わずか1カ月、バンガロールに滞在していただけで、なんだか気分が落ち着かなくなっていた先々週の平穏な週末。気候もよく、のんびりと、静かに庭で過ごしたのが「災い」し、旅に出たくなった。
夫が2泊以上、ムンバイに行くのなら同行しようと閃いたのだが、1泊だけだという。いかにも短い。
しかしその1泊は木曜日。さあらば、週末をくっつけて、ムンバイ郊外の旅に出るというのはどうだろう。
ナシックのワイナリー巡り、あるいはアジャンタ&エローラ遺跡巡り……。
ムンバイに住んでいたころは、あまりの移動の多さに週末旅行に出かける気力、情熱に欠いていたこともあり、近場への旅に出ることはほとんどなかった。
にもかかわらず、去年はムンバイを離れてまもないころ、一人でエレファンタ島を訪れたりもして、我がことながら「なぜ今更?」と思ったものだ。思えばあのエレファンタ島の旅もまた、有意義な経験ではあった。
思い返せば、以前は「僕は洞窟だの石窟だのは、嫌いなんだよ」と乗り気でなかった夫も、このごろは大人になったのか、関心を示し始めていた。
検討の結果、アジャンター&エローラの旅に出かけることにしたのだった。
先週の木曜朝、バンガロールを発ち、ムンバイに1泊。金曜の夜にアジャンターおよびエローラの観光拠点となる小都市、アウランガーバードに入った。
土曜日にアジャンターを、日曜日にエローラを巡って、夜バンガロールに戻って来た次第。
遺跡では、自分の眼で見つめることに専念したく、写真は極力少なめに撮ろうと心がけていた。しかし、ついつい、カメラを構えてしまう。
写真に撮ったとしても、その場の空気がどれほども伝わるものではないとわかっているし、遺跡の写真というのは、よほど関心のある人以外にとっては、さほど「面白みのあるもの」ではない。
まだ旅の余韻が消化できていないこともあり、とりあえず今日のところはムンバイ滞在の記録から、残しておこうと思う。
■木曜の朝、バンガロールからムンバイへ。
かつて、バンガロールに駐在する人々にとって、最初の衝撃的な洗礼は、果てしなくおんぼろなバンガロールの旧国際空港であった。
飛行機を降りた途端、蛍光灯のまばらな薄暗い通路を通り、入国管理の列に並ぶ。
蚊の襲撃をかわしながら、疲労困憊で入国すれば、ひとつしかない手荷物受取りのベルトコンベアーの傍らで、あふれかえる人々に紛れて、待て暮らせどやってこない荷物を、ひたすらに待つ……。
もはや「懐かしい」とさえ思える遠い日だ。
すでに随所が「おんぼろ」になりつつある空港。
当初からスズメが数羽、舞い込んで来ていたが、今やかなりの数が繁殖しているようで、非常に賑やかだ。
フードコートの食べ残しをめがけて、何羽ものスズメが、チュンチュンチュンチュン言わせながら舞い降りて来る。
ここは、オープンエアのカフェテラスかよ!
と、いつも心中で突っ込みをいれてしまう。インド。なにかにつけて、ほのぼのだ。
さて、夫は出張につき、ビジネスクラスのチケットであるが、わたしが購入したのはエコノミー。しかし、アップグレードのクーポンが溜まっているので、それを使ってビジネスクラスに移行する。
わたしたちが最もよく利用するのはJet Airways。乗り慣れているので、なんとなく安心感がある。ちなみに、まだ一度しか乗ったことはないが、格安航空会社のIndiGoも、よかった。米国のJetBlueを思わせる。
ウェルカムドリンクにインド色だ。
スイートライムジュースとスイカジュースが定番。
スイートライムはフレッシュではないことが多いので、いつもスイカジュースを選ぶ。
トマトジュースではない。
食事はコンチネンタルとインド食(ヴェジ/ノンヴェジ)の3種類。
エコノミーの場合は、通常ヴェジ/ノンヴェジの2種類だ。
そのときどきによって異なるものの、Jet Airwaysの食事は概ねおいしい。と思っていたのだが!
