上の写真は、週末、久しぶりに開花した庭の蓮華。その麗しさとは裏腹に、本日の話題は……。
本日の話題は、愉快ではない。愉快ではないどころか、不愉快だ。この状況下、不愉快な話題を綴ることに、抵抗はある。
ただ、書かずにはいられないし、書いておくべきだろうと「今は」判断するので、書く。でも、いつか消すかもしれない。そんな内容であるので、爽やかな一日を過ごされたい方は、どうぞ今日は、読まずにいただければと思う。
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土曜日の夜、米国のMBA同窓生からなるイヴェントに参加した。わたしは、もちろん同窓生ではないが、夫とパッケージでの同行だ。インフォシス元CEOのナンダン・ニレカニ氏と、その妻ロヒニ・ニレカニ氏のレクチャーが行われた。
テーマはフィラントロピーについて。ロヒニが運営するNGOについてなどの話が興味深かったので、今日はその話題を記そうと思っていたのだが……。
そういう気分ではなくなってしまうことが、昨夜、発覚した。
こういうところに書くべきかどうか悩んだ。
しかしこのまま、1年半に亘って記して来た「キレイなブログ」(当時「Kirei Style」というサイトがあり、複数の人々がブログを設置していた)を消滅させるのはあんまりだと思い、こちらに簡単な経緯だけを記しておこうと思うに至った。
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インターネット上に文章を書き始めて久しい。最初のメールマガジンを発行してから11年がたった。メールマガジンの他に、ホームページ上で「片隅の風景」という散文と写真の記録、それから日記を記していた。
日記に関しては、会員制(無料)とし、読みたい方にパスワードで入り口をお知らせするという方法をとっていた。
当時はブログなどなかったので、コメントなどはメールで受け取るのみだった。
みなに好感を持たれる文章を書くことなど不可能である。
そんなことは、経験上、十分に承知している。加えて、何を書いてもいちゃもんをつけてくる人、要するに、わたしの存在自体が気に入らない人、というのも必ずいる。
反対意見や反論は、もちろん、耳を傾ける努力をしている。わたしとて、自分の意見が絶対に正しいなど思ってはいない。わたしの誤解や勉強不足もある。
間違いを指摘されれば認める。不適切な発言があった際には、100%自分の過失だと思っていなくても、自分に問題があったとするならば、非を認める努力はしてきた。
しかし、「誹謗や中傷」となると話は違う。
「いやがらせ」のメールを受け取ったことも、この11年のうち、少なからずあった。メールであれば、不快感を与えられ、それなりに傷つけられるが、しかし看過できる。
だが、ブログのコメント欄は異なる。放置しておくと、調子に乗って人を責め立てる人が、次々と出て来る。それをして、日本の世間は「炎上」というらしい。
わたしも少なからず、そのような状況に陥ったサイトを見て来た。その匿名性ゆえか、おぞましいほどに人を非難する人々のパワーには、驚かされるばかりだ。
わたしは、この、個人のブログにおいては、コメント欄を敢えて設けていない。そもそもブログを通して人とのコミュニケーションを図りたいという目的ではなく、自分の書きたいことを書くのが目的だからだ。
次いで、コメント欄を設けると、あれこれと問い合わせが増える。対応が面倒だ。更には、中傷が書かれる可能性もある。そんなこんなで、ここでは一方通行の場としていた。
だからといって、外部の意見を遮断しているわけではない。
わたしは、自分の本名も、顔も、家族も、メールアドレスも、ここで明らかにしている。
そこには、自分の言葉に責任を持つという気持ちがある。なにも「目立ちたがりだから」ということはかりが理由ではない。更にはライターだからという職業の問題ではない。
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「キレイなブログ」をお読みでない方は、なぜわたしが「胡蝶の夢」などという、怪しげな会員制ブログを設けたか、奇妙に思っていらっしゃるだろう。
ほかでもない、「キレイなブログ」のコメント欄が「プチ炎上」したからである。
正直なところ、こちらのブログに比して、あちらのブログは読者数が少ない。
読者ブログを書いている人は現在250名ほどもいるようだが、わたしはたいてい、ランキングの上位に載せられていることから、たいそうな読者数を想像されている方もいらっしゃるようだ。
あちらのブログの訪問者は、一日あたり500人程度に過ぎない。
世間の人気ブログなどに比べたらもう、地味もいいとこ、である。
そもそも、こちらの個人ブログは、自分の身近な人たちに加え、米国在住時からの読者、及びインドに関心がある人たちが主な読者層であった。
しかし、インドに暮らし始めて数年経ったころから、インドにまったく関心のない人たちにも、もっとインドのことを知って欲しいと思い始めた。
