以下、超長文ですが、バンガロールの新しい玄関口に関する話題につき、ぜひ読んでいただきたい内容です。
(I nearly always write in Japanese, and the auto-translation is often incorrect and misleading.)
インドに移住して17年。昨日ほど、この南天竺バンガロール(正式名称ベンガルール)を終の住処と決めてよかったと、思った日はなかった。
ヒンドゥー教のお正月、ディワリを前に、ホリデームードに溢れるインド。そんな中、昨日は、12月下旬に開業するケンペ・ゴウダ(ベンガルール)国際空港の第2ターミナルを見学するという好機を得た。
案内人は、同空港を運営するBangalore International Airport Limited (以下BIAL)のCEOである友人のHariだ。
旅が好きで、空港が好きなわたしは、2013年に新居を購入すべく物件探しをした際も「空港界隈」に絞り込み、Total Environmentという開発会社のAfter the Rainという物件を購入した。完成が遅れに遅れ、5カ月前にようやく暮らせる状態になった。ちなみにHariの家族も、我々と同じコミュニティに暮らしている。
年々、都市部の拡張を続けてきたバンガロール。空港界隈はまた、未来、多彩な商業施設が誕生し、利便性も高まるだろうとは予想していた。しかし昨日は、その予想を遥かに凌駕する、すばらしいプランを知り、そして完成を目の当たりにし、心が震えた。
現在、利用されている第1ターミナルは、2008年に創業し、国内線、国内線の両方が就航している。インドでは、過去数十年で、空港利用者が爆発的に増えてきた。多分、予測不能のレベルでの増加だったに違いない。
第2ターミナルの拡張プロジェクトは、2014年に始まり、2018年に工事が開始した。パンデミックの影響で、第2ターミナルのビルディングの工事は遅れたものの、2020年12月には新しい滑走路も完成している。今後は、第2ターミナルに全ての機能が移行され、その後、第1ターミナルは改装工事に入るとのこと。
そんな大雑把な背景は知っていたものの、どのようなコンセプトで新空港(第2ターミナル)が誕生するのかは、昨日まで全く知らなかった。
ツアーの前に、Hariはじめ関係者のプレゼンテーションが行われた。2003年に初めて、ボロボロのバンガロール空港に降り立った時のことを思うと、それはまるで、夢物語のような世界だった。詳細を記したいが尽きない。細かなことは完成後にまたレポートするとして、コンセプトだけでも記しておきたい。
[Four Guiding Principles/4つの指針]
1. Terminal in a Garden/庭園の中のターミナル
2. Sustainability/サステナビリティ
3. Technology/テクノロジー
4. Art & Culture/芸術と文化
このキーワードを聞くだけで、どんなものかとワクワクしてくる。実際に目にしなければ「絵に描いた餅」ではないかと思われるほどの、それは細部に至るまで理想的なプロジェクトである。
✈︎ 都市化が進む昨今では「ガベージシティ(ゴミの街)」の汚名を持つバンガロール。しかし従来はガーデンシティ、エアコンシティと呼ばれていた。だからといって、最初から緑溢れる土地だったわけではなく、そもそもは乾いた高原地帯だった。
バンガロールの創始者であるケンペ・ゴウダ1世(空港の名称になっている)は、都市形成の際、土地を潤すため、多くの人工湖を作った。その後、バンガロールの緑化に貢献したのは、マイソール王国の藩主ティプー・スルタンだ。バンガロールにある樹木の多くは、彼が1700年代に海外から輸入した「外来種」である。英国統治時代には、英国人によっても緑化が進められた。
ラル・バーグ植物園やカボン・パークでは、樹齢数百年を超える多彩な樹木を見ることができる。第2ターミナルは、その「ガーデンシティ」を再誕させているといっても過言ではない。まさに「庭園の中の空港」なのだ。
