先週の金曜日、ミューズ・クリエイション主催の「チャリティ・ハンディクラフトフェア」を実施した。今日は、そのときのレポートを。
ミューズ・クリエイションでは、2012年の創設以来、毎年一度「ミューズ・チャリティバザール」を実施している。計6度のバザールのうち、過去2回、NGO/NPO枠で無料出店してもらっているマヤ・オーガニック。日本にも販売代理店があり、安全で素朴な木工玩具として人気があるブランドだ。
バンガロール近郊、マイソールへ向かう途中に、チャンナパトナという村がある。ここは、木工玩具の故郷で、マヤ・オーガニック以外にも、いくつかの工房があるようだ。
チャンナパトナの木工玩具の歴史は18世紀に遡る。マイソール王国の支配者、ティプー・スルターンが、ペルシャから職人を呼び寄せ、チャンナパトナの職人に技術を伝承させたというのが起源だとのこと。
マヤ・オーガニックは、チャンナパトナの職人たちの支援、及び児童就労の根絶を目指して立ち上げられたフェアトレードの非営利団体だ。
木工玩具は、100%天然の木材を用い、ターメリックやインディゴなどの天然染料を用いて一つずつ、手作りされている。艶やかな表面は、ニスを使用しているのではなく、葉っぱで丹念に磨き上げてツヤを出す。非常にクオリティの高いプロダクツなのだ。
数カ月前、マヤ・オーガニックの運営者であるラオ氏から連絡があった。バンガロールの日本人コミュニティに商品をアピールしたいので、デモンストレーションの機会を提供してくれる団体や企業を紹介して欲しいとのこと。できれば50人以上ほどが集まるイヴェントがいいという。
人に紹介する前に、自分の目で確かめたいという思いもあり、まずはミューズ・クリエイションで企画しますと伝えた。ミューズ・クリエイションのメンバーは常時45名前後いるのだが、イヴェントに参加できるのは20名程度として、あと30名ほどの来訪者があれば、それなりに形になるのではないかと判断したのだ。
かつてのチャリティ・バザールのように、拙宅を会場にすれば場所代も不要である。というわけで、今回、マヤ・オーガニックをメインに、やはりミューズ・クリエイションが交流のあるNGO、アシュウィニ・チャリタブル・トラストを招くことにした。
アシュウィニは、貧困層子女の学業や女性たちの就労を支援する組織で、個人的にはミューズ・クリエイションの設立以前から交流がある団体だ。またミューズ・クリエイションのメンバーが数名、一時期、学童のこどもたちに折り紙などを教えに行っていたこともあり、交流は続いている。
アシュウィニの主要スタッフの女性は、まだゲストも来ていない準備の段階から、謝意を表現してくれる。こうして、販売の場を提供してもらえるだけで、本当にうれしいと言ってもらえて、こちらもうれしい。
オープンの時間は10時半から2時半までの4時間。来訪者には、ゆっくりくつろいでもらいたく、すでに懐かしい感じとなった「カフェ・ミューズ」を久しぶりにオープンした。SOMAで買ったピンク&イエローのエプロンも、なかなかに年季が入ってきたものだ。
もしも日本人以外のゲストが来訪した場合に備えて、折り紙と書道のデモンストレーションコーナーも設置。
アシュウィニのプラスチック製バッグ。このタイプの買い物かごは、昔、よく使われていたようだ。トレンドのリバイバルである。丈夫で、水洗いできるので清潔に保てることもあり、わたしも愛用している。
ミューズ・クリエイションのメンバーが、家族そろってお買い物に来てくれた。
このおままごとセットが本気で欲しかったが、どうしても使途が思い浮かばないし、贈る相手もおらず、とりあえず、保留。
デモンストレーション。以前、動画で見たことがあったが、実際に見ると、感動はひとしおだ。
1. 木を削り、研磨して形を整える。
2. 塗料を塗りこむ。
3. 表面にツヤを出す。
という全工程が完了するのだ。
こちらは染料。右端の丸いチップのようなものは、木から取れる樹脂のようなもの。ラックと呼ばれる。これに天然の染料(パウダー)を練りこんで、スティック状にする。
●マヤ・オーガニックの詳細については、日本の販売店が日本語で紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。
★ZUTTO (←CLICK!)
