☔️雨降る夜、フランク・ロイド・ライトの本や、インド版のAD(アーキテクチュラル・ダイジェスト)を開きながら、新居の内装に思いを巡らす。同じ家具でも、ソファーカヴァーやカーテン、クッションのなどの色合いによって、部屋の雰囲気は一変する。
あれもいい、これもいい……と目移りしてまとまりなく。統一感を出そうとすると無理が出て、結局は「わたしが好き」であれば、それでいいのだ。……と、決着する。(夫には合わせてもらう)
日本の伝統的な建築を愛したフランク・ロイド・ライトと、当時の帝国ホテル総支配人の林愛作氏の、情熱を超えた壮絶な熱意によって誕生するに至った帝国ホテル。度重なる設計の変更、工期の遅れ、そして予算の拡大……。
語るに尽きぬ波乱万丈のドラマの果て、1923年、折しも関東大震災の日に開業した旧帝国ホテル。
フランク・ロイド・ライトは、軽くて柔らかな加工しやすい栃木県の大谷石を多用。独特の装飾紋様が施された石が内外装に用いられている。耐火性や防湿性に優れているなどの特長も併せ持つ石だとのこと。
関東大震災による被害は最小限で免れ、東京大空襲の被害からも復興し、その姿を残していたにも関わらず、1968年に取り壊された。
平等院鳳凰堂を思わせる玄関やロビー部分は、愛知県犬山市の明治村に移築され、今でも面影をしのぶことができる。
2017年にNHKスペシャルドラマで放映され、現在Netflixで見ることができる『東京裁判/Tokyo Trail』において、各国11人の判事らの宿泊先として、この旧帝国ホテルの入り口が映し出される。
なお、パール判事役を演じているのは、昨年他界した、わたしの大好きな俳優、イルファン・カーン。歴史を知る上でも、ぜひとも視聴をお勧めしたい映画だ。
◉70年前の極東国際軍事裁判を描いたドラマ『東京裁判』を見て。(2016/12/17)
➡︎ https://museindia.typepad.jp/_2016/2016/12/tokyo.html
それにしても……。と思う。ページをめくり、往時の様子を眺めるにつけ、なぜ、このような偉大なる芸術品を壊さねばならなかったのか、と。地盤沈下? 老朽化? 客室数が少なかった? 資料によれば、確かにメンテナンスは極めて困難だったようだ。
とはいえ、その後、同じ場所に高層建築物を建てられるくらいなのだから、なんとか補修工事ができなかったのかと、素人ながらも考えてしまう。
実は昨夜、久しぶりにネットで情報検索したら、Frank Lloyd Wright Trustが、往時の帝国ホテルの様子をデジタル・イメージにより再現した動画を見つけた。
見入る。夢想しながら見入る。こんなにも壮麗な建物が、完成からわずか45年後に、この世から消えねばならなかったことを、本当に、残念に思う。
『Frank Lloyd Wright: The Lost Works – The Imperial Hotel』
【おまけ】
インドで1966年に公開された映画『Love in Tokyo』という映画に、一瞬、旧帝国ホテルが映る。1:50あたり。取り壊される直前の姿だ。ちなみにインドの年配者が、日本人に会うなり「サヨナラ」というのは、この曲のせいだと思う。多分。
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