何かの折に、あのKIREI STYLEを知り、読者ブログを募集していたことから書き始めた。
当たり前だが、原稿料などもらってはいない。
こちらのブログには、インドのあらゆる側面を書いていたが、あちらでは「キレイ」「楽しい」「おいしい」「すてき」と、インドのよき部分に焦点をあてて書いてきた。
そのことで、インドに関心を持ってくださった方々は少なからずいらっしゃる。
批判や、辛辣な意見からは遠く、比較的平和なブログだと思っていたので、コメント欄についても警戒をすることはなかった。物議を醸すようなことを、あちらには書いているつもりはなかったからだ。
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3月11日。大地震が起こった。「キレイなブログ」に、思うところを書いた。
3月12日。夜。延々と、恐ろしい光景がテレビやインターネットから流れる中、わたしの心にあったのは「平常心を」「いつも通りに」という気持ちだった。
自分が9/11/2001(米国)や11/26/2008(ムンバイ)のテロを身近に経験し、種類が異なるとはいえ、その恐怖感や圧迫感、緊張感の持続を経験し、それがどれだけ、心身を蝕むかを知っていたからこその、である。
被災地にあり、危機に直面している人が、わたしの「キレイなブログ」を読んでいるとは到底思えない。あくまでも、当事者ではない読者に向けて、「いつも通りを」を提言したつもりだった。
わたしはその前の週に訪れたレストランや、テキスタイルの店を紹介した。
それがまず、反感を買った。
13日。「乱れる心を鎮めるために」というタイトルで、緊張感を和らげるための具体的な提案を書いた。そして最後に、ルイ・アームストロングの「ワンダフルワールド」の音楽(動画)を添えた。
それが、小さく、袋だたきにあった。
後ほどわかったことだが、それは一人の読者が「複数の人物を装って」書いていたことであった。しかしそのときのわたしは、3、4人の人が不快に思っているのだと判断した。
この混乱のなか、敢えて読者の神経を逆撫ですることは書くまい、内容が時期尚早すぎたかもしれぬと削除した。
それにしてもだ。その書き方が、巧みにも、意地悪い。人がグサッとくるようなことを、さらっと少ない文字数で的確に表現している。
こんなときこそ、生きることに望みを抱くような音楽を、と思ったわたしが、まるで痛みのわからぬ不謹慎な人間であるかのようないい方で。
これまで、わたしの文章から得た、なんかよかったことの一つや二つあるだろうに、そういう善いところを思い返す余地ゼロ、といった感じの。
そのような言葉は、わたしよりもむしろ、わたしの言葉を好意的に受け止めてくれている読者の方々、そしてわたしの母や妹など、身近な読者の心をかき乱すのに十分な威力を持っていた。
それだけではない。わがブログは、仕事関係者やクライアントの方々も読んでいる。いくらわたしがオープンな性格だからといって、そういう次元の低いやり取りを、仕事関係者に見られるのは、いやなものである。
ここは穏便にすませようと、反発を食らった箇所を削除しても、しかしネガティヴなコメントが終わらない。
やがて、わたし個人を中傷するコメントも現れた。それはもう、文章とは関係のない、単に「あなたが嫌い」ということを公言するものである。
匿名の人間からの暴言は、まるで背後から不意に刃で切りつけられるような、フェアじゃない感じである。
あまりにも目に余ったので、受信直後にそのコメントを削除。ここ3回分、つまり地震後に記した記事のコメント欄を閉鎖した。
そうしたら今度は、わざわざ過去の記事にまで遡り、しつこく追いかけて来る。そこは、マンゴーの話題だろ! という話だ。
当面は静観する構えであったが、いい加減、腹がたったので、コメントを承認制に変えた。
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好意的に読んでくださる読者が、少なからず、いや大勢いらっしゃるにも関わらず、わずか数名の言葉の暴力に屈して、「キレイなブログ」をやめてしまうのは、残念すぎると思った。
従っては、事態をもう少しきちんと調査したく、送信元を見極めるべく、読者コメントのIPアドレスをチェックした。
反論コメントを送って来たのは、実質5名。
500人の読者中、5人。1%。一見少なく見えるかもしれぬが、この1%の背後に、同じようなことを考えている人が少なくとも10倍はいると考えるのが妥当だ。つまり1割。
わたしのブログを好きではないが、つい気になって読んでしまう。そういう人たちの数である。
さて、その5人のうち、1人は、4人になりすまして、批判コメントを矢継ぎ早に送って来た。
別の1人は、わたしの文章というよりは、わたし自身に不快感をぶつけてきたものの、他の読者のコメントにいさめられて、謝罪をされていた。
もう1人は、ご丁寧にも別々のコンピュータ(東京と神奈川)から、日夜交互に送って来た。