★CAST JAPAN (←CLICK!)
バングルを作っているところ。メンバーの多くが作ってもらった。デモンストレーションで作られたものは、マヤ・オーガニックからのギフトだ。うれしい。
まずは手首のサイズを確認して、好みのシェイプ、好みの色を選んで作ってもらうというオーダーメイド。
わたしは赤い染料を選んだ。スティックを木肌にくっつけて、丁寧に塗り込んでいく。
自分のために作ってもらった一つだけのバングルと思うと、とても愛着がわく。
お兄ちゃんが「赤と黒」というと、弟も「赤と黒」というかわいらしい兄弟。
実はお隣、ムスリム一家はジョイント・ファミリー(大家族)で、子供が少なくとも6、7人いる。兄弟姉妹、従兄弟従姉妹、みんなそろって「一家族」状態だ。
近所の犬も、遊びに来た。敷居が低い拙宅ゆえ、何の障害もなくフラフラと侵入。ちなみに我が家の猫らは、書斎のバルコニーに隔離されていたのだった。3匹ともおとなしく寝ていてくれたので、助かった。
カフェ・ミューズ、盛況。おなじみのロールケーキは4本焼いた。いつもに比べると「ふわふわ」ではなく「しっとり」としてしまい、見栄えがイマイチだったのだが、味はそこそこ好評だったので、よかった。
ちなみにしっとりの理由は、愛用しているニルギリズの生クリームが、そのときどきによってコンディションが異なるのも理由のひとつ。鮮度が高いと、サラサラすぎて、泡立てても水分が急速にスポンジに吸い取られる。一方、数日たったものは、クリーム状になっており、クリームがスポンジに溶け出す率が少ない。
ロールケーキにおける一定の品質管理は、至難の技である。
インド人ゲストがほとんどいなかったので、関係者で折り紙を楽しむ。微笑ましい光景。
職人のお兄さんは、メンバーに取り囲まれると、格別の笑みを見せつつ作業に励むのだった。
坂田購入のキャンドルスタンドとおもちゃ。かわいいので、インテリア小物として。
あかちゃんの頭上に吊るせば、かわいらしいモビール。我が家は庭に。
かくなる次第で、わずか4時間の小規模イヴェントではあったが、これはこれで実りのある、有意義なひとときだった。
ところで来訪者は、予想通りのちょうど30名!
受付のメンバーに、「美穂さん、すごい! どうして予測できたんですか?!」と感嘆される。実は29名で止まっていて「惜しいな」と思っていたところ、最後に駆け込みで1名いらっしゃり、ちょうど30名になったのだ。
子供を含めると40名ほどではあるが。
かなりどうでもいい話かもしれないが、2年前、初めて外部でバザールをしたときも、本来は300人を見込んでいたが、バザール直前にカヴェリ川の水の利権を巡る暴動が起こり、開催が危ぶまれた。ゆえに「200人を超えれば成功」と考えていたところ、確か203名だかか204名だかの入場数だったことがあり、あのときも我ながら、鋭い予測だと思った。
そんな話はさておき、今回は、マヤ・オーガニックの商品に関心ある人が対象ゆえ、来訪者は少ないだろうと見込んではいたが、同時に来訪者のほとんどは「買い物をする意欲」があると察せられた。
予想通り、マヤ・オーガニックも、アシュウィニも、ともにいい売り上げだったと改めて喜ばれた。またミューズ・クリエイションの商品やカフェも、予想以上にいい売り上げであった。
小さいながらも、意義のあるイヴェントを実施したことで、今年のチャリティ・バザールの方向性を見直す契機になった気がする。
バンガロールでは昨今、あちこちで、いろいろな団体が、フリーマーケットやクラフトフェアを実施している。ゆえに、他との差別化を図るべく、出店を非営利団体中心にするなど、コンセプトを見直すのもいいかもしれない。
どんな経験にも、何かしらの示唆がある。
ともあれ、参加メンバーのみなさま、お疲れ様でした!