本日、コンチネンタルのポーチドエッグを選んだところ……。
ハッシュドポテトとコーンのソテーと、とてもポーチドエッグとは思えない固ゆでたまご風の平べったいやつと、正体不明なソースが渾然一体と……。
しかし、ひとくち食べれば、あら不思議。意外にいける。マッシュルームソースもなかなかにいい。ふむふむ。朝から食が進む。
ちなみにインドの機内食。エコノミークラスも含め、陶磁器の重量感ある食器で出されるのが一般的。カトラリー類もステンレス製で重い。
数年前、燃料費削減を目的に、日本の航空会社がカトラリー類の軽量化を図っているとのニュースを目にしたことがあった。
一方のインド。そんなこと、いっこうに気にしていない様子である。
インドの料理は「温かいこと」が大切だから、陶磁器の器で「ホカホカの料理」を供することが望まれているのだ。
それはそうと、ムンバイに近づくにつれ、地形がワイルドになる。この辺りは、多分「西ガーツ山脈」と呼ばれる一帯だ。
右上の写真をクリックして拡大してみていただきたい。いつも、この辺りを見下ろすたび、下に降り立ってみたいと思うのだ。
いくつものひだが寄ったような山並みと、合間合間に流れる河。浮かぶ湖……。
今日は南ムンバイのあたりがきれいに見下ろせた。
このあたりでぐっと旋回して北上、北ムンバイにある空港を目指すのである。
眼を凝らせば、コラバ地区の地理がよくわかる。
ムンバイに住んでいたころのご近所だ。
上の写真の左下、アラビア海に無数の船舶が停泊しているあたりがインド門、そしてタージ・マハル・パレスのあたり。ヨットクラブがあるのもこのあたりだ。
写真を拡大してみると……。
コラバ地区、及びナリマンポイント(南インドのビジネスエリア)がよくわかる。
NRI(印僑)のムンバイカーがしばしば口にする「ムンバイはマンハッタンと似ている」という台詞。地形、という意味では、どこかしら共通点はあるのだ。
このあたりはあたかも、ダウンタウンからロウアーマンハッタンにかけて、である。
写真上部右側の高層ビルディングが並んでいるあたりは、カフパレードと呼ばれる住宅街。1970年代に埋め立てられた地区だ。2つのタワーが見える。これはワールドトレードセンター。
わたしたちが住んでいたのは、このワールドトレードセンターの斜め前であった。ちなみにカフパレードの向こう側、つまり写真の最上部には、スラムが広がっている。
カフパレードに住む富裕層の生活を支えるべく使用人らは、このスラムに住んでいるのだ。
あまりにも顕著に、上空からですらくっきりと見える、ライフの格差。
ちなみにこの界隈、ムンバイでも最も地価が高いエリアでもある。
先進国からの駐在員が住めるクオリティの、アパートメントの家賃は、2ベッドルームでもひと月40万円程度から、であった。
といったことは過去に幾度も記したが。
わたしたちが住んでいた、大して豪華でもなんでもない、普通の高層アパートメント・ビルディングが、日本で言うところの「億ション」であったことは、本当に納得がいかない事実であった。
さて、写真中央部の右側、入り江になってる部分はまたスラム。漁村のスラムである。常時、魚の匂いが立ちこめており、特に蒸し暑い時期は、風向きによっては悪臭で窓を開けていられないほどでもあった。
その悪臭スラムを見下ろしながら、高級アパートメントビルディングが立ち並んでいるのだ。この奇妙な感じ。
ちなみに2008年11月26日のムンバイ同時多発テロの際、テロリストたちが上陸したのは、この入り江の数カ所から、であった。
右下のエリアがナリマン・ポイントと呼ばれるビジネス街。ここに襲撃されたオベロイホテルやトライデントホテルも位置している。
2008年の終わりから2009年にかけて、一旦落ち着いたものの、しかし年々、オフィスのレントも高騰し続けており、外資系企業などは北ムンバイの新しいオフィスエリアに移るところも増えている。
空港近くのホテルなどでカンファレンスが行われることも多くなり、南ムンバイまで下りてこずとも、ビジネスミーティングが完結するケースも増えているようだ。
上空写真の左下が、インド門。そしてその向かいに、やはりテロリストの標的となったタージ・マハル・パレスがある。
さて、今回はこのタージ・マハル・パレスにチェックイン。
2009年の終わりにムンバイを離れて以来、夫のオフィスが南ムンバイの北部に位置することから、北ムンバイはバンドラのタージ・ランズエンドというホテルに滞在することが多かった。
