というわけで、今朝は熊本を離れ、1日2本の高千穂(延岡)行きバスに乗り損ねまいと熊本交通センターへ。かつてはJRが走っていたらしいが、天災により路線がダメージを受け、以来、赤字線だったこともあり復旧されぬまま、現在はバスのみが公共の交通手段らしい。
快晴の本日。ドライヴ日和である。とはいえ、3時間余りのドライヴは、それなりに長い。途中でおトイレ休憩だ。
高千穂バスセンターに到着後、チェックインには早すぎる時間だとのことで、宿の人にスーツケースだけを取りに来てもらい、観光へ出かけることに。ランチは、選択肢の余地がほとんどない状況につき、駅の近くの喫茶店で野菜カレーを。
箸で野菜カレーを食べるインド人。色んな意味で、奇妙な図であるが、取りあえず、それなりに美味だったのでノープロブレム。
「ザイオン(国立公園)に比べると、小さいね」と夫。
頼む。あの壮大すぎる国立公園と、高千穂峡を比較しないで。それは、興ざめするというものだ。
ちなみにザイオン国立公園の峡谷探検は、非常にワイルドでスリル満点。米国の国立公園でのトレッキングの中で、最も思い出深い場所のひとつだ。アルヴィンドは幾度となく岩場で転んで水に浸かって、携帯電話を壊してしまった。15年以上前の話ではあるが。
月曜だというのに、秋の観光シーズンに入っているようで、観光客がたくさん。ボート乗り場でも30分ほど待って、ようやく乗れたのだった。
遠い昔、セントラルパークで一度乗って以来のボート。わたしが漕ぎたかったが、男気のハニーがオールを握る。が、もう、どこへ行くのだろう状態。
お願い、あの「真名井の滝」にだけは近寄らないでね。お願いだから!
詳細は割愛するが、景観を愛でる精神的余裕は皆無で、ただもう、「右!」「左!」「あ〜、ぶつかる!」「止まって!」と指示を出しつつの、スリリングすぎる30分だった。
帰り際には、かなり漕ぎ慣れて余裕の笑顔が出てきたマイハニー。
ボートのあとは、高千穂神社に至る自然遊歩道を散策。距離は1キロにも満たないようなので、甘く見ていたら、ひたすらの上り。
階段に次ぐ階段である。ともあれ、インドの日常では、ほとんどこのような散策を楽しめないので、ゆっくりと歩くにはいい機会だ。ニューヨークでも、ワシントンD.C.でも、自然美あふれる「歩ける場所」が身近にあったなあ……と懐かしみつつ、いやいや、好きで住んでいるインドである。無い物ねだりをしてはいけない。
いい運動である。いやもう、そんなに運動をしなくてもいい気がしないでもないが。そんなことより、九州で「九州男児」のTシャツを着こなすインド人。なかなかの度胸だ。
そして高千穂神社に到着。最近では、この界隈は「パワースポット」としても親しまれているらしく、「癒しを求める参拝者が後を絶たない」のだとか。そもそも、ここ20年来の日本で多用されているところの「癒し」という言葉が好きではないわたしは、特段、癒しを求めるつもりはないのだが、なんとなく、清廉と、心ひきしまる気がするのが、うれしい。
こちら、幹の根元が一つになっている「夫婦杉(めおとすぎ)」。
好きな人と手をつないで3回廻ると幸せになれるらしいので、夫と手をつないで廻ってみた。インドでの結婚式の儀式で、火の周りを7回廻らねばならなかったときに、途中で何回廻ったのか、わからなくなったことを思い出した。つくづく、笑える結婚式だった。
このお方、「うずめ」さん。天岩戸に隠れた天照大神(あまてらすおおみかみ)を誘い出すため、岩戸の前でおもしろおかしく踊ったのだという。
夜は神楽を見に行くので、夕食は、早めに。ここ数年、人気があるらしい高千穂牛が食べられる店へ。ステーキなどもあったが、なにしろ連日の外食。軽くすませたいので、味見程度に1〜2人前の焼き肉盛り合わせと、野菜、ビビンバなどを。ものすごく、というわけではないが、それなりに、おいしかった。
夕食のあとは、高千穂神社の神楽殿へ。国指定重要無形民俗文化財であるところの「高千穂の夜神楽」。本来は、三十三番の舞が夜通し披露されるものではあるが、そのうち4種の舞が1時間程度で披露される短縮版を見ることができるのだ。
諸々、詳細を綴りたいところであるが、明日は早起きをして、日の出を見に行くことにしている。というわけで、急ぎ写真のみ載せておこう。
天岩戸が開かれたシーンでは、なんだか心に、ぐっと来た。敷居が高いどころか、かなり低く、カジュアルな雰囲気満点の神楽であったが、それがまた、なんとも親しみやすさを演出していたように思う。
酒を造り、酒を飲み、酒に酔う、イザナギノミコト&イザナミノミコト。
ともあれ1時間ほどの神楽。思った以上に楽しかった。と同時に、自分の中の日本人が、心の中で浮き沈みしているのがわかった。
神棚が、欲しいと思った。
古事記やら日本書紀やらを、きちんと咀嚼しながら、読みたいと思った。