新居の「最後の仕上げ」の現場監督をするために、このところ、毎日、赴いている。現居から、空港付近の新居まで、車で約45分。かつてに比べ、道路交通事情が少しよくなったこともあり、移動の負担が軽減している。
このような家づくりをする場合、インテリアデザイナーを雇って、諸々の手配を依頼するのが一般的だ。しかし、わたしは「インテリアデザイナーが手がけるような仕事」が好きなので、自分でやる。たいへんだけど。
ちょうど今から15年前、今の家を購入した時にも、内装作業の手配全般を、自分でやった。当時に比べれば、インドにおけるハウジング事情は大きく変化し、クオリティも格段によくなっている。ただ、選択肢が増えた分だけ、迷いも多い。
家づくりに際しての「ドラマ」は、近い将来、きちんと記録を残そうと思う。
これまで何度か「静謐な写真」を載せてきたが、敢えて美しい場所だけを切り取ってきた。現場では、日々、数十名の労働者たちが出入りして、混沌のドラマが展開されている。
建築現場に入ると、インドの社会の構造や、労働環境や、仕事の進め方が、手に取るように理解できる。「スケジュール管理」「優先順位の設定」「無駄のない効率的な段取り」を重視するわたしにとっては、「苦行のような出来事」の連続だ。
「三歩進んで、二歩下がる」。ならまだいい。
「三歩進んで、五歩下がる」。といった事態さえも覚悟せねばならない環境の中で、大切なのは、ひたすらの根気と継続。
まだ更地だったころ。図面を眺めて、物件の購入を決めたのが2013年。2017年に完成予定だったのが、1年遅れ、2年遅れ……5年遅れた。
生きててよかった。
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午後1時から2時までの1時間はランチタイムにつき、現場は静寂に包まれる。
わたしも、弁当を広げる。今週は、毎日、弁当を持参。旨し。
ランチを終えて戻ってきた、顔馴染みの労働者たちは、「マダム、ランチ食べた?」とゼスチャーで気遣ってくれる。
午後3時前後のインドの人たちの挨拶では、「ランチ食べた?」というのが一般的なのも、インド世界。
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毎日のように現場に赴き、あれこれと注文をつける、わたしのようなオーナーは多分、ほとんどいない。あるいは常軌を逸しているかもしれない。それでも構わない。自らの終の住処を仕上げるためには、日々、変化の様子を眺めたい。眺めるうちに、図面を見ただけでは思い描けなかった発想が浮かぶ。軌道修正の連続でもある。
「臨機応変」も「柔軟な対応」も、あるいは「頑なな貫き」も、現場を見ていなければわからないのだ。ゆえに今しばらくは、この仕事に没頭だ。
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