思い返せば子ども時代から、「環境問題」に関しては敏感な方だった。しかし大人になるにつれて感度が鈍くなり、世間がファッションのようにエコだなんだと騒ぐのを、いつしか傍観気味に見ていた。
とはいえ、ファッションだろうがなんだろうが、本当に環境にも自分にもよいことであれば、それを暮らしに取り入れるにこしたことはない。
さて、米国での十年の暮らし。セントラルヒーティングで過剰に暖められた冬のアパートメント。室内ではTシャツでもうろうろできた零下5度の夜。わずか一人の移動ですら、燃費の悪い大型の自動車を駆る人々。
ファストフードで驚くほど大量に添えられる紙ナプキン。トイレでは、ガラガラガラガラ〜〜〜ッと、力一杯トイレットペーパーが巻き上げられる音が響き渡り、手を拭く紙ナプキンを、やはり大量に取り出すべくギーコギーコギーコとレヴァーを引く音が響く。
考えなしに、消費を、利便性を謳歌する人々が多い反面、ライフスタイルの見直しに、真摯に取り組む人たちも多い。環境によい洗剤類。エコロジカルな生活を推奨する各種ブランド。
それらはむしろ、値段が高いこともあったが、しかしできる限り、暮らしに取り入れて来た。
翻ってインド。
トイレットペーパーは高い。貴重品だ。2001年、初めてインドを訪れた時、デリー空港のトイレに行った。そもそも「水で洗浄」が主流のインド。当時、公共施設ではトイレットペーパーは備えれておらず、トイレの入り口におにいさんが1ロールを持って待機していた。
お兄さんに数ルピーを渡した。するとお兄さんは、トイレットペーパーを恭しく広げ、30センチくらいのところに定規を当て丁寧に切り、ヒラリとさせながらわたしに渡した。「うわ、短っ!」と思いつつも受け取り、トイレに入ったことを、まるで昨日のことのように思い出す。
ファストフード店でも、ナプキンはきっかり1枚くれるばかり。どさどさと取り出して、どさどさと拭き、どさどさと捨てる国の習慣に慣れていたわたしは、いろいろな意味で、胸が締め付けられるような思いがした。
今、わが家ではティッシュペーパーを使うことがほとんどない。多分、1箱くらいはどこかにあるだろうが、基本的に不要なのだ。母が訪れたときは、そのティッシュペーパーの乱暴な使いっぷりに呆れた。母にも若干「インド式」を取り入れてもらったものである。
たいていのことは、タオルや古新聞、雑巾などで代替できる。鼻水が出たら、洗面所で流せばいい。というか、鼻水が出ることは、ほとんどない。
トイレットペーパーもティッシュペーパーも、インドでは「高価な日用品」だ。トイレットペーパーは、4ロール入りで350円ほどする。それは一カ月の新聞購読費よりも高い。
以前、インドのトイレ事情についてはこちらで紹介したので、説明は割愛する。
ともあれ、インドには、「モノがない故のエコロジカルな生活」が日常だ。もしも11億超のインド人が先進国並みの消費生活を営んだとしたら、地球はたちまち滅びるだろう。いや、滅びる。
なんだかやたらと前置きが長くなったので、本題に入る。
上の写真は、石けんの実である。先日、「キレイなブログ」にて、「石けんの実」でエコロジカルに洗濯(←CLICK!)というタイトルでもって紹介した。
向こうのブログでは、GOOD EARTHで購入したものを紹介しているのだが、今回、バンガロールのANTSにて、偶然別のブランドのものを見つけた。「キレイなブログ」と内容は重複するが、石けんの実について、一部抜粋する。
これは「石けんの実 (SOAP SHELLS/SOAP NUTS)」と呼ばれるもの。南インドで見られる15メートルほどの木 、リータ REETHA (SAPINDUS)になる実で、天然の洗浄効果、除菌効果を持つ。
洗濯物を色落ちさせることなく、すっきりと洗い上げてくれるのはもちろん、環境にも、肌にもやさしいのが魅力。赤ちゃんや、繊細肌の人にもうれしい商品だ。
わたしはすでに数カ月使用しているが、高価かつ匂いが強い一般の洗剤よりも、ずっと気に入っている。
6〜7片ほどのリータの実を備え付けの木綿の袋に入れ、衣類とともに洗濯機に入れて洗浄する。洗濯の途中で引き上げたりせず、そのまま放置しておけるのがいい。同じ実を4回ほど使用できる。
GOOD EARTH製はあらかじめラヴェンダーオイルの香りが付けられているが、この商品にはついていないので、好みでエッセンシャルオイルを垂らすのもいいだろう。
