舗数を減らして、この店をゆっくり案内する方が効率がいいと感じている。
ライフスタイルの変化に伴い、サリーを着用する女性たちは減りつつあるが、一方で「新しい着方」の提案も各方面で行なわれている。この「サリーラン」もまた、「サリーを着ていてもアクティヴに動ける」というメッセージが託されている。
わたし自身、サリーが好きで、たくさん持ってはいるものの、あまり着用する機会がない昨今。同イヴェントの開催を知るや、早速、申し込んだのだった。
わたしは、若かりしころのバスケットボールで腰と膝を痛めているので、走ることは避けている。しかしそもそもは、マラソンは得意な方だったこともあり、ときどき無性に走りたくなる。今回は3キロということで、主には「早歩き」で参加し、最後の100メートルくらいを走ろうと決めていた。
イヴェント案内には「6時開始」としかない。問い合わせたら6時ちょうどに走り始めるという。絶対ないな。と思いつつも、ついつい早めに到着してしまう几帳面な性格につき、5時40分、夜明け前の月明かりに照らされて、人影まばらな会場に到着。
今回のイヴェントは、インドの著名なファッションモデル/俳優であるミリンド・ソマンが参加するということで、彼に会いたい女性たちも多く参加していた模様。ちなみにこのモノクロ写真の男性は1994年の彼。インドのTuffというシューズカンパニーの広告写真で、当時、かなり物議を醸したようだ。インドが市場開放した数年後のこととはいえ、まだまだ封建的な文化が色濃く残っていた当時、センセーショナルだったことは想像に難くない。
ちなみに彼はわたしと同じ1965年生まれだが、25歳年下の女性と再婚したことでも話題になった。北東インド出身でオリエンタルな顔立ちの彼女。たまたま近くに立っていたとき、「楽しんでる?!」と元気に声をかけられて話し始め、そのとき初めて彼女が彼の妻だということを知った。
さて、夜明けとともに参加者は徐々に集まり始め、気がつけばあたりはカラフルなサリーの女性たちでいっぱいに。これから走るというよりは、これからパーティというふうにしか見えない、きらびやかなサリーを着ている人たちもたくさんだ。
テーマは "Don’t Hold Back!" 「ためらうな!」
ウォームアップのズンバでは、「疲れますよ?」と言いたくなるほど、みな激しく楽しそうに踊る。走る前から、一隅に用意された朝食を食べている人もいる。自由だ。
ようやく7時近くになって、会場となったフリーダム・パークの周辺を2周、走る。みな最初は走っているが、次々に脱落し、歩き始める。しかし、競技ではないから、スピードは問題ない。参加することに意義がある。
わたしは、時速6.8キロほどの速度で歩き、予定通り最後だけ、走った。サリーでも、走れる。楽しい。
走り終えてもまた、クールダウンのズンバを踊る人々。大音響のもと、踊りまくる人々。激しい。
インドの女性の地位は、その階級やコミュニティによってさまざまに異なり、一概に低いとも高いとも言えない。この件については、長くなるので触れないが、ともあれ、「インド人女性の潜在的な力の強さ」を、ここでも肌身に感じた。
朝っぱらから、踊って、騒いで、走って、また踊って、食べて……。
わたしはひと踊りしたあと朝食のワダとイディリをしっかりと食べ、まだ女性たちが踊りまくる会場をあとに、一足先に帰宅したのだった。
日本の女性たちにも声をかけたい。
「ためらうな!」