この方からのメールがあまりにひどく、しつこく、1通を削除した。
そうしたら、「美穂さんに批判的なことを書いたから削除されたのでしょうか? 北朝鮮みたいです。」と、さらに追い打ちのコメントが来た。
北朝鮮ってあんた……。
これ以上の詳細はもう、あまりにもアホらしく、情けなく、ここで暴露する気にもならないので、これくらいにしておく。
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普段のわたしであれば、一切合切、看過してしまうところだと思う。今、敢えてこの嫌な話題をここに載せるのは、こういう人間の心理があり得るということを、悲しいが伝えおかずにはいられないからだ。
っていうか、単に腹を立てている、黙っちゃおられんのだ。
わたしは、特定できる個人のことをいわれなく悪く書いたり、誰かを心底傷つけるような悪意ある表現を、していないつもりだ。
もしもわたしが、そういうことを書いたならば、それは因果応報であり、自分が同じ目にあっても仕方ないと思う。
だからといって、匿名で書き手を叩きまくることが正しいとは、もちろん思っていない。
わたしは自分の経験を元に、「こうした方がいい」と思われることを提言しただけである。更には、批判を受ければ速やかに削除し、事態の収束を図る努力をした。
そんな人間に対し、執拗に嫌がらせをするというのは、いったいどういうことなのか。嫌なら読むな! という話である。
しかも、この非常事態に。
しかも、この非常事態よ。
ちなみに、残りの2人は、批判コメントに便乗して、「なんか、気に入らん、この人」な思いをぶつけて来た人たちであると思われる。
ここぞとばかりに、こういう人たちがあらわれるのがまた、忌まわしいことでもある。
ちなみに、気分の悪い話は、まだまだ終わらない。のちに衝撃の事実が発覚するのである。
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わたしが、「キレイなブログ」を更新する気が失せるのも、おわかりいただけよう。
しかし、楽しみに読んでくださっている方が確実にいらっしゃるのはわかっていた。
どうしたものかと考えた結果、パスワード制で入れるブログ「胡蝶の夢」を暫定措置のつもりで設けた。個人のこのブログは、有料サーヴィスを使っているので、広告も入らないし、いろいろな機能が使えるのだ。
いろいろな機能をちっとも使いこなしていなかったので、ここは一つ新しいことをやってみようとの思いもあった。
「胡蝶の夢」を開設以来、本当に、いろいろな方からメールをいただいている。そのコメントを拝見しているうちに、これはけがの功名だと思った。
年齢層は20代から70代まで。主に女性。
ニューヨークのメルマガ時代からの読者の方、被災地付近にお住まいの方、日本から遠い場所で日本を案じている方(複数名)、闘病生活中の方(複数名)、津波の現場へ取材にいかれたジャーナリストの方、インドに住んでいらした方、インドのテキスタイルがひたすら好きな方(複数名)……。
とにもかくにも、多彩なバックグラウンドの、大勢の方が、わたしの文章の何らかの楽しみにしてくださっている、あるいは励みにしてくださっている。
そのことがわかっただけで、本当にうれしかった。これからも書き続けたいと思った。
ただ、このような会員制にしてしまうと、「何気なく訪れていた」人が読めなくなってしまうことが気がかりである。
特に男性の方など、敢えて会員になってまで……と思われる方も少なくないはずだ。
そんなこともあり、ほとぼりが冷めたら、「キレイなブログ」を再開しようと思っていたのだが……。
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昨日、思うところがあって、しつこかった批判メールの送り主2名の、IPアドレスの発信元を検索にかけた。
そうしたら、衝撃の事実が発覚したのである。
まず、1人4役をやったあと、「いくつかの名前で、コメントをしたのは私です。」と自ら申し出てくれた、「意地悪だけど素直な人?」だと思っていた人が、実は、読者ブログを書いている人のひとりだったのだ。
彼女は、自分の住まいや経験を偽って、書いていた。ニューヨークに住んだことがあるふり。東京に住んでいるふり……。
IPアドレスというのは……とここで説明するのは面倒なので、知らない方は自分で調べていただきたい。ともかくIPアドレスは、コメントの管理画面で見ることができる。
そのIPアドレスを、「IPアドレス検索サイト」にかければ、居住国や居住エリアばかりか、プロバイダまでもわかるのだ。プロバイダの住所や電話番号までもわかることがある。
読者ブログを書かれているある人と、1人4役の人の文体に類似点があった。
従っては、以前、彼女がわたしのブログに残していたコメントのIPアドレスと、今回のコメントのIPアドレスとを比べたところ、同一人物であることがわかったのだ。
好意的なコメントを残してくれていたあの人が?! あんなにいい感じのあの人が?!