今回は南ムンバイでの打ち合わせということで、久しぶりにこの界隈に滞在する。
このホテルに最後に泊まったのは、ムンバイと二都市生活をしていた以前のことだから、3年以上前のこと。もちろん、テロの後では初めてである。このホテルが火焔に包まれたあの日のことが、まるで幻のようだ。
わずか数年の間に、本当に、いろいろなことが起こったものである。
夫のオフィスが予約してくれていたホテルは、ニューウィング(新館)、つまり近年作られたタワー棟の方であった。伝統的なオールドウィング(旧館)に併設されているというだけで、建築物そのものに魅力はない。
従っては、さほど期待せずに訪れたのだが……。新館ロビーでチェックインをしていた夫が、手招きをする。なんだか、うれしい予感。スタッフに導かれて、オールドウィングへ向かう我々。
心中で、大きくガッツ! アップグレードしてもらえたようである。同じホテルでも、オールドウィングとニューウィングでは気分がまったく異なるのだ。
オールドウィングに宿泊したゲストだけが利用できるラウンジなどもある。
チェックインもゆっくりと椅子に座って行われ、ビジネストリップがたちまち休暇気分だ。もっともわたしは最初から休暇なのではあるが。
ちなみに夫がタージグループのインナーサークルの、古くからのメンバーであるせいか、このようなアップグレードの対応はこれまでも受けてきた。
アップグレードとは、何度受けても受けるたび、新鮮に、非常に、うれしい。
夫のお陰で、妻も恩恵を受けられ、ささやかながらも有り難き幸せである。
さて、夫は午後3時からの打ち合わせに間に合えばいいという。本当は打ち合わせの前にプールでひと泳ぎをしてランチを食べ、出かけたかったらしいのだが、フライトが1時間ほど遅れたため、泳ぐ時間がない。
「せっかく、きれいなプールで泳げるチャンスだったのに!」
と、悔しそうである。たとえ出張でも「遊び心」を忘れぬ夫である。
■オープンしたての"Le Pain Quotidien"で、ランチを。
さて、2時にロビーで友人と待ち合わせ。奇しくもバンガロールに住んでいる日本人の友人が、やはりご主人の出張同行でムンバイ入りしていたので、一緒にランチをとることにしていたのだ。
もちろん、マイハニーも一緒である。
目的地は、ホテルのすぐそばに最近オープンしたばかりのベルギー発カフェ、Le Pain Quotidienだ。
ムンバイにオープンした旨、経済紙 "mint" の記事で知ったときのことは、こちらに記している。
この外観の周囲だけを切り取ってみると、とても混沌のコラバ界隈とは思えない。
どことなく、カリフォルニアの「ベイエリア?」なムードさえ漂っている。
写真とは、恐ろしいものである。
さて、店は非常に込み合っており、すでに人気店であることを伺わせる。
というか、わたしたちも敢えて電話予約を入れて訪れたのだった。
ちなみにこの店の斜向いには、コラバ在住時に行きつけだったINDIGO DELIや、MOSHE'Sといったカフェやベーカリーが並んでいる。
ところで友人は、我が夫にも何度か会ったことがある。会ったことはあるが、片手にワイングラスかビールを持ち、満面の笑顔で平和に語りかける夫しか知らない。
従っては、テーブルについても途切れなく、ブラックベリーを片手に険しい表情で電話をしている夫を見て、
「アルヴィンドさん、なんか、別人……」
と、物珍しそうである。
そうなのよ。
にこにこほのぼのとしているように見えて、実はとてもできるシャープな男でもあるのよ、マイハニーは。と、何気に夫自慢をしたが早いが、料理を注文する前に、
「僕は、アップル・クランブルを、食べなければならないから!」
と、仕事顔のままで、きりりと宣言するマイハニー。I must eat! かよ。
自分、そもそも打ち合わせは3時からで、料理すらまともに食べる時間があるとも限らんのに、デザートは無理やろう。デザートはまたこの次にすれば? とたしなめる妻に、
「いや、この店は、アップル・クランブルが人気なんだ。mintの記事に書いてあったから、試さねばならないんだ」
あきらめる様子はない。I must try! かよ。どこまでも、真剣な男である。そして、あらゆる情報収集に、余念のない男である。
さて、サラダにビーフのオープンサンド、それからキッシュ・ロレーヌを注文し、3人でシェアすることに。料理はまあ、それなりに。ちなみにキッシュ・ロレーヌは、そこはかとなくインド風味がして、口に合わなかった。