広大なナーサリーの一隅を見学させてもらったが、そこは、数千年前の古来からインドに存在する種の樹木をはじめ、世界各国から運ばれてきた無数の樹木や植物が溢れていた。樹齢数百年の、しかし小ぶりの木々。日本から来た木もある。わたしが一緒に写っているのがそれだ。西ガーツ山脈の西、デカン高原の南に位置するバンガロールは、土壌に恵まれていることもあり、多くの外来種が根付きやすいという。
工事に際しては、土(Soil)を外に運び出すことなく、敷地内で有効活用。深く掘られた堀の壁面は、緑で覆われるという。庭園には巨大な人工湖が建築中だったが、湖の底は特殊な形状をしている。それは、湖で貯められた雨水を浄化するシステムだ。空港で使用する電力及び水資源は、自給自足されるという。
ランドスケープ(庭園)担当者のプレゼンテーションもまた、機知に富み感嘆するばかり。樹木の選定に際しては、インド神話の『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』なども参考に、5000年以上前の植物や樹木を検証。水を枯渇させない環境づくりを考慮したという。話は、蓮や睡蓮など神々の花、仏陀や日本の「森林浴」にも及び、彼らが数百年先に止まらず、数千年先を見ているような口調に、眩暈がするようでもあった。
✈︎ そして芸術と文化のプロジェクトもまた、すばらしい。インドの伝統と現在を調和させるべく、40人のアーティストによる60の作品がターミナルを彩るとのこと。まさに不易流行の世界だ。アーティストの中には友人も名を連ね、とてもうれしい。
話は空港にとどまらない。
✈︎ 空港周辺に暮らす人たちの雇用機会を生むのはもちろんのこと、「学校づくり」も実施している。ここで注意したいのは、インドの義務教育の仕組み。話が長くなるが、Government Schoolと呼ばれる公立学校は、州にもよるが、教育の環境が整っていないところが多数だ。「校舎はあるが先生が揃わない」「トイレが不潔、あるいは機能していない」などさまざまな問題がある。
数合わせで校舎が作られても、機能していなければ意味がない。この点については、話が超絶長くなるので割愛する。
ともあれ、Hariのプレゼンによれば、界隈に6つの学校を作る。それも近代的で機能的な建築によるものだ。校舎もまた空港同様、サステナブルなコンセプトで建築され、トイレなどは空港と同じクオリティのものを設置するという。すでに完成している写真も見たが、それは本当にすばらしいものだった。
「この学校に通った子どもたちが、10年後、空港で働いてくれることを、わたしたちは夢見ている」
とのHariの言葉に、思わず泣けた。
✈︎ プレゼンのあとは、工事中のターミナルを見学。中に入るなり、息を呑んだ。こんな空港、見たことがない! すばらしいの一言に尽きる。これが本当に、バンガロールの新しい港なのか。今はまだ、写真をシェアすることはできないので、開港後に紹介したい。
✈︎ そして、昨日のイヴェントで最も感激したのは、「植樹」だった。搭乗者だけでなく、誰もが訪れることのできる空港の一大庭園。その一隅に、ツアー参加者30名のそれぞれの木が、用意されていたのだ。
2003年。縁もゆかりもないこの土地を、「旅行で」訪れたときから、ここに住みたいと思った。あれから19年。筆舌に尽くし難い紆余曲折があったが、今こうして、夫婦そろって元気に、ここで暮らせている。
異邦人であるわたしは、ここを終の住処と決めたとはいえ、折に触れては、寄る辺ない心許なさを感じることもある。しかし、この「わたしの木」は、この大地に根を張り、やがて大樹となるのだ。老人になり、遠出ができなくなったとしても、この公園に来て、自分の木の下で、くつろぐこともできるだろう。
帰路、第1ターミナルのブリュワリーでビールを飲みつつ、感極まれり。涙ながらに夫に心情を話す。共感しながらも、
「木ならさ、近々、自分たちの家の庭にも植えるじゃない」などと、まったく情緒のないことを言いだすから、毎度、感傷に浸れない。そう言うことじゃ、ないやろ!
簡潔にまとめるつもりが、長くなった。第2ターミナル完成の暁には、すぐにも再訪しようと思う。このすばらしい機会を与えてくれた関係者に、心から感謝する。
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