東京滞在中、どうにも重量オーヴァーと思えた荷物を、ホテルそばの郵便局からEMS(国際スピード郵便)で送っていたのが、無事に届いた。
発送したのは12日金曜日。届いたのは22日月曜日。所要日数10日間。悪くない。箱が開封された形跡なく、こうして無事に届いたことに、むしろ驚いている。
なにしろインドから送るもの、インドに届くもの、そこにインドが関わる限り、トラブルが発生するのが普通、なので。
これまでも、幾度か痛い目に合って来たことから、郵便小包を避けて来たのだが、EMSのサーヴィスがそれなりに「使えるかも」な状況が、ここ1年ほど見られたことから、使用に踏み切った次第である。大げさである。
とはいえ、
「ごめんくださ〜い、小包で〜す! はんこ、お願いしま〜す!」
と、郵便屋さんが爽やかに届けてくれるわけではない。近所の郵便局から電話があり、
「重いから、取りに来てください。あ、身分証明書も一緒にね」
と通達されるのである。取りに行く分にはやぶさかではない。外出のついでに、赴いたのだった。しかし、ここで速やかに受け取りが完了するかどうか、少々の懸念もある。
なにせ、ムンバイの郵便局でも、かつて「痛い目」に遭っているのでね。
■郵便局。図書館。不可解インド。ナラヤナの本。 (←Click!)
郵便局は、普通にまともな外観である。カウンターが並ぶ1階へ赴けば、「小包の受け取りは2階へ行け」とおばちゃんに指示される。それは紛れもなく、
「2階へ行け」であり、「2階へ行ってください」ではない。さっそく、邪険な対応である。
と、薄暗い室内。しかし天井には、中途半端に華やかな飾り。ディワリの名残か。
無駄に広く、用途不明にスペーシャスな室内の一隅に、職員らしきお兄さん(おじさん)3名が、手持ち無沙汰に座っていた。
机の下に、4つほどの小包が放置されている。一つには、ハングルが読める。その向こうに、日本語で「郵便局」との文字が。あった、わたしの荷物! 遠路はるばる、よく来たね〜!
あって当たり前なのに、妙にうれしい!!
郵便局は相変わらず「前時代的」で、古びたノートに伝票番号などを手書きで書き写すお兄さん。そこにサインをして、引き取り完了。無事届いて、何よりだ。
薄暗い部屋の一隅には、しかし無闇に派手な神様の飾り。ここだけは、きらびやかである。相変わらずの、インドである。
箱の中には、夫から頼まれていた日本土産も含まれていた。木製のカトラリーや高野豆腐。それにどっさりガーナチョコレートなど。
その他、シンガポール空港では夫の要望により新しい電気ひげ剃りも購入してきたし、不足があってもまあ、文句はあるまいという話だ。
それはそうと、電気ひげ剃りというのは、どうしてあんなにも価格に差があり、しかも高いモノには「どうでもいい感じの機能が搭載」されているのだろうか。
さて、一昨日。夕餉の席で小包の内容を報告する妻に、夫はなかなかに厳しい。
「長崎皿うどんは?」
「福岡空港で買う時間なかった。場所とるしね」
「畳のサンダルは?」
「草履(ぞうり)はね、今、夏じゃないから見つからなかったよ」
「海草類は?」
「あ、海苔とかワカメとか? 買って来るの忘れた」
「ええっ? 何だって? なんでそんなに軽いものを忘れるの? 海苔なんて、スーツケースの隙間に入るじゃない」
「だから忘れたんだって。海苔なんて、あってもなくても、別に困らないでしょ?」
「すぐに郵便で、お母さんに送ってもらいなさい」
「いやいや、まだストックが少しあるし。なに慌ててんの。第一、自分、たまにしか海苔なんて食べないじゃない」
「海苔なんてものは、常備しておくものでしょ? ないと気になるじゃない。で、ワカメはどうするの?」
「いいよ、今度ニューヨークに行ったときにでも買うよ」
「どうしてミホは忘れるかな。現にこの味噌汁にだって、ワカメ、入ってるじゃない」
「それ、チャイブ(アサツキの一種)ですけど。ワカメじゃありませんけど」
「ともかく! 醤油とか味噌とか、海苔やワカメなんかは、常備しておいた方がいい」
意味不明にうるさい男……。いったい、あなたはなに人ですか? という話だ。
さて、昨日はパークホテルのイタリアンにて、久しぶりに、夫と二人で外食。ゲストの半数は宿泊客と思しき欧米人男性。4人ほどが、それぞれ一人ずつ、静かに食事をしている。
一つのテーブルは、インド人家族。もう一つは、インド人、ラテン系欧州人ら4人のビジネスミーティングらしきグループ。みな話し声が大きいので、ビジネスの会話が筒抜けである。
ところで今週のインドと言えば、まさに「スキャンダル週間」である。連日、新聞紙面が足りないくらい、役人や企業の不正行為が取沙汰されている。
中でもテレコム業界のスキャンダルは一大事のよう。現政権の信頼を揺るがす事件に発展している。
一方、バンガロールがあるこのカルナタカ州。なにかと出たがりな州知事もまた、窮地に追い込まれている。
なんでも国営地を息子に安価で売却し、息子が高値で他へ売りさばいたとの事実が発覚したようだ。詳細は不明だが、莫大な金が動いたようである。
インド。あらゆる面で、灰色→どす黒い世界である。
テレビなどのメディアが張り切って追求しているらしく、それはそれで面白いと夫。
しかし、夫も頭を痛めることが少なくないようだ。
ニューヨーク拠点のプライヴェート・エクイティ・ファーム(firm=会社。farm=農場ではない)に籍を置き、在インドの企業への投資を仕事としている夫であるが、清廉潔白な会社を見つけることなど、ほとんど不可能に近いという。
投資をすべく調査を進めれば、CEOが汚職に絡んでいたり、薄汚れた過去が隠されていたりと、頭が痛くなる出来事が続出するケースも少なくないとか。
ということは、インド移住前からある程度わかっていたことではあるし、この5年の歳月、そのような事態と折り合いをつけながら、仕事をし、生活をしてきた。
不透明な出来事満載のこのインドで、ビジネスを立ち上げようというのは、実に一筋縄ではいかないということを、改めて思う。
ところで、食事の中盤、隣の席に、初老のインド人と若いイタリア人男性が座った。このイタリア男性の声がでかく、聞きたくなくても話が耳に飛び込んで来る。
どうもこの男性、現在チェンナイに住んでいるが、このインド人男性の会社に転職したく、自己アピールなディナーのようだ。
「ぼくは32歳で独身です。しがらみなどないので、仕事に100%集中できます!」
(まじかよ! ガールフレンドはいるでしょ! と、心中で突っ込まずにはいられない)
彼の自己紹介が延々と続く。平均的インド人に負けず劣らずの音量と気迫。
「え? バンガロールのイタリアンレストラン、もちろん行ったことありますよ! コラマ〜ンガラのヴィア・ミラ〜ノとか、UBシティ〜のトスカ〜ノとか」
その、イタリア人男性の歌うような発音と、一方、こてこてインドなまりのおじさんとの会話が妙にアンバランスで楽しい。
などと、人の話に耳を傾けている場合ではない。ないのだが。多分10年前にはあり得なかった光景が、今ここにあるのだろうな、ということだけを、取り敢えずは書いておきたかった。
インドのイタリア料理店で転職活動をするイタリア人男性。
さて、綴っておくべき世間の事件や身の回りの諸々はあるのだが、ともあれ今日のところはこのあたりにしておこう。
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