2日間に亘って開催した京友禅サリー展示会は、無事につつがなく終えることができた。
50名を超えるゲストが来訪され、京友禅を見て、触れて、感じてもらった。あるいは、身にまとって、その質感のすばらしさを体験してもらった。
善きものは、触れて使って、使い続けて、その良さを実感できる。
一枚布のサリーは尚更に。
身に纏ってはじめて、布が呼吸を始める。吊るされているときには無口だった布は、触れられ、纏われ、なびかされて、饒舌になる。
それを、ゲストに体験してもらいたかった。
非常に高価なものなので、着用を遠慮をされる方もいらしたが、京友禅サリーは撥水加工が施されており、簡単に汚れないのも長所なのだ。
翻って、京友禅サリーの市場開拓となると、バンガロール展示会で実感したのと同様に、課題は多い。
しかし「潜在力」があることは、まちがいない。今後、いかに課題を理解し、商品に反映させ、市場に展開していくか。それは、購買層となるインドの人々の嗜好、習慣、価値観、さらには、都市ごとの地域性や、そのときどきのトレンド、ライフスタイル全般を、「常にアップデート」する必要もある。
今日、展示会のレポートをまとめれば、ひとまず我がミッションは完了。今後、わたしが京友禅サリーとどのように関わっていくのかは未知数だ。
10月中旬に「京友禅サリーのプロモーター」の任を引き受けてはじめて、京友禅に関して付け焼き刃の知識を得た。京都の染匠さんの工房すら訪れていない者がプロモーターしていることを、疑問視する向きもあるだろう。
それでも、これまで無数のインドの伝統工芸に触れ合ってきた者として、個人的に、日本の伝統的な「善き手工芸品」の魅力を再確認することができたのは確か。何より、「仕事」という領域を超えて、「人間の手なる技」に対する、自分自身の関心が、高まった。
今回、デリーの家に残されている、古き日本の漆器などを手にするにつけても、それを思った。
日本とインド両国の「不易流行」を、微力ながらこれからも、追求する仕事に関わりたいとの思いを新たにしつつ……。