米国在住時、「ジーンズ&Tシャツ」が定番ファッションだった我。それがインドに移住してからというもの、テキスタイルへの興味に火🔥がついた。
一人であちこちのサリー店や展示会へ赴き、布のことを学んだ。やがては『インドのテキスタイルとサリー講座』を開くようになり、ミューズ・クリエイションのメンバーを対象にショッピング・ツアーを企画するなど、数え切れぬほどの布に触れてきた。
訪れるたびに、新しい出合いあり、発見あり。
百聞は「一見」にしかず。
百聞は「一触」にしかず。
年間を通して、さまざまな展示会が催されているが、今日は久しぶりに、シルクマーク・エキスポへ。かつては、広大なグラウンドの特設会場で、インド全国の職人たちが一堂に会しての展示会が開催されていたが、ここ数年は下火となり、開催されない年もあったように思う。
明日早朝からのムンバイ旅を控え、今日は「やっておくべきこと」があったはずなのだが、「行っておきたい場所」を訪れることを優先し、リサーチ目的で、昼頃、赴く。
するともう、のっけから、好みのテキスタイルが目に飛び込んできてたいへん。実は今回、ミューズ・クリエイションの活動にも参加してくれている養蚕ボーイズ(バンガロール郊外の養蚕農家支援のため派遣されたJICAの青年海外協力隊隊員)も、出店していると聞いていた。
新たな隊員も増えており、3名で店を出している。挨拶もそこそこに、まずは展示場を一巡。欲しいものがあちこちに散らばっていて、困る。50代に突入した時、「今後はサリーを頻繁に着よう」と決めたにもかかわらず、むしろ着る機会が減っている昨今。手持ちのサリーを着る前に、これ以上、新しいものを買うべきではない。
わかってはいるが、どれもこれも魅力的。
ちなみに、養蚕ボーイズは、蚕や繭、絹糸には詳しいようだが、仕上がったテキスタイルについては、明るくない模様。『インドのテキスタイルとサリー講座』の受講もされているが、一朝一夕に詳しくなれるものでもない。案内して欲しいと頼まれ、3人で一巡する。30分ほどで撤退するつもりが、1時間半も会場をうろうろしていた。それでも、まだまだ見ていたかった。
パトラ織り(絣)、バラナシ織り、カンチプラム織り、ダッカ・モスリン織り、チカンカリ刺繍、カンタ刺繍、バンダーニ絞り、ハンドブロックプリント……。
すてきな布が山ほどあって、案内しているんだか、好きなものに吸い寄せられているだけなのか、よくわからない事態。渋い薄紫のバラナシ・シルクの精緻な織物が、地味ながらもシックで、本当にすてき。高度な職人技が生かされた経緯絣(たてよこかすり)のデュパタ(大判のストール)も、欲しすぎる。花模様のダッカ・モスリンも本当にすてき……。
と、あれこれ迷ったが、次の予定の時間は迫っているし、お腹は空いているしで、今日のところは何も買わずに退散。今、こうして写真を見返すに、やっぱり、どれも、魅力的。ちなみに同エキスポは、明日まで開催されている。
ところで壁に掛けられている「緑の唐草模様」のサリー。日本ではなぜか「泥棒の風呂敷柄」だが、アラベスク文様(イスラム美術)などが端緒のようで、インドでも見かける。