108と、なぜか煩悩の数だけ石けんの実が入ったこの商品。右の山吹色の袋に入っているものと、詰め替え用を2袋、購入した。封を開ければ、わかりやすいブローシュア(説明書)が同封されている。
インターネットで検索してみたところ、この実は日本でも、沖縄あたりで採取されているとか、中の黒い種子は「羽子板の羽根に使われている」といった情報が見られた。
水に浸して撹拌すると泡立つところ、まさに石けんである。今のところ洗濯にのみ使用しているが、家屋のあらゆる掃除に使えそうだ。
さて、このわかりやすい説明書を添えてエコロジカルな商品を販売しているこの会社のことが気になる。早速ホームページを訪れたところ、なんとバンガロールの組織で、事業のメインは「コンポスト」であることがわかり、感動する。
毎日出る野菜や果物の皮などの生ゴミ。これらを庭の肥料などに有効利用したく、コンポスト(堆肥)の作り方などをインターネットで検索していたのだが、なかなか着手できずにいた。
二都市生活を一時休止している今、なんとか始めたいと思っていた矢先、この組織がコンポスト用の素焼きのポット
を販売しているのがわかり、タイミングのよさに感動したのだった。
コンポストのことについては、日本に住んでいたころから関心はあったが、夫の亡母の手記を読むたびに、実際にこのような暮らしをしたいものだと思っていた。
亡母の手記は、下記のサイトに日本語訳して記している。非常に「ためになる」ので、お時間のある方には、ぜひとも読んでいただければと思う。
■亡き人を思う午後。WONDERFUL WORLD(←CLICK!)
さて、このコンポストを販売する組織は、わが家からもほど近いインディラナガールにあるとのこと。昨日、ホスピスを訪れた帰りに、早速、立ち寄ったのだった。
庭の一画に商品が並べられており、壁には石けんの実やコンポストの説明が貼られている。
受付の女性が、商品を説明してくれる。
コンポスト作り用は、一番上の写真にある三段重ねのもの。無地とペイントされたものがあり、わたしは緑色にペイントされたものを購入した。
これも1500円程度である。
このコンポストのポット以外に必要なのは、生ゴミ、枯れ葉など。
枯れ葉がない場合は、新聞紙をちぎったものでもよい。
一番上のポットに、生ゴミを入れ、その上に枯れ葉(もしくは新聞紙の屑)をちりばめ、新聞紙でカヴァーをして蓋をする。
日々、カヴァー用の新聞紙をはずして、生ゴミ、枯れ葉を積み重ねていけばよい。
ゴミでいっぱいになったら、一番上のポットと二番目のポットを入れ替える。1カ月半ほどもすると、一番下のポットに堆肥が溜まる仕組みだ。
作業もさほど面倒ではない。というか、庭師に頼めば問題ない。とはいえ、もちろん自分でできる程度の作業だ。コンポストのポットのほか、週に一度、少し入れるようにと言われた防虫用のNeemのパウダーを購入。これはNeemのほか、唐辛子のパウダーでも代用できるとのこと。
また、石けんの実も余分に購入した。そして、今朝、配達を頼んだのだった。
これがわが家の庭の一隅に置かれた「トーテムポール?」な置き物である。さほど景観をみだすことなく、おさまっている。
右写真は、配達してくれたスタッフが、庭師に使用法を説明しているところ。
あらゆる野菜や肉などを入れられると説明されたところ、庭師曰く、
「マトンやチキンを入れたら、ネコが来て食べます。マトンやチキンはダメです」
と、控えめながらも厳しく主張する。
メイドのプレシラ曰く、庭師はヴェジタリアンなので、直接触れる必要はないとはいえ、肉料理の残飯に関わりたくないらしい。
肉類の骨に関しては別に廃棄するとして、野菜や果物類、コーヒーパウダー、卵の殻、茶葉など、ともあれたいそうな生ゴミが再生されると思うだけで、かなりうれしい。
うまく活用できることがわかった暁には、この商品を人々にも勧めたいと思う。
■DAILY DUMP: HARM-LESS HOME
バンガロールにお住まいの方、石けんの実もここで入手できますよ。住所その他の情報はサイトに明記されています。
インド発、元気なキレイを目指す日々(←Click)
■生ゴミを堆肥に! コンポスト設置
■貧しい人のための無料ホスピス訪問
■デカン高原のバンガロールに戻る夜。