正直なところ、期待したほどの味ではなく、しかしまあ、ムンバイにおいてこの雰囲気が楽しめるというところがポイントである。
さて、食事が終盤に近づき、夫はウエイターを呼び、アップル・クランブルを注文。
「時間がないから、早く出してくれ」
どこまでも、真剣だ。待ちきれず、途中で業を煮やしてカウンターまで赴く始末。わたしには見慣れた夫の行動だが、友人には、もの珍しい、インド人ビジネスマンの生態であったろう。
ところでインドの人たちは食べ物の「温度」を気にする。冷たい食べ物を好まないから、たとえばカフェなどでも、マフィンやスコーン、ドーナツなどを電子レンジで温めてくれるところが多い。
サンドイッチも、だから温かいクラブハウスサンドが人気だし、カフェでもホットサンドマシンを備えているところが多数で、温めて出してくれるのだ。
更には、家電店にもホットサンドのマシンが種類豊富に売られている。
デザートに関しては、アップルパイなど温かいものに、アイスクリームを添える……といったプレゼンテーションがお好み。
わが夫もその例にもれない。
結局、彼の注文したアップル・クランブルが一番美味であった。夫も満足したようで、ぎりぎりのタイミングで食べ終え、にこやかに去って行ったのであった。
我が夫ながら、余裕があるなと感心する。心にも、そして胃にも。
■そして今回は、ひたすらホテルライフを満喫することに。
今後ムンバイへ訪れることはたびたびあるにしても、タージのオールドウィングに宿を取ることは、しばしばないはずだ。従っては今回、街へ出ず、いっそホテルライフを満喫することにした。
いくつかのブティックを訪れ、老舗テキスタイル店へ。今日は「買い物」ではなく「向学」のため、良い品を見ようと思う。
と、今日は、わたしの経験において、史上最高に精緻なチカンカリ刺繍のサリーを目にすることができた。
写真では、この激しくも精緻で美しくてたまらんサリーの触感が、伝わるだろうか。伝わらんだろうな。いやもう、美しい。
この店のおじさんの、売る気のない姿勢もまた、たまらない。
座り込んで、刺繍についてあれこれと尋ねるわたしに、やる気なく、こたえるおじさん。
「女性はね〜。ジュエリー、服、バッグと、いくらあっても欲しがるもんなんだよね〜。きりがないよね。カード一枚で、すぐ買えるしね。夫はいくら稼いでも、稼ぎ足りないよね」
サリーを売る気がないどころか、むしろけんか売ってる?
人生に疲れた風味が漂っているおじさんだ。
おじさんはさておき、これは非常に価値のある一枚だということはわかったが、しかし年末にサリーをまとめ買いしている身。
今回は目の保養で終わらせようと思うが、あまりの美しさに離れ難く、最早、目の毒。おじさんのぼやきも遠く、その手作業のすばらしさに引き込まれる。
「これは、衣類じゃないんだよ。アートなんだよ」
気だるそうにおじさんは言う。わかってます。わかってますとも。だからこそ、ファッションに対して、そこまで思い入れが強くなかったわたしが、ここまでサリー世界に引き込まれているのだから。
アートだからこそ、である。本当にもう、きりがない。うっかり「カード」を出さないうちに退散だ。
ゆっくりと館内を巡ったあと、テロ以前はチェックインのためのラウンジだったインド門に面する部屋へ。現在はゲスト用のくつろげるラウンジになっている。
午後4時半から5時半までは、オールドウィングのゲストのために、コンプリメンタリーでのハイティーが供されるとのことで、足を運んだ。
ここでゆっくりと、本を読みつつ、時折、窓の向こうの世界を眺めつつ過ごす、贅沢すぎるひととき。
ホテルに泊まる楽しみの一つに、ゆったりとした湯船で、潤沢に湯を使っての入浴が楽しめることが挙げられる。インドの一般家庭では、浴室の湯が絶え間なく出る設備はない。
ギザという湯沸かし器を使うため、あらかじめスイッチを入れておき、数十分は待つ必要があるのだ。しかも湯量は限られているため、バスタブにためてしまったら、湯が不足してしまう。
温まるまで、湯船で地味に待機せねばならない。
そんな次第で、お湯がじゃぶじゃぶと出るというのは、たいそう幸せなことなのである。
ルームサーヴィスでグリーンティーを頼んだところ、恭しく届けられたこのセット。
日本料理のWASABI by MORIMOTOがあるこのホテル。
日本茶のセットがあったとしても不思議ではない。
が、しかし!
