風光明媚なレマン湖畔の街、モントルーを訪れるべく、午後4時36分発の列車に乗り込む。本当はもっと早い時間に出発したかったのだが、あれこれと用事が長引いて、結局は夕方になってしまった。
ともあれ、日の高いうちにホテルへチェックインできれば問題ない。
ジュネーヴからモントルーまではわずか1時間ほどの列車の旅。
たいした距離ではないので気が楽だ。
モントルーは古くから欧州のセレブリティらに愛されて来た湖畔のリゾート。
昔ながらの由緒あるホテルやカジノなどがあるほか、毎年夏に開催されるジャズフェスティヴァルでも有名だ。
ところでスイス・デザインの話の続き。駅のホームの時計もまた、とてもスイス的なデザインである。などとしみじみ思っていたら、わたし自身の持ち物もスイス的であることに気づく。
モレスキンの赤い表紙のジャーナル。アップル・コンピュータのおまけでついてくるリンゴのシールを貼り付けているのだが、その様子が、スイスである。コンピュータ用のキャリーオン・バッグもスイスな色合い。
数年前、カリフォルニアで買ったスイスアーミーのシャツ。
すでに着こなしすぎて色あせている気がしないでもないが、ともあれスイスである。
さて、列車は右手に湖を望みながら東へ進む。
ローザンヌに近づくにつれ、優美な建築物が目に入り、同時に丘陵地にぶどう畑が見渡せるようになる。
丘の斜面に広がるぶどう畑、そのまま滑り込むように眼下に広がる湖。点在する昔ながらの家々。
なんともいえずやさしげな光景が広がっている。
ローザンヌを過ぎ、ヴヴェイを通過。ヴヴェイはネスレの本社がある街である。かつてはモントルー同様、欧州の王侯貴族や芸術からに愛されていたリゾートだったという。
チャップリンも晩年はこの街で過ごしたのだとか。
駅に到着し、タクシーで、丘の上にある小さなホテルへ向かう。メルセデスのタクシーが駅前に並んでいる。料金のメーターがミラーと同化していることに驚く。クール!
さて、わたしたちの泊まるホテルは、その名を「トラララホテル」、という。TORALALA。日本人に嫌がらせをしているとしか思えない、発音が困難なホテル名ではある。
インターネットでリサーチの末に見つけたこのホテル。まさにスイス・デザインが生きたモダンな内装で、非常に快適である。三ツ星のデザインもまた、味わい深い。
さて、チェックインをすませ、さっそく湖畔へと散歩に出かける。鳥のさえずりが響き渡り、色とりどりの花々は風に揺れ、湖面をわたる風は冷たくやさしく、対岸にそびえる山並みは力強く、そして静か。
太陽が水面に沈むまで、湖畔で過ごしたのだった。
湖畔では、犬を連れた住民らが、のんびりと散歩をしている。犬たちも幸せそうである。
湖に面する眺めのよい場所に、フレディ・マーキュリーの像が立っている。彼は晩年(他界したのは45歳の若さだった)、しばしばこの街に滞在していたとのこと。
ちなみに彼の両親はムンバイ出身のパルーシー。インド人である。
湖面には、カモや白鳥が泳ぎ、水面は限りなく平穏で、本当に、いい場所である。明日、もし天気がよければ、丘の一番高い場所まで上ってみようと思う。晴れますように。