開いた口が塞がらんとはこのことだ。
前述の通り、読者ブログの書き手は250人もいるから、ここでみなさんが特定するのは不可能だとした上で、個人攻撃にならぬよう、書いている。
ブログ上のその人と、わたしのコメント欄のその人との差が、あまりにも強烈で、夕べのわたしはもう、3月11日以来の、相当な衝撃を受けた。
あまりの衝撃で、お腹が下りそうになった。
茫然として、IPアドレスの検索結果を眺めつつ、何が何だかわからない。
こういうときにいつも思い出すのは、鞏俐(コン・リー)主演の映画『紅夢』だ。富豪の第4夫人として嫁いだコン・リー。
第1夫人や第3夫人の、あからさまな「いじめ」を受けていたのだが、いつもやさしい第2夫人が心の支えだった。ところが、実は、やさしい顔をした第2夫人が、一番おっそろしいことを考えていた……という話だ。
あの映画を観たときの、衝撃といったら。
こういう女同士のドロドロとした戦い、もう、絶対いや。男同士のドロドロもいやだが、ともかく、その「覆面なやさしさ」が怖すぎる。
まじで、バチがあたるよ。
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どうにも気持ちがおさまらず、夫アルヴィンドに、概要を説明したく、
「ちょっと2分、ちょうだい。わたしの話に集中して」と、声をかける。
最初は面倒くさそうに聞いていた彼だが、最後の展開に急に身を乗り出して来た。
「彼女は、かなり巧みな攻撃をしかけてくる人だな。気に入らない敵を叩きのめす方法を知っている。
彼女って、意外と人生に成功して来たタイプに違いない。
成功する人は、敵の制し方に長けているんだよ」
ちょっと待て。わたしは彼女の敵になるつもりなど、ないんだけど。
「中国の古い戦法*に、こういう話があるんだよ。敵の弱点を知らない者は勝てない。敵の弱点を知っていていも、自分の弱点を知らない者は、やはり勝てない。敵と自分、双方の弱点を知っている者が勝利する」
いや、だから、そういう話じゃないんだってば。
「つまり、君は今、敵の弱点を知った。彼女がIPアドレスの存在を知らなかったという大きな弱点を! 今が反逆のチャンスなんだよ!」
いや、だから、戦(いくさ)じゃないんだって。闘う気など、ないんだってば。
「寝る前に、ブログに実名を公表してしまいなさい! すっとするよ! 気分よく寝なさい」
こっ、この男は……。普段は温和そうに見えて、実は根性悪?
歯を磨きながらも、
「ミホ、ブログに書いた? え? なんで書かないの? 相手がやっているのは身分詐称罪だよ。そこでミホがブログをやめたら、彼女の思うつぼじゃないか。彼女の勝利だよ」
としつこい夫。こういう不思議なリアクションをかましてくれる夫で、本当によかった。自分を冷静に見つめざるを得ん。
そんな次第で、話が過激長編になってしまった。
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結論を言うと、あちらのブログを今後再開することはないだろう。その人の思うつぼだろうが勝利だろうが、この際、どうでもいい。勝手に勝ってろ! という話だ。
実は先月より、ブログではなく、ホームページを作っている途中であった。
米国在住時のように、きちんとインド発のホームページを作るべきだと思っていながら、ついつい5年もたっていたのだ。
中身はまだ埋まっていないが、器だけはそれなりに仕上がっている。今後、過去の「キレイなブログ」の情報を適宜そちらに移行しつつ、公表する予定だ。
もう、汚れちまった「キレイなブログ」を書き続ける熱意は失せた。
【教訓】
・たとえ1%でも、負のパワーは、強い。
・ネット上のマナー、倫理について、利用者は再考すべき。
・気に入らん、と思ったサイトのブックマークは、ここを含めて即刻解除!
*中国の古い戦法とは、「孫子兵法」というものらしい。英語で"SUN TZU"。夫の言ったことが正しいかどうか定かではないが、参考までに。
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