何かがおかしい。
何かがおかしいぞ。
なぜか急須が二つ。
そして湯飲みが一つ。
惜しい!
ちなみにグリーンティーは、日本の緑茶ではなく、カシミール地方のグリーンティーが出された。
これはこれで、フレッシュな風味で美味である。
1泊とあれば、当たり前だが、朝食も1度。どのダイニングルームで食事をするかにも「熟考」である。
ニューウィングのカフェテリアが、メニューとしてはもっとも充実しているが、この際、食事のヴァラエティは問題ではない。雰囲気だ。
プールサイドの開放的なムードも捨て難い。が、やはりここは、お気に入りのシーラウンジ (Sea Lounge) に行くしかなかろう。
インド門を見下ろすシーラウンジ。ムンバイの中でも、もっとも好きな場所の一つだ。朝な夕なに、それぞれの表情を見せる光景。
朝のそれは、アラビア海に映える朝日がきらきらとまばゆく、麗しい。
シーラウンジについては、これまで幾度となく記してきたが、それでもなお、訪れるたびにいちいち書き記しておきたくなる場所なのである。
夫はといえば、昨日の雪辱をはらすがごとく、今朝はプールへ泳ぎに行った。夕べは遅かったものの、今日は午後1時からの打ち合わせに出ればよいとのことで、ゆっくりとした朝である。
そして食後は、ホテル内の老舗皮革靴店JOY SHOESへ。
男女ともに、お勧めの店だ。
今日はわたしの靴ではなく、夫の靴、部屋履き、そしてベルトを購入。
滅多に買い物はしないものの、いざ買い物となると時間がかかるお方である。
あれでもない、これでもないと、あれこれと試しつつ、他のお客と世間話をしつつ、呑気なものである。
妻は待ちくたびれて読書である。
最後の決定権はわたしに委ねられているため、うかうか店を離れることもできないのが難。すぐに携帯電話が鳴り、呼び出しを食らうのだ。
ともあれ、柔らかな皮革の、とても履きやすい靴が見つかってご機嫌だ。
ちなみに女性のサンダル類は、スワロフスキーのクリスタルがちりばめられたド派手コレクションがあることでも有名。
そして最後の食事。ランチはプールサイドでクラブハウスサンドイッチとスイカジュースを。インド移住前、6年前に泊まった時に比べたら、料理の値段が2倍以上、ものによっては3倍近くになっていると思う。
なんだかんだと、激変するインドだ。
ともあれ、思いがけないギフトのような1泊2日を過ごし、レイトチェックアウトで4時にホテルを出た。夫とは空港で待ち合わせである。
週末旅の拠点、アウランガーバードへは、ムンバイから約1時間ほどの空の旅。キングフィッシャーの便に予約を入れている。
久しぶりに、小型のプロペラ機だ。狭くて辛いな〜などと思いつつ、乗り込めば、毎度おなじみ「不条理な文句を言う客」に遭遇。
上部の荷物入れが小さいのは、プロペラ機だから仕方がない。にも関わらず、大きめのバッグを無理矢理押し込もうといて入らない現状に、ぶち切れるおじさん一名。
「僕の荷物は、大きくない! この荷物入れが小さすぎるんだ。構造上の問題だ!」
落ち着けおやじ。その荷物は、どこか別の場所で預かってもらえばいいんだから。
ふと窓の外を見れば、真横にプロペラが!!
いや〜〜〜っ!!
以前もこの席を取ってしまい、二度といやだと思っていたのに。
なんというか、視覚的に、プロペラの真横って、落ち着かない。
巨大な電動のこぎりが迫って来ている感じ。
ともあれ、プロペラ機は無事にアウランガバードに到着。
ところで地方都市の空港は、駐機場から歩いて空港までゆける場合が多数。
この駐機場を歩ける「開放的なムード」が好き。
アウランガーバードはデカン高原に位置していることもあり、夜風が心地よい。
かくなる次第で、アウランガーバードに到着、滞在先のタージ・レジデンシーヘ向かったのだった。
さらっと書き残すつもりだったムンバイ滞在の記録が、なぜか長編になってしまった。
なぜだろう。
久しぶりのムンバイ。
住めば都で愛着がわいていたムンバイ。
更には、この数年のうちにもドラマが繰り広げられたタージ・マハル・パレス……。
最早何のために書き留めているのかよくわからんがしかし、心赴くままに、である。
で、肝心の遺跡巡りの記録については、後日、さらっとまとめようと思う。
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