夫が極めて不謹慎な表現でもって、<英国対ドイツ戦>について言及する。
わかった。今日もテレビディナーね。またしても「特例」で、今夜もどんぶり系夕食である。普段はまったく興味のないサッカーでも、ワールドカップとなると話は別。
先週もムンバイ滞在中、「早く寝なきゃ」と言いながら、夜更かしの日々であった。
それにしても、日本チームの活躍ぶりには、わたしがここで今更書くことでもなかろうが、感嘆した。うれしかった。
フリーキックって、あんなに決まるものなの? と、普段サッカーを見ないわたしにとっては、素朴な疑問さえ抱きそうであった。
夫はといえば、最早、当然のように日本支援である。
ホテルのベッドに横たわって観戦していたのだが、2本目のフリーキックが決まったときには、ベッドから飛び降りて、妻に抱きつき、二人して叫びつつ、喜びを炸裂させる始末である。夜中なのに。
隣室の人には、迷惑をかけた。
オリンピックはじめ、あらゆるスポーツ競技において、母国を応援するのは自然な流れである。特に異国に暮らし、異邦人と結婚すれば、なおのこと、祖国の血が騒ぐというものだろう。きっと。多分。
とはいえ個人的には、スポーツ観戦にはあまり熱心ではないのだが、一度見始めるともう、血が煮えたぎる。
夫が日本のことを少しでも悪く言おうものなら、いちいち反論してしまう。
「日本人は、背が低くて、足が短いのに、よくあんなに走れるね〜」
「回転数が速いの!」
「あの髪型はなに、はやり? 変だよね」
「ほっとけ!」
試合とは関係のないところでのコメントがうるさい。更には、本田選手の活躍ぶりをして、
「このチーム、トヨタって選手はいないの?」
などという、どうにもくだらん質問にすら答えねばならないからもう、鬱陶しい。
ちなみに後日、やはりインド人の夫を持つ日本人の友人から、ご主人から同様の質問をされた旨、メールが届き、我が夫だけではなかったと、不思議に安堵するのであった。
それはそうと、岡田監督というのは、以前日本のメディアで散々叩かれてはいなかったか?
わたしは細かい事情をよく知らないのだが、あれだけ叩いておきながらの絶賛ぶり。そりゃ、絶賛するしかなかろうが、しかし世間とは、なにやら現金なものであるなと、水をさすようで悪いが、そう思うのだ。
無論、日本に限らず、世界中どこででも、どんなスポーツにおいても、負ければ非難され、勝てば称賛される、それに尽きるのであろうが。
正直な話、わたしはスポーツにおける、メディアの、観る者の、愛好する者の、監督やスポーツ選手たちに対する「評価する側としての絶対的な姿勢」について、いい印象を持たない。
「やればできるじゃん」……って、そういう話? と、思ってしまう、少々堅物なわたしである。
いくつものボールを受け止めて、受け止めて、受け止めたにも関わらず、1本のミスで、めちゃくちゃに叩かれるゴールキーパー。何戦も何戦も勝ち抜いてきても、最後の最後で破れたら、散々にけなされる選手たち。
それでなくても酷なのに、メディアや観客たちがこてんぱんに叩くのを、見るに耐えない。特段、善人ぶるわけではない。ただ、スポーツで勝つということが、いかにたいへんなことかを思うと、
「あいつはだめだ」
なんてことを、軽々しく言えないと思うのだ。こと、スポーツに関しては。なにしろスポーツとは、必ず勝敗があるわけで、勝ち続けることはむしろ、ごく稀なのだから。
岡田監督へのバッシングの詳細を、覚えてさえもいないが、そういう雑音を乗り越えて、今回ここまでチームを導いたということは、本当に、すさまじい精神力であると思う。
ところで一番上の写真。4年前のバンガロールのスタジアムだ。オシム監督率いる日本チームが、バンガロールに来てインドチームと対戦している様子である。
試合終了の直前、スタジアムに野良犬が入ってきたため、試合が一時中断している様子を激写したものだ。非常にインド的だ。
ちなみに試合の前日、わたしはチケットを購入しようと「東奔西走」していたのだが、その際、オシム監督を間近で目にした。
彼はスタジアム外の歩道で、日本のメディアからのインタヴューを受けていたのだが、猛烈に不機嫌な顔をしていた。
なにしろ、道路にはオートリクショーの排気ガスが舞い上がり、埃っぽく、ホーンの音も渦巻いて、それはもう日本チームにしてみれば、「劣悪な環境」である。
バンガロールのスタジアムの芝生をして、「ガッタガタ」と書いていた記者もあった。選手たちは、「劣悪な環境」に心底いやけがさしている様子が、記事の端々からにじみ出ていた。
試合結果といえば、日本が3対0で勝利したのだが、夜、試合を終えた彼らは、バンガロールで休むことなく、その日深夜の便で、日本へ帰っていった。
おんぼろ旧空港で、彼らの疲労はピークに達していたに違いない。試合後、シャワーを浴びる時間はあったのだろうか。そのシャワーは、果たして「お湯」だっただろうか。余計な心配をしたものである。
ちなみに試合の最中、まるで「お約束」のように、停電もした。それで試合が中断した。インドらしくて、わたしは結構楽しかったのだが、日本選手たちにとってはもう、「あり得ん事態」だったに違いない。
電光掲示板の、時計には針がなく、試合時間の経過を表示するなにもなく、あと何分で試合が終わるのかわからないという、これもまた、インド的な流れであった。
この光景、こうしてみると、かなりシュールである。イングマール・ベルイマン監督の映画『野いちご』を思いださせるほどである。最早、ポエムだ。
さて、4年前のブログを、先ほど読み返した。なかなかに面白かったので、ぜひお読みいただければと思う。
当時、ブログ的に、今よりも砕けすぎた文章であることが、自分で書いておきながらかなり不快だが、それはそれ。若気の至りということにしておこう。
↓ ↓ ↓
■サッカーの入場券を求める小さな冒険。 (10/10/06)
■日本対インド。あまりにもインド的な、すてきサッカーゲーム。 (10/11/06)
あのころは、夫はまだインド生活になじんでおらず、何かにつけてブルーだったことを思い出し、しみじみとさせられた。
インド発、元気なキレイを目指す日々(第二の坂田ブログ)(←Click)